角田裕毅「レース直後は心が折れそうだった」無得点で選手権6位に後退。終盤3大会で逆転目指す/FIA-F2第9戦

 2020年FIA-F2第8戦モンツァ、第9戦ムジェロのイタリア2連戦での角田裕毅(カーリン)は、初戦レース1こそ4位入賞を果たしたが、残り3戦はエンジントラブルやセーフティカー導入タイミングの不運、さらに不条理なペナルティ、そこに自らのミスも重なって、ノーポイントに終わった。

 前車に追突して上位入賞のチャンスをふいにしたムジェロのレース2直後に話を聞いた際の角田は、選手権で4位から6位に後退したこともあって、「一時は気持ちが折れそうでした」と、さすがに気落ちした様子だった。

 一方ホンダの山本雅史マネージングディレクターはこの2大会については、「速さが結果に結びつかない。不運な部分が大きかった」と総括する。しかし一方で、「F2の戦いを勝ち抜くには、F1に行きたいという気持ちを誰よりも強く持つこと」とも語っていた。

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──ムジェロはレース2も、残念な結果に終わってしまいました。

角田裕毅(以下、角田):スタートもよかったし、バーチャルセーフティカー(VSC)の際にはチームのピットインの判断も良かった。そのままいけば、上位入賞は十分可能だったと思います。でも少しでも早く前に行きたいという思いが強すぎた。それで無意味な接触をして、フロントウイングを交換しなければいけなくなってしまいました。

──レースが終わって、すぐに気持ちは切り替えられましたか。

角田:いえ、まだ切り替えられてないです。

──悔しいという気持ち?

角田:悔しいというより、自分のせいですからね。むしろ、自分に呆れているというか。

──追い上げて行かなければということで、オーバードライブ気味だったのですか?

角田:いえ、全然そんなことはなくて、ただ自分のペースがすごく良かった。前に行きたいと、欲をかきすぎたのかもしれません。

──前のクルマが、あんなに遅いとは思わなかった?

角田:その次のコーナーで抜こうと思っていて、ギリギリ後ろを通ろうとして、それでぶつかってしまいました。

2020年FIA-F2第9戦イタリア レース2 角田裕毅(カーリン)

──選手権のポイントのことも、そろそろ気になっていますか?

角田:それは前から気になっています。そこは開幕戦から変わらないですが、今回は痛かったですね。

──残りのレースに向けてアプローチを変えていくとか、そういうことも考えていますか?

角田:う〜ん、正直どう変えていいのかもわからないですし、今のレース週末の進め方もそんなに悪くないと思ってはいます。単に接触を減らすというか、次回同じミスを犯さないように気をつける。アプローチ自体は、変えるつもりはないです。周回ペースも、毎回いいですし。レース1も4番手まで上がっていましたし、セーフティカーで台無しにされただけですから。

──選手権の順位自体は下がったけれども、ポイント差は接近してるだけに逆転は可能ですよね。

角田:そう思います。正直言ってレース直後は心が折れそうでしたけど、チームのみんなもこれから挽回できる、一緒に頑張ろうと言ってくれました。なので諦めずに、最後までベストを尽くして、悔いのない終わり方をしたいです。

■「F1に乗りたいという気持ちが誰よりも強くないとダメ」

──イタリア2連戦では、角田選手は結果を出せずじまいでした。山本さんは、どのようにご覧になっていましたか。

山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):モンツァは単純なエンジントラブルでしたし、ムジェロはSCでレースをふいにされたし、イタリア2戦を総括すれば不運ということでしょうね。速さはピカイチだし、レースでの強さも悪くない。下位からでも、しっかり順位をあげますしね。そこは私といつもレースを見ているヘルムート・マルコ博士も、高く評価するところです。

 ただ経験不足から来るワンミスが、結果に響く。今回の接触がまさにそうだし、前のクルマもやや挙動を乱していた。それで当たってしまった部分はありますね。そこも含めて、不運かなと。ただ電話の声を聞いても、メンタル的にちょっとキツそうですね。レース1が終わったあたりから、そんな感じは受けていました。ですのでレース2ではなんとか切り替えて、ポイントを獲ることができればと思っていたのですが……。この2戦は幸運の女神が、角田くんに微笑まなかったですね。

──速さは、十分にある。あとは気持ちですか?

山本MD:これはイギリスに帰ってから本人ともじっくり話そうと思うのですが、F2に乗っている人たちは、次はF1しかない。なのでF1に乗りたい気持ちが誰よりも強い。その気持ちも、一番じゃないとダメだと思います。たとえばニキータ・マゼピン(ハイテックGP)なんかは、ガキ大将みたいでレースマナーも決して良くないですが、前に行く気持ちの強さは人一倍ですよね。

 角田くんもそれはもちろん持っているのですが、“お前ら、退いてくれ”というほどではない。そこがルーキーの弱さなのか、レース経験豊富な選手との違いなのか。もちろん1年生としては、本当によく頑張ってます。着実に結果を出しているし、毎戦経験を積んでいる。内容的にも常にアグレッシブで、上位に上がっていくパフォーマンスを見せてくれている。そこは本当に嬉しく思っています。

2020年FIA-F2第9戦イタリア 角田裕毅(カーリン)

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