医療従事者のための「鷹の祭典」と亡き恩人 鷹・中村晃の思いが込もった3安打2打点

ソフトバンク・中村晃【写真:藤浦一都】

17日に通算1000安打を達成すると、付き物が落ちたかのような猛打賞

■ソフトバンク 9-3 楽天(18日・PayPayドーム)

17日の日本ハム戦でプロ通算1000本安打を達成したソフトバンクの中村晃外野手。札幌からの長距離移動の後に臨んだ18日の楽天戦では「3番・一塁」でスタメン出場すると、先制打を含む3安打2打点の活躍を見せた。

9月12日の西武戦(PayPayドーム)でマルチ安打を記録し、通算1000本安打まで残り2本とした中村晃。翌13日のホームゲームで決めるかと期待されながら無安打に終わり、札幌へと移動した。日本ハムとの3連戦初戦の初回に999本目のヒットを放ちながら、そこから11打席ヒットが出ず。記念の1本は札幌での第3戦の9回。チームの得点に繋がる三塁強襲の内野安打だった。

そして、日本球界で最長距離となる札幌から福岡への移動を経て迎えた楽天戦。中村晃は、初回の第1打席で先制のタイムリー二塁打。中村は「打ったのはカーブ。積極的に打ちにいきました。チャンスで打てて良かったし、先制できて良かった」と振り返った。

1000本目まで11打席、苦しんだのが嘘かのように、この日の中村晃は“らしさ”を取り戻していた。内野ゴロと四球を挟んで迎えた6回の第4打席では大きなバウンドの内野安打、8回の第5打席はセンターへの鮮やかな適時打。8月30日以来となる猛打賞を記録した。

中村晃が最初の打席に入る直前、スタンドから「昨日のヒットがエラー(の判定)だったら、今日目の前で記念のヒットが見れたのに」という会話が聞こえてきた。そう考えたくなるファンの気持ちはよく理解できるが、中村自身もこれまでの全打席で全力を出してきた結果、たまたま札幌で節目の一本が出たということだ。

15日夜中に急逝した川村隆史コンディショニング担当と「鷹の祭典」への思い

そんな地元ファンの気持ちを知ってか知らずか、中村晃は1001本目から1003本目までを固め打ち。先制とダメ押しという2つの打点で「鷹の祭典」の盛り上げに大いに貢献してみせた。逆に、17日に生まれた節目の1000本目のヒットは、遠い適地で多くのファイターズファンに囲まれながらも応援してきた北海道のホークスファンにとって、何よりのプレゼントとなったことだろう。

この日は「鷹の祭典」の3試合目。コロナ禍の中で開催される今年の「鷹の祭典」は、「THANKS HEROES」をテーマに掲げ、医療従事者をはじめコロナと戦う全ての人たちへの感謝を示すものとして行われている。選手会長を務める中村晃は「コロナ禍の今、僕たちに何ができるのか」と自問しながら、球団と今年の「鷹の祭典」の在り方について何度も話し合いを行ってきたという。特別な「鷹の祭典」への思いは、人一倍強いはずだ。

また、ホームに戻ってきたソフトバンクは、15日夜中に急逝した川村隆史氏(3軍コンディショニング担当)を追悼するために半旗を掲げ、試合前には思い出の映像とともに黙とうを捧げた。17日のヒーローインタビューで「川村さんはいつも見てくれていると思う。みんなで頑張っていきたいなと思う」と語っていた中村晃は、この日の追悼イベントでその思いをより強くしたに違いない。

節目の一打を見られなかった地元ファンへの“お詫び代わり”、選手会長としての「鷹の祭典」への思い、そして川村氏への追悼が込められたかのような今月初の猛打賞。19日からは球場の入場規制が緩和され、これまでの倍以上のファンが詰めかける。さらに盛り上がる「鷹の祭典」で、中村晃は通算2000本安打に向けて、また一歩ずつ歩みを進めていくことだろう。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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