【寄稿】「大型台風」 日ごろの備えを忘れまい

谷村隆三

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 かつて、怖いものの代表といえば「地震・雷・火事・オヤジ」だったが-。今はオヤジが圏外に去り、新型コロナと豪雨と暴風といったところか。
 9月に入り、台風が9号、10号と立て続けに九州を襲った。特に10号は9号が九州に接近するさなかの9月2日に発生、「超大型に発達し、同様の進路を取る」と報道されていた。各種の気象予報では、前例がない勢力と最大瞬間風速が伝えられた。
 大きな台風といえば、1991年9月末の台風19号が印象深い。佐世保に上陸、家屋が倒壊し、無数の屋根がわらがはがれ飛んだ。何カ月も修繕ができず、家々の屋根が一面ブルーシートで覆われた高台からの景色を思い出す。この台風は、日本海を猛スピードで北上してその後も各地に強風の被害を広げ「りんご台風」と呼ばれた。
 10号はその「りんご台風」より激しいとの触れ込みであった。進路予想は本県直撃コース。水だ、カップ麺だ、養生テープだ-と買い物に走ったが、急場で考えることは誰も同じ、売り場はどこも空っぽだ。ホテルも軒並み満室。どうにか自宅から避難し、一夜明けて戻ると、物干しの柱が傾いていた。規模の割に大きな被害が少なかったのは幸いだったが、新型コロナを忘れるほど慌てた。
 ところで、昨年、関東、東北地方に大きな被害を出したのも偶然「りんご台風」と同じ19号だった。通常、台風の進路は7~8月は台湾、大陸方向へ向かい、8~9月は九州、9~10月は本州方向へ進む傾向がある。
 大手損害保険4社が来年1月、住宅向け火災保険料を全国平均で6~8%引き上げる方針-との記事を目にした。近年の自然災害の多発で保険金の支払いが膨らんでいるからだ。加入者の掛け金と支払い保険金のバランスが合わなければ、保険会社は商売が成り立たない。昨年保険料を値上げしたばかりだが、今後も更に引き上げが続くという。台風や豪雨などの災害が多い地域の値上げ幅は10%を超えそうだ。九州は分が悪い。
 国土交通省がまとめた2019年全国の豪雨、台風による被害総額は過去最大の約2兆1千億円。内訳は、建物や農作物などの一般資産が約1兆6千億円、河川や道路などの公共土木施設が約5千億円。このうち、10月の台風19号だけで被害額は約1兆8600億円に上った。命に関わる風水害への対策を着実に進める必要がある。
 台風シーズンはまだこれからだ。大型台風は10月が多い。不意の局地的な豪雨もある。日ごろの備えを忘れまい。

 【略歴】たにむら・りゅうぞう 1949年長崎市出身。星野組代表取締役会長。2005年から県建設業協会長。建設業労働災害防止協会県支部長、県建設産業団体連合会長なども務める。武蔵野美術大造形学部商業デザイン科卒。