Aマッソ、次の布石は映画製作…今明かされる「原点はディズニー」

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左から村上、加納

2020年8月18日、炎天下の千葉県某所に、女性人気お笑いコンビ「Aマッソ」の加納(ツッコミ&ネタ担当)と村上(ボケ担当)の姿が。ロケハンに勤しんでいた彼女たちは、この夏、1本の自主制作映画を撮り終えた――。

「2020年の夏は、自粛ムードで遠出できなかったのもあり、久しぶりに外でがっつりロケできて楽しかったです。この映画のために、単独ライブや公式(YouTube『Aマッソ公式チャンネル』)とは違う、新しいチームを組んでやったのも、新鮮でした。

YouTubeで公開している、映画の予告編を撮影・公開した企画の次の展開として、『ご勘弁が過ぎるにつき!!』というコメディ映画を撮りました。Aマッソ、“銀幕デビュー” します(笑)。私も編集でどうなるか、今から楽しみ」(ツッコミ&ネタ担当・加納)

2020年の春から初夏にかけて、ロケ企画はもちろん、ライブや番組収録ができなくなるなど、新型コロナウイルスがお笑い界に与えたダメージは計り知れないものだった。突然身に降りかかってきた自粛期間は、Aマッソの活動にどう影響したのか。

「正直、あんまり変わらなかったですね。リモートですが打ち合わせをしたり、ネタや文章を書いたり。強いて言えば、腰を据えて本が読めたので、『好きなことをできる時間が増えた』という感じかな。

『ライブができない』『テレビに出演する機会が減った』という、表現面でのストレスはなかったです。ただ私は、あんまり家でネタが書けないのでファミレスとかでやるんですけど、20時に追い出されるのは、しんどかったな……」(加納)

村上の “カッコいい” 手書き文字

一方、相方の村上は、“新しい表現” を見つけていた。

「ネタ合わせもせず、ずっと自宅にいて、仕事はリモート収録ばかりでした。でも、ありがたいことに経済的ピンチやストレスはなかったです! 私は基本的に、“ハイパーブレーン” 加納に小突かれないと動けないので(笑)。

自粛中は、本を読んだり、字の練習をしたり、のびのびやらしてもらっていました。今まで字を読むこと自体もしんどかったんですけど、時間ができたら『字も見てあげよう』と思うようになって。

字を書き始めたのは、カッコいい漢字を見つけたからです。たとえば『和蘭芹(パセリ)』なんかを見つけて、ちょっと書いてやろうかなって。それで本屋さんに行って、手紙の書き方の教科書を買って1冊やったら、そこに載ってなかったほかの字も上手くなりました。私、ヤバいっしょ!?

4月ごろ『使徒』(上の写真)と書いたときに、初めて自分の字にグッときました。目についたものを書いていた時期で、『エヴァ(ンゲリオン)』を見たんやったかな。最近は、とくに『そ』の字が上手くなったのと、『蒲鉾』って漢字がめっちゃいい感じ! カッコよくないですか?」(村上)

Aマッソの “ハイパーブレーン” で、相方の “ストッパー” も務める加納

2人は大阪出身で、小学校から一緒の幼馴染。2011年に上京してからしばらくは、同居していた。これほど会う機会が減ったのは、初めてのことだ。

「芸人友達のほうが、まだ会ってたかな。でも、ときどき連絡はとっていて、加納が生きてるのは知ってたので、『ずっと一緒じゃないと寂しい』という気持ちは、なくなってきましたね。

むしろ2019年に一緒に住むのをやめたときが、めっちゃ寂しかったです。東京に出てから約8年、同居してましたから。……うわ、いま考えるとキモっ! 一緒に住みすぎの、ファミリー系コンビ(笑)。

同居を解消したのは、加納から『30代になって、お前と一緒に住むのは……違うな』って言われたから。コロナもあって、やっと『加納のいない生活』に慣れたところです」(村上)

村上にとって加納は、名実ともに「欠かせない存在」だ。

「私は昔から “ストッパー” がなくて、思いついたら言ってしまうのを、止められないんですよ。加納にも『あんたは、なんにもストッパーがないわ。つけたほうがいいよ』って、ずっと言われてきました。

だけど……どこにもなかった。やっぱりホームセンターにも売ってなかったんで、『村上用ストッパー』は(笑)。そのまま、この歳まで来ちゃいました。だから、加納が私のストッパーみたいなものなんです」(同前)

“ハイパーブレーン” で “ストッパー” の加納は、どう感じているのか。

「そんな『いい話』じゃないんですよ……。でも、これからも村上とは一緒にやっていきたいと思っていますし、あいつの “魅力” は変わってないと思ってます。

村上は私にとって、ずっと特別な存在ではありました。昔からずっと周りで一番変わってて、『こいつ、変やなあ』って気になってたんです。でも、村上への見方は……死ぬほど変わりました。

子供のころは足も速くて運動できたし(笑)、尊敬していたところがあります。私は長距離を努力して走るタイプで、あいつはハナから短距離が速いって感じで。“野生” というか、カッコよかったから、うらやましくもありました。

思春期になって、いわゆる女性同士の “派閥” が生まれた時期も、あいつは『どこにも属さへん』っていう感じで。でも人に悪意を当てられないタイプで、ひょうひょうとした “いい性格” なんです。……まあ、ビジネスパートナーとしては、そんな呑気なことは言ってられないんですけど(苦笑)」(加納)

コンビを組んで初舞台を踏んで以来、加納は村上を「ビジネスパートナー」として見るようになった。

「私が大学を辞めたあと、一緒に芸人を始めたんですが、最初から村上と『何かしよっか』って言ってて、その『何か』が、お笑いやったんです。

中学の頃から『この子はもしかして、努力が似合わない……というか、努力ができないタイプかもしれない』とは思ってました。そしてコンビを組んだときに改めて、『こいつ、ホンマにアホなんやなぁ……』と。

結成当初の村上は、単純に『ウチ何もできない……』って感じでしたけど、ここ数年で『ウチは、何もできないキャラです!』っていうのを覚えてきて、大人になったなと。私からしたら、『ホンマに何もできんやろ!』って感じですけど(笑)。

その成長はたぶん、村上を認めてくれるお客さんの数が増えてきたのと、比例しているんやと思うんです。それまで私が自分とネタのことに必死で、なかなか『村上のそのままを認めてもらう』という発想にならなかったんですが」(同前)

Aマッソにとって、ひとつの転機になったのが、レギュラー番組『Aマッソのゲラニチョビ』(静岡朝日放送のWeb放送局『SunSetTV』、2020年3月31日で事業終了)だ。

「私らが “やらされる系” の回が結構ありました。リアクション下手なのがバレる企画とか、私はボケなのにツッコミをさせられる企画とか……。自分がキモいし、恥ずかしいから思い出したくなくて、編集された完成版も見ませんでした。

なかでも、『23区シリーズ(ボケの撮れ高で移動費を稼いで23時間で都内を回る企画)』は、自分で何やってるかがわからなくて、ツラかった……。ずっとボケさせられてるのに理由がない、と思ってしまったんです。

私は、ちゃんと意味をわかって仕事をしたくて。昔は加納やスタッフさんが、いちいち説明してくれていたんですけど、ここ数年はしてくれなくなったので、『自分なりに解釈する』っていうのが身についてきたかな」(村上)

対して加納は、同番組を通じて自分たちの成長を感じていた。

「一番大きかったのは、『やりたくないこともやっていた』ということ。意見をもらったときに、私らが『これ、やりたくないけどな』って言っても、『いや、そのやりたくない感じがおもしろいんですよ』って言ってくれるスタッフがいたんです。

たとえば、私が気づいてないことでも客観的に、『村上さんのこういうところ、おもしろいですよ』って言ってくれたり、すごくありがたかったですね。そういうスタッフ発の企画を通して、村上の『人となり』を知ってもらうことができたので」(加納)

酒場の恋より、芸人のプライドを選んだ村上

近年のAマッソは、村上の言動のユニークさが注目を集めている。ただ村上本人は、いたって自然体だ。

「自粛前は、ひとりで “赤ちょうちん” のお店に飲みに行ってたんですけど、いきつけのお店にいた、おしゃべりが上手いロバに似てる人を男性として好きになっちゃって。

その人、話してて輝いてたんですよね。私は、『えっ、すべらない話めっちゃ押してくるやん! ストックめっちゃあるやん! あかんあかん』って。それでもう、そのお店は行かなくなりました……。

まんまと笑ってしまったし、しゃべりで上に立たれている気になっちゃって、『もう私は芸人として負けたから、嫌や』ってムカついて。恋心よりも、芸人のプライドを選びました(笑)。

たぶんみんな私のことを『Aマッソの村上』とは、気づいてなかったと思います。普段から全然、気づかれないです。このあいだも街で話しかけられたと思ったら、『ボンビーガールに出てた(一般)人ですよね?』って言われて……。

『ウソやん』って思いましたけど、『はい、出てました。上京してきたばっかりで……がんばります!』って言いました(笑)。だから私の特技は、一般の方に紛れることです!」(村上)

村上には最近、実感したことがある。

「コロナで『頑張る場所、急になくなった』みたいな感覚は、ずっとありました。最近ようやく、お客さんを前にライブができるようになって、『私にとっては、どんな仕事よりもライブが大事だったんやな』って思います。

ライブは、お客さんからレスポンスがあって、すぐに『笑い』という “答え” が出るところが好きですね。私もお客さんに、なんか送ってますし(笑)。でも、お客さんの顔は見ません。笑い声でお客さんの『圧』、感じてます!

もちろん、まだ全席は埋められません。でも、オンラインライブとは手応えが違いました。やっぱりお客さんにウケたときが、一番気持ちいいんです」(同前)

根っからパフォーマーの村上を横に、加納は少し先を見つめている。

「コロナでエンタメが変わる、と言われていますが、まだ『心を動かされるもの』は、変わってないと思うんですよ。オンラインライブも、まだ “リアルの焼き増し” ですし、たとえば明日コロナがない世界になったら、『表現者は、みんなオンラインやめるんじゃないかな』と感じてます。

私たちは今、『映像』をベースとした活動をしていきたいんです。8月に撮った映画もそうですし、ほかにも映像を使ったネタや、ロケものの上映会などですね。台本・撮影・製作を、ぜんぶ自分たちのチームでやるのは楽しいですし、ここに可能性を感じています。

漫才やコントも作っていきますが、その枠からはみ出した『まだ世の中で見たことない新しいもの』を探していて、自分たちにしかできないことが『映像』にあると思っているからです。見ている方にも、『Aマッソは次なにしかけてくれるんかな』と、ワクワクしていただきたいですね!

たとえば、すごく初期に公式YouTubeに上げたものですけど、『出ろよ』というコントがあって。これがたぶん初めて、ライブで映像を使ったものです。スタートでありながら、いま私がやりたいことを明確にあらわしています」(加納・以下同)

一時期、“キレ芸” でも話題になった加納の本懐は、じつは「作ること」にある。

「もともとボケなのもあって、ツッコミは『お仕事中ぅ!』って感覚です(笑)。もちろんツッコミは好きですけど、『極めたい』と思ったことはないかな……。

ツッコミだけじゃなくて、『演者としての目標』みたいなものが、私にはないんです。作るほうが楽しいし、テレビでもネット配信でも、番組は『作りたいもの』ですね。呼ばれるだけの人になったら寂しいな、と思います。

そんで今は断っ然、映像を作ることが好きです。私は昔から、現場で撮影しているときが一番楽しくて。きっかけは、単独ライブで、自分らで撮った映像を使うようになったことです。2014年~2015年頃から『映像、楽しいな』って言い出して、もう6年ぐらい、ちょこちょこ作ってます」

そして、映像へのこだわりは、加納の半生そのものだ。

「大学で映画サークルに入っていて、当時は『将来、脚本を書いたり映像を撮る仕事がしたい』と思っていました。そう思うようになった、きっかけの作品があります。

タイトルを忘れてしまったんですが……ディズニーの本社で映像を作っているところを見に行く、ドキュメンタリー作品があるんです。インク室に入ったり、フィルムが並んでる部屋や声優さんのいるところをレポートしていく、という内容で。

一番印象的だったのは、汽車が線路を走るアニメーションの制作現場。橋にぶつかって汽車がつぶれて壊れるシーンの音を録るのに、録音室でドラム缶みたいなものを並べて、大人4人がかりでひっくり返していて。モノクロ時代の、映像に合わせた音づくりです。

幼き日の私は、『うわ、これ仕事か! 楽しそうやな?!!』と憧れたんですよ(笑)。だから、自分で表現をするようになった今でもずっと、『裏方思考』みたいなものを持ち続けているんでしょうね」

えーまっそ
小学校からの幼馴染同士で、2010年に結成。大阪のお笑いスクールを経て、同年4月にデビュー。2020年9月25日・26日に1年ぶり7回めの単独ライブ「モノッソ・カーカー」を開催予定。ライブ公演ぶんのチケットは即日完売。さらに、YouTube『Aマッソ公式チャンネル』で企画動画を配信中! マネージャーによる公式ツイッターは(@amasso_official)、インスタグラムは(@a.a.a.masso)

●かのう 1989年2月生まれ 大阪府出身 ツッコミ&ネタ作り担当 趣味は読書とジョギング 『webちくま』でエッセイ「何言うてんねん」を連載中
●むらかみ 1988年6月生まれ 大阪府出身 ボケ担当 趣味は飲酒 最近買ったパソコンで、動画編集に奮闘中

※10月10日に、ライブ映像に特典映像を盛り込んだ「【配信版】Aマッソ第7回単独ライブ『モノッソ・カーカー:凱』」が有料配信スタート! チケットは10月13日20時まで、ローチケ LIVE STREAMING、ZAIKOで発売中