【レースフォーカス】ビニャーレスを今季初優勝へと導いた新たな取り組み/MotoGP第8戦

MotoGP第8戦エミリア・ロマーニャGPで、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が2020年シーズンとして初優勝を飾った。2019年シーズン第18戦マレーシアGP以来の勝利。そこには、レースウイークでの新しい取り組みがあった。

2020年シーズン、優勝は何度もビニャーレスの手からすり抜けた。第8戦エミリア・ロマーニャGPまでに、ビニャーレスがフロントロウに並んだのは4回。うち2回、第5戦オーストリアGP、第7戦サンマリノGPではポールポジションを獲得している。しかし、2回のマシントラブルの発生も含め、その速さが勝利に結びつかずにいた。

ポールポジションからスタートして6位に終わった失意のサンマリノGP決勝レースでは、リヤタイヤについて選択ミスだったと認めたビニャーレス。ただひとり、リヤに選んだハードタイヤが機能しなかったのだ。

その翌週に迎えた今回のエミリア・ロマーニャGPで、ビニャーレスはレースに向けた新しい取り組みを行っていたという。それは、フロントに作業を集中し、フルタンク状態でセッションに臨むということだった。

ビニャーレスは総合4番手で初日を終え、「グリップを改善しようと、この3年、リヤタイヤに焦点を当ててきた。けれど、これ以上リヤでタイムを失いたくない。僕たちの方法でリヤが機能するとわかっているから、共存しないといけない」と語り、土曜日以降はフロントタイヤ側に集中していくと述べた。

2020年MotoGPミサノ公式テスト:マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

「路面のグリップがいいときにはうまくバイクが機能するし、タイムも簡単に出せる。でも、そうではないときには同じように走れず、フロントに自信を感じられない。基本的に、僕はフロントについて考えていく」

なお、この日は9月15日のミサノテストで投入された、カーボンスイングアームなど新しいパーツを装着したマシンで走行したが、翌日からは元のマシンに戻している。

土曜日にはオールタイムラップ・レコードを更新するタイムでポールポジションを獲得。「フロントタイヤに集中したよ。昨日(金曜日)は特にブレーキングで問題が多く、高速コーナーではバイクが安定しなかった。今朝はうまく改善できて、フロント側に自信が持てるようになったんだ」と言うビニャーレスは、この日からフルタンクでセッションでの走行を行っていた。フルタンク状態でのフロントの自信を深め、レースに向けたセットアップを進めたのだ。

そうしたビニャーレスの「いつもとは違った取り組み」は、奏功したと言えるだろう。さらに、前戦で「間違った選択だった」リヤタイヤには、ミディアムタイヤがチョイスされた。決勝レースでは1周目からトップを走り、6周目にはフランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)に交わされ2番手に後退したものの、1.5秒以内の差をキープ。終盤には少しずつその差を詰めていった。21周目にバニャイアが転倒を喫すると、再びトップに立ったビニャーレスは、独走で優勝を果たしたのだった。

「レース序盤はうまく走れた。ブレーキングも遅らせることができたし、タイトなラインをキープできたんだ。特に後ろにライダーがいるときには、重要なことだ。前戦は1周目に(ジャック・)ミラーが僕をオーバーテイクして、レースを失ってしまった。同じ事を繰り返したくなかったから、今回はブレーキングを遅くして、オーバーテイクのすきを与えないことに集中したんだ」

2020年MotoGP第8戦エミリア・ロマーニャGP マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が優勝を飾る

序盤にポジションを落とすことが多かったビニャーレスだが、今回はそのイメージを払しょくするレース展開だった。通常、レースウイークでは決勝レースに向けた作業を続けていく。けれどビニャーレスによれば、今回はさらにフリー走行での環境をレースに近づけたということだ。

「通常はフルタンクではない。でも、今週はフリー走行1回目と2回目を除いて、レースのようにして走った。セットアップは同じではないけれど、かなり近いものだった。この取り組み方はよかったよ。来週も同じようにしてみようと思う」

ビニャーレスがついに手にした今季初優勝。チャンピオンシップではランキングトップのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)から1ポイント差の3番手につけている。次戦カタルーニャGP以降も結果を安定させることが求められるだろう。

2020年MotoGP第8戦エミリア・ロマーニャGP マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

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