迷言集「安倍かるた」最終版が話題…「総理は立法府の長」「森羅万象すべてに答える立場」

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かるたをする昔の人々(写真はイメージです/写真:Getty Images)

9月16日に辞任した安倍晋三前首相。通算在職日数が第1次内閣込みで3188日、第2次内閣以降の連続在職記録が2822日と、いずれも憲政史上最長となったが、その功罪はさまざま。森友学園や加計学園への便宜を図ったとされる“モリカケ問題”や、桜を見る会を通した公金の私物化など、多くの疑惑に対しうやむやなままになっていることなどは、前政権における巨大な“負のレガシー”のひとつである。

安倍前首相におけるそうしたネガティブな評価の根幹にあるもののひとつとしてしばしば指摘されるのが、「言葉」の軽視であろう。正面から答えない、同じ言葉を繰り返す、ときに苛立ちをあらわにする……といった安倍前首相発言の特徴は、記者会見や国会答弁などにおいて何度も指摘され、ときにSNSでも拡散され、批判の対象となった。

そうした安倍前首相の言葉をまとめた「安倍かるた」をご存じだろうか。これは、上記のような批判的視点のもと、安倍前首相の名言・迷言をあいうえお順にコレクションしたもので、安倍氏の在任期間中から何度かネット上で拡散されてきた。その“最終版”が、再びネット上をにぎわせている。

とあるネットユーザーが、安倍前首相の退陣直前の10日、そうした「安倍かるた」の最新版を「はてな匿名ダイアリー」に「総理名言集」というタイトルで投稿。これが安倍氏の辞任後には「前総理名言かるた」と名称が変更され、またもや注目を集めているのである。

【註】ちなみに、より辛辣な“反安倍派”のネット民が、安倍氏の言動を揶揄する言葉を五七五にしてかるたふうにまとめた「安倍かるた」(例えば「【と】トランプに「NO!」と言えない安倍晋三」)などもあり、「安倍かるた」にはいくつか“流派”が存在する。

「はてな匿名ダイアリー」に投稿され、注目を浴びている「前総理名言かるた」。安倍前首相語録を眺めていると、数々の”迷場面”が思い起こされる。(画像は当該サイトより)

安倍前首相いわく「内閣総理大臣は立法府の長」

この中で、特に“印象深い”発言をいくつかピックアップしてみよう。

【あ】「悪夢のような民主党政権」
2019年2月に行われた自民党党大会で、2007年の参議院選挙で自民党が敗れた経緯を説明するなかで、「悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と発言。この発言については、民主党元代表の岡田克也議員が国会で撤回を迫ったものの「少なくともバラ色の民主党政権でなかったことは事実」「岡田さんは反省がないのか」と反論し、撤回せず。その後も同年5月に行われた政治パーティーなど、安倍首相は幾度となくこのフレーズを使用しており、もはや安倍前首相の“お気に入り”のひとつといえそうだ。

【し】「森羅万象すべてのことに答えなければならない立場ではありますが」
2019年2月の参議院予算委員会において、厚生労働省で起きた毎月勤労統計の不正調査問題を巡り、国民民主党の足立信也議員が、特別監察委員会の報告書を安倍総理が読んだかどうかを質問。これに安倍首相は読んでいないことを明かしつつ「総理大臣でございますから、森羅万象すべてを担当しておりますので。(中略)これ日々さまざまな報告書がございますが、それをすべて精読する時間はとてもない」と、その理由を釈明した。これについて、「森羅万象すべてを担当するということは、安倍首相は神なのか?」「つまり現人神ってこと?」等々、トンデモ発言として嘲笑しつつも批判する声が殺到することとなった。

【り】「立法府の長であります」
2016年5月の衆議院予算委員会において、民進党(当時)に所属していた山尾志桜里議員が、同党が提出した保育士の給与を上げる法案について、国会で議論がなされないことを批判。安倍首相はこれに対し、「山尾委員はですね、議会の運営ということについて、少し勉強していただいたほうがいいと思うわけでして。議会についてはですね、私は立法府の長であります」と発言。三権分立上、立法機関である国会の長は衆議院および参議院の議長であり、安倍首相は当然ながら「行政府の長」。あまりの衝撃答弁に、安倍首相の後ろにひかえていた石破茂地方創生担当大臣(当時)も驚愕の表情で安倍首相を見上げるという事態に。ちなみに安倍首相は、第1次内閣当時の2007年、そして2018年11月にも同じく国会において同様の発言をしており、2007年時には質問に立った簗瀬進議員から「あなたはそういう意味では、『行政府の長』であります」と正しく訂正されている。

“はぐらかし”の「ご飯論法」は、安倍政権が抱えていた問題の本質を示す

この「安倍かるた」を目にしたネット民の間では、「本当にかるたにして販売してほしい」「だいたいの発言をなんとなく覚えていて面白い」などの声が続出。と同時に、「このような発言をする政治家が8年近く日本のトップにいたということは、やはり由々しき問題ではないか」「過去の反省的な意味で、こうした発言を覚えておくことはとても重要だと思う」等々、この「最終版・安倍かるた」が安倍政権が抱えていた問題の本質を端的に表すものではないか……といった声も少なくない。

安倍前首相や当時の閣僚発言への批判のひとつとして、いわゆる「ご飯論法」が挙げられる。これは、特に安倍前首相の国会答弁でしばしば見られたもので、「朝ご飯を食べましたか?」という質問に対し、「(パンは食べたけれど白米という意味では)ご飯は食べていない」と回答するような“はぐらかし答弁”のことを指す。

2018年5月、法政大学教授の上西充子氏がTwitter上で、国会答弁で論点のすり替えが多く行われたことに対し、上記の質問例を挙げ批判的に投稿。それがきっかけとなって作られた言葉とされるが、今回の「安倍かるた」などで安倍前首相の発言をあらためて眺めてみるにつけ、安倍前首相の“はぐらかし答弁”の多さを再確認させられる。

安倍前首相の後を継ぎ、第99代内閣総理大臣となった菅義偉氏。官房長官時代は慎重な回答をすることで知られた菅氏も、今後は国会等で多くの発言をせざるを得ない立場となる。そのとき首相としてどのような答弁を我々国民に見せてくれるのか。「菅かるた」が作られずに済むことを願ってやまない。

(文=編集部)