事業承継が企業課題7割。コロナの影響で事業継承が課題に1割

 企業における事業承継問題が社会問題化している。経営者の高齢化が主な原因だが事業を承継する後継者が上手く育ってきていないのが問題の根幹だ。この課題に対して中小企業庁は2017年7月に事業承継支援の集中実施期間とする「事業承継5ヶ年計画」を策定しており、その実施から3年が経過している。

 これに関連し、帝国データバンクが14日、「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)」の集計結果を公表している。調査期間は8月下旬で全国2万3689社を調査対象とし1万2000社から有効回答を得た。

 集計結果によれば、「事業承継についての認識」を尋ねたところ、「経営上の問題のひとつと認識している」と回答した企業の割合が55.2%で最も多く、次いで「最優先の経営上の問題と認識している」との答えは11.8%となっており、両者を合計すると67.0%となり、約7割の企業が事業承継を経営上の問題と認識していることになる。

 「新型コロナウイルスの影響を契機として事業承継に対する関心が変化したか」と聞いた結果では、「変わらない」が75.0%と大半を占め、次いで関心が「高くなった」が 8.9%、「低くなった」は 2.3%となっている。変化があったものを合計すると11.2%で約1割の企業が新型コロナにより事業承継の考え方に変化があったようだ。

 自由記述欄を見ると「事業承継の準備段階に入って行こうかと考えていたが、新型コロナの影響で事業承継どころではなくなってきている」(製缶板金、長崎県)、「新型コロナの影響が拡がっている現状では事業承継する勇気が出てこない」(鉄骨工事、大阪府)など新型コロナの影響により事業承継への意欲が削がれているところも少なくないようだ。

 「事業承継の計画の有無」について聞いた結果では、「計画があり、進めている」企業は18.7%のみ、「計画はあるが、まだ進めていない」が 21.1%、合計すると企業の39.8%、約4割は事業承継計画があるものの、その半分以上は計画を実行に移していないようだ。ちなみに「計画はない」は34.8%、「既に事業承継を終えている」は12.3%となっている。

 事業承継を行う手段としてM&Aに関わる可能性に聞いたところ、買い手もしくは売り手となる可能性があると答えた企業は37.2%、約4割に達している。コロナの影響で事業承継をあきらめる企業も少なくないようだが、M&Aでそれをどこまで調整できるのか注目される。(編集担当:久保田雄城)

帝国データバンクが事業承継に関する企業の意識調査。企業の67.0%が事業承継を経営上の問題と認識

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