空自出身議員が重大証言!ブルーインパルス妨害工作の「真犯人」|渡辺康平 新型コロナウイルス感染症と戦う医療従事者に感謝と敬意を表すため、都心上空を飛行したブルーインパルス。それを政権批判に利用するメディアや文化人たち。繰り返される組織的な妨害活動など知られざるブルーインパルス苦難の歴史を航空自衛隊出身の議員が初めて告発。

ブルーインパルス飛行を政権批判のチャンスと捉える面々

航空自衛隊第4航空団第11飛行隊所属のアクロバットチーム「ブルーインパルス」が5月29日に、新型コロナウイルス感染症と戦う医療従事者に感謝と敬意を表すため、都心上空を飛行しました。

東京都内各地では、ブルーインパルスのフライトを見ようと、晴天の都心上空を見上げる人たちの姿が見られました。ブルーインパルス六機は、感染症指定病院である自衛隊中央病院、墨東病院、荏原病院を中心に、都庁やスカイツリー、東京タワーの周辺を2周飛行しています。

青い機体から白いスモークをたなびかせ、高度約3000フィートで飛行しました。都心での飛行は3回目で、2014年の旧国立競技場に別れを告げるイベント以来、6年ぶりです。

今回の感謝飛行に対して、医療従事者の方々や頑張っている多くの方々から、「感動した」 「ありがとう」「勇気をもらった」という率直な声をいただきました。一方、ブルーインパルスによる医療従事者に対する感謝と敬意の飛行について、ほとんどの国民が好意的にとらえているにもかかわらず、残念ながら「否定的な意見」を持つ人たちがいます。

29日正午のフライト以降、さっそく嫌味なツイートをしたのは、朝日新聞出身で現在は立憲民主党衆議院東京第九区総支部長の山岸一生氏です。

〈青空にたなびく飛行機雲は確かに美しいけれど、どんなに手を伸ばしても届かない。今最も必要なのは、確実に私たちの手に届く支援であり、現金だ。 隊員の皆さん、練習大変だったでしょう、お疲れさまでした。政府が本当になすべきことは何か、私たちに教えてくれた、とても有意義な飛行でした〉

さらに立憲民主党の参議院議員小西ひろゆき氏は、次のようにツイートしています。

(安倍総理がブルーインパルスの飛行をツイートしたことに対して)〈なぜ、自分の姿を写すのだろう。偽善者ぶりに吐き気がする。 厚労省は3月6日に各都道府県に新型コロナに対処する医療体制構築の指針を示している。それが実行できず、医療崩壊の危機に直面し、今なお多くの医療従事者が困難を強いられている最大の責任者は安倍総理だ〉

また、同党の参議院議員蓮舫氏は航空自衛隊に感謝を述べながら、安倍総理を批判しました。

〈美しいと思います。SNS拡散、空を見上げて感動した方々も沢山。航空自衛隊のご努力にも感謝です。ただ、空を見上げられない、現場で感染症対策と向き合っておられる方々、仕事を失わないよう必死な方々が現段階で求めているのは迅速な経済支援です。首相官邸にその声は届いているのでしょうか〉

何かあれば政権批判につなげていく立憲民主党所属議員らのツイートに対して、コメントでは「見上げる医療従事者の『ありがとう』の声が聞こえませんか?」と厳しい批判が殺到しています。

ラサール石井氏ら文化人やタレントも……おなじみのメンバーが批判

日本共産党の志位和夫委員長は6月2日の記者会見で、「どういうプロセスで決まって、何を目的にやったのか」と述べ、ブルーインパルスの感謝飛行についてその経緯の説明を求めた、と産経新聞が報じています。 「自衛隊の解消」を党の綱領に書いてきた共産党の代表である志位氏の発言としては、直接的な批判を避けたものであり、共産党らしくない発言です。

この点について、産経新聞は「ネット上でも好意的な意見がある中、現実路線のアピールに力を入れる共産党としては、強い批判を避けた可能性がある」と分析しています。

ブルーインパルスの飛行に対する批判は、政治家だけではなく、文化人やタレントも発言しました。映画監督の想田和弘氏は〈これにかかる費用はいくらになるのでしょうか。医療機関や従事者の方々に経済的支援を手厚くした方が、よほど敬意と感謝を示せるように思うのですが〉と否定的なツイート、タレントのラサール石井氏は〈私はブルーインパルスが飛んでいる写真に萌える人が多いのは、空のおかげだと思う。凄い飛行技術には脱帽しますが、青空なしで、戦闘機だけが飛ぶのではさほど心は動かない。沖縄の空を爆音と共に飛ぶ姿はかなり嫌です。戦闘機を「カッコいい」と思う事はある。その気持ちを誰かに利用されない事だ〉と投稿しています。

その他にも、志葉玲氏、米山隆一氏、蓮池透氏、立川談四楼氏などが同様の批判をしていますが、従来から安倍政権や自民党を批判してきた、いつものメンバーです。

政治利用するマスコミ

メディアでは朝日新聞系の日刊スポーツが、共同通信の配信記事「ブルーインパルス感謝の“航空ショー”は誰の発案?」を掲載して、防衛省幹部が「政治利用ではないかとの批判を警戒しているのだろうが、誰がどう決めたのか説明しないと臆測が広がりかねない」と話したという記事を出しています。いったいどこの防衛省幹部か分かりませんが、極めて嫌味な記事です。

また、東京新聞は6月3日付「ブルーインパルスはなぜ都心を飛んだ? 『政治利用』 『迷惑』の声も」という記事を配信しました。記事では軍事ジャーナリストの前田哲男氏のコメントを掲載しています。以下、前田氏のコメント。

「東京の空は旅客機が飛び交い、すぐ近くでも自衛隊や米軍の航空機が飛ぶ、騒がしい状態。そこにブルーインパルスが飛べば、接触事故の潜在的危険が高まる」と指摘。飛行で医療従事者への感謝を示す発想に「関係性が分からない」と訝り、こう断じた。 「新型コロナ問題では防衛省も頑張ったと伝えたいのだろう。でも、これではブルーインパルスの政治利用だ」

この前田氏も従来から日米同盟批判、安保法制批判で名高い左翼側の軍事ジャーナリストです。彼らにとって、ブルーインパルスの都心における飛行は政権批判のチャンスであり、防衛省・自衛隊を批判するための格好の道具といえます。いったい、どちらがブルーインパルスの政治利用でしょうか。

河野防衛相(当時)のカウンター

6月1日に河野太郎防衛大臣(当時)は自身のブログにて、予算や都心上空を飛行した経緯について説明しています。

〈なかにはこんなことにいくら予算をかけたんだというご批判めいたメールもありましたが、ブルーインパルスの予算は、T―4練習機の訓練飛行に要する経費と併せて計上していますが、今回、このなかで実施しています。 ブルーインパルスの燃料費、スモークに使う発煙油、随伴機と整備員を輸送するコスト、合計して約360万円です〉

また、ブルーインパルスを飛ばすより、医療関係者に手当を配るのが先だろうという意見があったことに対しては、河野大臣は「それは別物だと思います」と、はっきりと述べています。

さらに、今回の飛行経緯について。

〈今回の決定は、私から、航空幕僚監部に対し、医療従事者への敬意と感謝を示すためにブルーインパルスを飛行させることができないか検討するように指示を出し、ブルーインパルスが6機で飛行できるのは5月末までに限られることから、一度の飛行で、全国の医療従事者に敬意と感謝を表すためには、首都東京の上空を飛行させることにしたいという案が報告され、その通り実施するように指示しました〉

その他にも、東京都多摩地区を飛行しなかったこと、ダイヤモンド・プリンセス号に対応した横浜や、感染者を受け入れたホテル三日月に感謝と敬意を示さなかったのか等、様々な意見が河野大臣に寄せられた、とブログに書かれています。

このように、防衛大臣がブルーインパルスの都心上空飛行について予算や決定の経緯を公表することは、批判勢力に対する適切なカウンターパンチでした。特に発信力が強く、はっきりと発言される河野太郎氏が防衛大臣で良かったと心の底から思います。

河野大臣のブログについて、元空将の織田邦男氏は自身のFacebook で次のように述べました。 〈こんなことを大臣が説明しなければならない国なんて、やはり日本だけだろうね……同じことを米国では空軍のサンダーバード、海軍のブルーエンジェルスがやっているが、称賛の拍手こそすれ、誰一人文句を言う人はいない。少なくとも一片のニュースにもなっていない〉

織田元空将の指摘するとおり、空軍が医療従事者に感謝と敬意を表する飛行は、アメリカやイタリアおよびカナダでも行われています。織田元空将が遺憾に思うように、空軍に対して称賛の拍手こそすれ、誰一人文句を言う人はいません。世界から見て、日本だけが非常識な状況になっています。

反戦団体による組織的な妨害活動

歴史を振り返れば、航空自衛隊とブルーインパルスは苦難の歴史を背負ってきました。2000年7月には、訓練を終えて帰還する途中に宮城県牡鹿郡牡鹿町(現・石巻市)の光山山頂付近にて2機が墜落、3名が殉職する事故が起きています。2011年の東日本大震災では、拠点となる松島基地が津波で被災しています。

しかしそれだけではなく、航空自衛隊とブルーインパルスが、反戦団体による組織的な妨害活動を受けていたことは、読者の皆様はご存じでしょうか。

航空自衛隊の各基地における航空祭では、イベントの最後にブルーインパルスの曲技飛行が展示されます。航空祭では多くの航空ファンが全国各地から集い、ブルーインパルスのフライトに歓声を上げていますが、基地の正門前では「ブルーインパルスの展示飛行反対!」という場違いな声も聞こえてきます。

その反対運動の先頭に立つのは日本平和委員会です。彼らのHPによると、次のように書かれています。 「北海道から沖縄まで全国47都道府県で、草の根から平和を創るために活動しているNGOです」 「当会は、思想・信条・政派の違いをこえて、規約に賛同する個人をもって構成される個人加盟の団体です」

代表理事の有馬理恵氏は劇団俳優座所属、石川康宏氏はマルクス経済学者、岸松江氏は共産系団体から新宿区長選に立候補経験あり、内藤功氏は共産党元参議院議員です。

思想・信条の違いをこえて、と書かれていますが、「いわゆる共産党系の団体」といえるでしょう。今年の2月の創立70周年記念レセプションでは、共産党から小池晃氏、井上哲士氏が出席しています。

日本共産党による抗議活動、「周辺住民」と称する団体による告発

ブルーインパルスの展示飛行に対して、特に強い抗議活動が行われているのは、愛知県の航空自衛隊小牧基地周辺における反対運動です。

小牧基地では、2007年の基地開庁50周年として、ブルーインパルスの展示飛行を予定していましたが、春日井市飛行場周辺対策市民協議会(市、議会、区長などで構成)の反対の決議や、労組や反戦団体の反対運動により中止となりました。

ブルーインパルスの展示飛行が再開されたのは2015年で、『東海防衛だより』通巻23号によれば、小牧基地では2015年3月の「小牧基地オープンベース」が開催され、昭和46年以来、44年ぶりにブルーインパルスの展示飛行が行われた、と書かれています。

日本共産党愛知県委員会や愛知県平和委員会は、小牧基地の航空祭に対しては、常にプルーインパルスと自衛隊機の展示飛行を中止するよう小牧基地に申し入れ、抗議活動を続けてきました。

そして、「いわゆる周辺住民」による「ブルーインパルスの飛行をやめさせる会」を組織して、2017年に開催した航空祭でブルーインパルスが許可を得ずに曲技飛行などをしたとして、2018年1月に当時の小牧基地司令等を航空法違反と告発しています。

小牧基地では、同年2月に航空祭におけるブルーインパルスの展示飛行中止を発表、来場者は前年の約6万2000人から約1万人に減った、と報じられています。

2019年2月に名古屋地検で不起訴処分となりましたが、処分は不当として周辺住民151人が検察審査会に審査申し立てを行っています。

全国で抗議活動を展開

小牧基地以外でも、2018年三月には奈良基地で2016年11月にあったブルーインパルスの飛行について、奈良県平和委員会や住民約百三十人が「国交相に許可なく『曲技飛行』をした」などとして、航空法違反容疑で当時の基地司令を奈良地検に告発状を出し、奈良地検は2019年12日に嫌疑不十分で不起訴処分としました。

ブルーインパルスの展示飛行は航空祭だけではなく、各種イベントでも実施しています。2018年8月の高知県高知市で開かれた第65回よさこい祭りでは、第65回という節目にあたり、8月9日の前夜祭にブルーインパルスによる展示飛行が行われました。

高知市上空の展示飛行に対して、「郷土の軍事化に反対する高知県連絡会」は「ブルーインパルス展示飛行の中止を求める要請書」を高知県知事に出しています。郷土の軍事化に反対する高知県連絡会とは高知県平和委員会、高知県平和運動センターなど15団体で構成され、日本共産党高知県委員会、社会民主党高知県連合会、新社会党高知県本部といった政党も参加しています。

このようなブルーインパルスの展示飛行に対する執拗な妨害活動は、日本平和委員会による方針となっています。日本平和委員会は2019年、第69回定期全国大会活動方針に「自衛隊ブルーインパルス展示飛行中止を求める運動も関連地域で連携し進めます」と決議しました。

今後も、全国でブルーインパルスに対する抗議運動が展開されることが予想できます。

目的は自衛隊の弱体化、縮小、廃止

また、各地の平和委員会がブルーインパルスの展示飛行に反対する理由として、事故や騒音を指摘していますが、この日本平和委員会の資料を読むと、別の目的も読み取れます。

日本平和委員会のブルーインパルスの展示飛行中止を求める運動は、「わが街を戦争の拠点にするな」 「平和守る自治体を」の運動の一部です。「わが街を戦争の拠点にするな」 「平和守る自治体を」の運動とは、次のように書かれています。

〈全国各地で進められる基地強化や軍事演習強化、自衛隊募集や自治体の反動化など「わが街を戦争の拠点にする」動きをくい止め、草の根から平和の世論を広げ、「住民の福祉の増進」を使命とする地方自治体を「平和の砦」にする活動は、平和運動にとって極めて重要な活動です〉

日本平和委員会の「平和」とは自衛隊の弱体化、縮小、廃止であり、日本共産党の綱領に書かれた自衛隊の解消に向けた活動を、最前線で実施している団体です。

誰が自衛隊を守るのか

共産党は防衛省・自衛隊については「段階的解消」を目標としており、共産党と共闘する平和委員会は自衛隊の訓練や活動を「監視・調査」しています。国政に議席を持つ政党とその関連する団体が、国軍の解散や弱体化に向けて蠢いているという国は、一体他にあるのでしょうか。

河野大臣は今後について、東京だけではなく、地方でもブルーインパルスの飛行も検討する考えを明らかにしました。野党はブルーインパルスの政治利用だと批判し、各地の平和委員会からブルーインパルスの全国展開に反対する活動が出てくると推測します。

この点について、私は空自出身の議員として、声を大にして伝えたいことがあります。

一つ目に、防衛省・自衛隊は萎縮する必要はありません。圧倒的大多数の国民は、ブルーインパルスの感謝と敬意の展示飛行を支持しています。

二つ目に、読者の皆様へのお願いです。私たちが言論で自衛隊の楯になる時が来ています。

わが国が危機に瀕した場合、最後の砦として行動するのが自衛隊です。陸海空自衛官は服務の宣誓において、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえること」を誓います。同時に、自衛隊法及び自衛隊法施行令では、厳しく「政治的行為の制限」があります。

しかし、防衛政策や防衛予算は国会で審議され議決されます。どうしても、自衛隊と政治は切り離せません。

今回のブルーインパルスの件だけではなく、左派野党は国会の質疑において防衛政策や安全保障問題で政権批判を行うことはたびたびあります。その内容は防衛省・自衛隊を強化するためではなく、弱体化にがるものばかりでした。

それに対して、現職自衛官は公開の場で反論することはできません。

だからこそ、国民一人ひとりが防衛省・自衛隊の楯になる必要があります。特に自衛隊OB・OGの皆さん、いまこそ現職自衛官のために、もっと大きな声を上げていきましょう。我々、自衛官出身の地方議員はその先頭に立って活動していきます。

ブルーインパルスによる医療従事者に対する感謝と敬意の展示飛行が多くの国民に支持され、全国で展開されることを強く願います。(初出:月刊『Hanada』2020年9月号)

渡辺康平

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