【大学野球】甲子園も代表経験も「全部リセット」 ドラフト候補、東北福祉大・元山が求めた思考

東北工大戦に出場した東北福祉大学・元山飛優【写真:高橋昌江】

4安打でアピール「見られてプレーは選手の喜び」

夏の甲子園には1年夏から出場するなど2度、聖地に足を踏み入れた。東北福祉大では1年春から遊撃のレギュラーを獲得。2年では大学日本一、3年時には侍ジャパンも経験。そして、今年。東北福祉大の元山飛優内野手(4年・佐久長聖)はドラフト候補に名を連ねる。ようやく、新しい自分を見せる舞台がやってきた。

仙台六大学の秋季リーグ戦が19日、開幕。4連覇中の東北福祉大は昨秋4位の東北工大に12-3の7回コールド勝ち。元山は4安打2打点2盗塁で、視察した10球団のスカウトにアピールした。

新型コロナウイルスの影響で春季リーグ戦が中止になり、2季ぶりのリーグ戦が開幕。主将として、開会式で選手宣誓をした直後の開幕戦で元山が快音を響かせた。「3番・遊撃」で出場。2死無走者で立った第1打席で左安を放つと、2回には2死三塁で右翼線に適時二塁打。4回には中安、5回には中前適時打と左打席から安打を重ねた。

中学時代に所属した生駒ボーイズでベースができたという守備力は高い評価を得ているが、打撃は「自分の感覚ではない感じ。納得いくヒットは少ない」と試行錯誤を繰り返してきた。「バッティングはよくタイミングが大事と言われますが、自分の中ではバランスが大事」と、投手のモーションに合わせて右足を上げた時のバランス感覚を大切にする。佐久長聖時代には甲子園出場。2年春のリーグ戦で首位打者を獲得。2年春、3年春と打点王にも輝き、侍ジャパン大学代表も経験しているが、この冬、「全部、リセットした」。細かなことをあれこれ考えすぎず、シンプルなスイングを心掛け、春には手応えをつかんだ。しかし、新型コロナにより、披露する場は失われた。

4安打だけでなく、2盗塁と走れるところもアピール

約3か月、実家に帰省。仙台に戻ってからも活動制限があったが、学生野球の集大成に向けて感覚を研ぎ澄ませてきた。そして、最後のリーグ戦のスタートで多数のスカウトが視線を送る中、広角に4安打とアピール。5打席目は死球となったが、この日、2つ目の盗塁で進塁し、ホームまでかえるなど、ダイヤモンドを駆け回った。観客を入れての開催。「人に見られてプレーするのは選手の喜び」とアドレナリンも出た。

同じくプロ志望届を出した1番・佐藤悠輝(4年・飛龍)は初出場のリーグ戦で4打数3安打と、こちらもスカウトにアピール。元西武の大塚光二監督が「春からブレークさせてあげたかった」と期待する185センチの外野手は「1打席、1打席を大事にしようと思った」と気持ちを込めてプレーした。

東北福祉大の先発は今秋のドラフト候補左腕・山野太一(4年・高川学園)。5回を8安打3四球3失点と苦しみ、「自分のピッチングがまったくできず、0点に近いくらい。自分のことで頭がいっぱいでバッターを見て投げられなかった」と反省が止まらなかった。1年春からリーグ戦に登板し、ここまで無敗。この日、節目の20勝となったが、「(勝ち星が付く)5回まで投げさせてもらって感謝です」と恐縮した。

戦いはじまったばかり。リーグ戦5連覇と、その先の明治神宮大会優勝を目指しながら、自身のパフォーマンスもベストを尽くしていく。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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