コロナ禍「見えない選挙」 伊勢原市長選、動画も手探りで

髙山松太郎氏(左)と小林京子氏=届け出順

 新型コロナウイルス禍のさなかで迎えた神奈川県の伊勢原市長選(20日投開票)で、陣営関係者が対応に腐心している。主張を伝えることが目的の選挙戦で肝心の人が集められず、陣営関係者は「やり方が見えない選挙」と嘆く。幅広い層に政策を訴えられるインターネットを活用して補うものの、聴衆の反応がじかにつかめない戸惑いもあり、一長一短があるようだ。

 立候補したのは届け出順に、現職の髙山松太郎氏(70)と新人で元市議の小林京子氏(68)の2人。両陣営とも「3密」防止へ、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」にチャンネルを開設した。

 両氏とも議員時代から選挙経験は豊富だが、ネットを駆使した選挙戦は初めて。髙山氏は2期8年の実績と公約を、小林氏も公約や支援者の応援メッセージ、演説の様子を掲載した。

 動画を使った選挙戦に、髙山氏は「(有権者からの)反応がほしいよね。初めてのことで幹部も手探りの状態。先が見えない」と苦笑い。小林氏は「若い人たちに政治に関心を持ってもらい、身近なことなんだと分かってほしい」と期待を込めた。

 人を集めない形式の戦いに、一方の陣営幹部は「酷な選挙だ」と吐露。「人を集めることが仕事なのに集めてはいけない。陣営から感染者が出てしまうと選挙戦どころではなくなる」と悩む。ある市幹部は「候補者が演説する姿をあまり見かけず、街中が普段より静か」と違いを口にした。

 制約が多い中、両氏とも工夫を凝らして地道な街頭活動に取り組む。髙山氏は遊説の握手の代わりに、拳を合わせる「グータッチ」で支援者との連携を確認。小林氏も選挙カーで市内を回り、手袋着用で支援者と握手を交わすなど、感染防止に気を配る。

 もう一方の陣営幹部は「過度に消極的になることなく政策を訴えたい。ネットの活用も、今の選挙では大きな比重を占める」と前向きに語った。

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