『ハースメル』自分自身を見失いかけた人に観てもらいたい映画

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 「プーと大人になった僕」の脚本を手がけたアレックス・ロス・ペリーが自ら脚本を書き下ろし、監督したドラマ。女性3人組のパンクバンド「サムシング・シー」は売れないミュージシャンから、きっかけをつかんで一夜にして大スターになります。数年後、ボーカルのベッキーは成功した生活によって心身のバランスを崩し、ドラッグとアルコールに溺れていってしまいます。しまいには詐欺まがいの宗教にハマり、バンド仲間をも傷つけ、荒れた行動が過ぎてバンドをクビになってしまいます。この映画は、そんな彼女がもう一度立ち直るまでの姿を描いています。

 主役のベッキーを演じているのは、「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」などで大きな注目を浴びているエリザベス・モス。かつてアンジェリーナ・ジョリーがアカデミー助演女優賞を受賞した映画「17歳のカルテ」で精神的な病気を持つ少女を熱演して認められた演技派女優。この映画、彼女の素晴らしい演技で9割もっていると言えますが、メルトダウンした彼女が楽屋裏でヒステリックに叫びまくるシーンは観ていて辛いものがありますが、若いアーティストの自死やドラッグの事件が増えている日本では、この作品がとても重要になってくると思います。

 我を忘れて家族を傷つけ、周りの仲間たちを傷つける彼女の姿を見ていると、プレッシャーに追い詰められてしまった挙句、自分を見失ってしまう。スターだからこその悩みはもちろんですが、一体自分が何者かわからなくなってしまうことは誰にでも起こりうることではないでしょうか。映画にも出てきますが、死にたくなるほどひどい状態になってしまったら、一度立ち止まって、自分の人生をゆっくり見つめ直して欲しい。今だからこそ、じっくりと観てもらいたい作品です。★★★★☆(森田真帆)

9月25日(金)から全国公開

監督:アレックス・ロス・ペリー

出演:エリザベス・モス

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