【大学野球】甲子園から続いたライバル関係 早大・早川と明大・入江が叶えた「最初で最後」の対決

早大・早川隆久(左)と明大・入江大生【写真:荒川祐史】

4年秋で実現した投げ合い…早川が1失点17K完投、入江が5回6失点と明暗

最後にマウンドに立っていたのは早大の背番号10だった。19日に行われた東京六大学秋季リーグ戦、開幕カードの早大―明大戦で先発したのは早大の155キロ左腕・早川隆久(4年)と明大の153キロ右腕・入江大生(4年)。ともにドラフト1位候補の投げ合いとなり、スカウトが大挙する中、早大・早川が17三振を奪い、1失点完投。5回6失点で降板した入江に完勝し、高校時代から続くライバル同士の「最初で最後」の対決で衝撃を走らせた。

「入学した頃から入江と投げ合おうと言ってきた。自分にとってはうれしい日になった」

最後の打者から渾身のストレートで17個目の三振を奪うと、123球を投げ抜いた早川の全身を歓喜が包んだ。初回1死に安打を許して以降、2~8回は一人の走者も出さない完全投球。9回2死から1点を失ったが、5者連続を含む奪三振ショーとなった。巨人、阪神、広島、日本ハムなど、大挙してネット裏に陣取ったスカウト陣に圧巻のパフォーマンスを披露。明大のエース・入江との投げ合いに完勝した。

ドラフト1位候補の投げ合いがいきなり実現し、大きな注目を集めた開幕カード。両者の戦いは試合前から始まっていた。早川は入江を見ていた。

「整列した時に入江の目が違った」

言葉はなくとも、この試合にかける思いを感じた。だから、覚悟してマウンドに上がった。「受け身になると押されてしまう。強気で行こう」と。それが、初回からエンジン全開の要因になった。

2人のライバル関係は高校時代に遡る。3年夏の甲子園は準々決勝で対戦し、当時は野手として作新学院の3番に座っていた入江が、木更津総合のエース・早川から本塁打を放って下すと、チームはそのまま日本一を達成した。

しかし、明大入学後はこだわっていた投手に転向し、マウンドへの覚悟を下級生の頃から早川に伝えていた。そして、2人で「いつか、投げ合えるように頑張ろう」と励まし合ったという。

ともに1年春から出場機会を掴み、両校のエースに成長。揃ってドラフト1位候補と呼ばれるまでになった。ただ、不思議と先発での投げ合いは最後の秋まで巡ってこなかった。今回は2試合総当たりで、第1戦に先発した両エースが1勝1敗の第3戦で再び、投げ合うことがない。この日の投げ合いが事実上の「最初で最後」(入江)と分かっていた。

だからこそ、不甲斐ない結果に終わった入江は悔しがった。初回に2失点、5回に4失点と打ち込まれ、降板した。

「(早川が)自分よりも全然いい球を投げることは知っていた。だから、チームを勝たせたいという気持ちだけは負けないようにと思っていたけど、このような結果になってしまった。自分の実力のなさを改めて感じた」。力負けを認めた一方で、打席で対峙した早川を素直に称えた。「高校時代の球筋、球威とは全然違う。別人が投げているような球筋だった」と体感したライバルの凄みを表現した。

即戦力と期待される早川への関心の高さを示すように、大挙したプロ球団のスカウトの多くが試合終了まで投球を見届けた。

完勝した早川は「入江(との対決)だけじゃないけど、明治に対していい投球できてなかったけど、今日は対明治としていい投球ができたことが良かった」と充実感。入江は「これが最後のシーズンになるので、明日から目の色を変えて、身体が壊れようと体力が尽きようと、投げろと言われれば、チームのために投げたい」と悲壮な覚悟を示した。

大学1年生の頃から思い続け、明暗が分かれたドラ1候補対決。それぞれが手にした収穫と課題を糧にして、残りの大学ラストシーズンを戦い抜く。(神原英彰 / Hideaki Kanbara)

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