社説:温暖化と農業 地域に根差した適応策を

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 コメの品質や収量が落ち、リンゴやナシの名産地が苦境に立つ-。

 地球温暖化により、今世紀中に国内の1次産業に深刻な影響が出るとの評価報告書を、環境省の有識者委員会がまとめた。

 高温化だけではなく、豪雨災害の頻発や、病害虫の広がりを含め生態系変化によるものなど幅広い。

 評価した約70項目のうち7割に「特に重大な影響」が及ぶと予測し、政府に対策強化を求めている。

 「異変」はすでに国内のあちらこちらで現れている。温室効果ガス排出を減らす「緩和策」だけでは不十分だ。現れる影響を前提として、緩和策とともに可能な限り被害を抑える「適応策」を車の両輪として推し進める重要性が増している。

 報告書は、農林水産業や生態系分野などの評価項目の最新知見を踏まえ、5年ぶりに更新した。環境省は、温暖化影響の軽減を図る「気候変動適応計画」の来年度の改定に反映させるとしている。

 影響の重大性、対応の緊急性とも高いとされたのが、主食のコメだ。高温障害による1等米比率の低下が各地で確認されている。

 温暖化の進行で2040年代には「白く濁るコメの割合が増え、経済損失が大きくなる」と推計。収量も今世紀末には減少に転じるとした。大雨による冠水被害も懸念材料という。

 果物も生育の適地が北上し、東北の平野部を中心とするリンゴ園や、中国・四国の「二十世紀」ナシ産地などで栽培が難しくなったり、品質が低下したりすると予測する。果樹は植栽から30~40年栽培するため、長期的な見通しに立って対応を急ぐ必要があろう。

 ほかにも乳牛をはじめ家畜の生産能力や繁殖機能の低下、病害虫の分布域拡大による農作物被害なども指摘されている。

 農業関係者らも手をこまねいているわけではない。自治体や生産者団体などは連携し、「適応」の取り組みを進めてきた。

 滋賀県は高気温に適したコメ「みずかがみ」を開発。京都府もコシヒカリより甘みが強く、高温でも品質が落ちにくい品種を選抜し、新たな高級ブランド米として生産・普及に乗り出している。

 野菜や果樹なども温暖化に対応した栽培の工夫や、より適した品種の改良が取り組まれ、産地間競争にもなっている。

 こうした温暖化の影響への適応は、自然環境、治水や利水の状況、農林水産業の特色や産業構造といった地域実情によって変わってくる。

 一昨年に施行された気候変動適応法は、温暖化の影響に関する情報収集や分析を国の責任とし、自治体ごとの適応計画策定を努力義務として具体的な取り組みを支援する内容だ。

 国によるきめ細かな知見の提供のほか、人材の育成や技術、資金面の十分な支援が欠かせない。

 一方、適応できる範囲にも限界がある。それを超えると深刻で不可逆的な変化、影響が生じるとされる。気温上昇を抑える緩和策の確実な遂行が必要だ。