みずほ銀行の通帳発行「有料化」 踏み切った思惑は?そして、肝心の利便性は...?

©株式会社ジェイ・キャスト

みずほ銀行は2020年8月21日に「紙の預金通帳」発行有料化や、デジタル口座である「みずほ e-口座」を発表した

2021年1月17日までに口座開設をした場合は、手数料無料で通帳の発行ができるので、直ちに有料化するというものではない。他銀行が紙の通帳発行をやめる施策を打つ中、みずほ銀行も追従した形だが、通帳の新規発行有料化の発表は同銀行が初となっている。

[発表の要旨]

(1)2021年1月18日以降に、70歳未満の人が新規口座開設を行なった場合には、紙の預金通帳発行・繰り越しで、税込1100円の手数料がそれぞれかかる

(2)2021年1月17日までに開設した口座の紙の預金通帳繰り越し手数料は無料のまま

(3)2021年1月18日から「みずほ e-口座」の取り扱いを開始、インターネットバンキングサービス上で、最大10年間分の明細が確認できるようになる。紙の預金通帳との併用不可

(4)紙の預金通帳を使い続けた場合でも毎年1月末時点で1年以上記帳がない場合、自動的に「みずほ e-口座」に変更となる

住信SBIネット銀行やソニー銀行といったオンライン専業銀行では紙の通帳を使わないのが一般的だが、これらの銀行に比べて口座数が多く顧客の多様性があるみずほ銀行の発表は、リアル社会・ネットを問わず論争が巻き起こっていた。

相続に「紙の通帳が必要」という誤解

そもそも1100円という手数料の適切性はさておき、SNSなどでの議論を見ていてよく目にしたのが「相続」というキーワード。身内が亡くなった場合に紙の通帳が無いと相続手続きが出来ない。口座を保有していることがわからない。などの意見が飛び交っていた。他の銀行が通帳レスの施策を発表したときにも話題になったはずだが、とりわけみずほ銀行の場合には、新規発行に費用がかかる。紙の通帳とみずほ e-口座との併用ができないといった点で、人々の不安を煽ったようだ。

しかし相続手続きを行うにあたり、紙の通帳は必要ない。必要なのは亡くなった日時点の預金残高を証明する「残高証明書」や、それまでの取引を証明する「取引明細書」だ。これらの書類請求時には、銀行に対して、支店名と口座番号と名義を伝える必要があるがキャッシュカードでも代用できる。

おそらく故人の遺品を整理したときに通帳があれば、銀行に連絡せずとも残高や取引の明細が解るので、相続人同士での話がしやすいというのが意見の真意だろう。

ちなみに残高証明書の発行には数百円程度の手数料がかかる。取引明細書の場合には、さかのぼる期間によって発行手数料が異なり、期間が長くなると数千円・数万円の手数料がかかることもある。みずほ銀行の場合だと、下図のような依頼書を提出し税込手数料880円を支払うと残高証明書を発行してもらえる。

そのため相続の手続きの視点では、紙の通帳の有無や通帳発行手数料よりも、手続きに必要な書類を紙で調達しなければならない点が真の課題だろう。

銀行が削減したいのは通帳の印紙税だけではない

みずほ銀行に限らず、紙の預金通帳を廃止したい銀行側の目的としてよく印紙税が話題にあがる。紙の通帳を発行している銀行口座1口座当たり毎年200円の印紙税を負担しているというもの。みずほ銀行の場合は個人顧客だけで約2400万口座があり、全て紙の通帳を発行していたとすれば、約48億円の印紙税を毎年支払っている計算になる。

また金利が下がって貸出による収益が上げ辛くなっている銀行にとって、そもそも預金残高を増やしたくない事情もあるだろう。

預金金利の支払い、銀行が倒産したときでも預金を保証する預金保険の保険料も費用となってのしかかる。参考まで預金保険の保険料率は、一般的な普通預金向けのものだと2020年3月26日現在で年0.031%。

みずほ銀行の2020年3月末時点の預金残高は約131.1兆円なので、131.1兆円×0,031%≒406億円の保険料がかかることになる。

預金残高の有無に関わらず、口座数が増えるにしたがってITシステムの費用も増大していくのも重石となりうる。

経営判断として口座数を闇雲に増やしたくない思惑が読み取れる。

デジタル口座の使い勝手や紙が必要な時の利便性は如何に

みずほ e-口座では最大で10年分の明細の参照可能になるが、現行のみずほダイレクトと同じ表示になるのかなど具体的な仕様はまだ不明。データをcsvファイルとして保存できるので、Excelなどの表計算ソフトでの計算も行いやすい。しかし手元のプリンターで印刷できるもののデータの改ざんは自在に出来てしまう。

現行のみずほダイレクトの入出金明細の画面イメージは下図の通り。前々月の1日以降の明細しか照会できない。

紙の通帳を使い慣れた人をデジタルに移行するための救済措置的な意味も含めて、銀行所定の様式で印刷した紙の明細が必要になったときに、銀行の店頭やATMなどで明細を自分で印刷できるサービスなどが無いのは不親切に見える。

利用者がデジタルへの移行をスムーズにできる施策の登場に期待したい。