かばん職人夢膨らむ 千葉から移住の片岡さん

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かばん工房に改装中の古民家を町の移住相談担当の山口さん(中央)らと確認する片岡さん(左)

 千葉県から西会津町に移住したかばん職人片岡美菜さん(31)は来春、町内に自身のかばん工房を開く。芸術やものづくりに携わる若者の移住を支援する町の後押しを受けて先月から町内に住み、準備を進めている。地元の素材を生かした独自のかばん作りに挑戦。町の新たな特産品をつくり、地域の盛り上げにつなげたい考えだ。「会津の伝統や暮らしに寄り添ったものづくりをする」と意気込む。

■地元の素材生かす 来春工房開設 町が後押し

 神奈川県出身。都内の有名デザイン学校を卒業後、会社一つを経て都内のかばんメーカーに就職。製品の企画・デザインや製造部門などを担当し、ノウハウを蓄えた。幼い頃からかばんが好きで、職人への憧れがあった。「いつか自分の工房を営みたい」とずっと夢を描いてきた。

 そんな折、西会津町が多様な分野のアーティストや職人の創作活動の拠点施設「西会津国際芸術村」を運営し、町外から受け入れた若者らを支援していると知った。興味を持ち、昨年から何度か町を訪問した。

 町の担当者は住居確保や生活面の悩みなどにきめ細かく相談に応じてくれた。町での暮らしが具体的にイメージできるよう、町内を案内してもらう。先輩の移住者同士のつながりが強いのも、知らない土地で暮らす上で心強い。何よりも、外部から来た人を温かく受け入れてくれる町民性がうれしかった。「ここなら夢が実現できるかもしれない」。移住を決断し、今年になって約八年勤めた会社を辞めた。

 移住後さっそく工房を構える物件探しを町の担当者に協力してもらう。町内に古民家一軒を見つけ、改装作業に入った。町で移住相談を担当する山口佳織さん(36)も名古屋市からのIターン経験者で「移住者の不安や心配事は自分も経験してきた。できる限り希望に添うよう協力したい」と何かにつけて後押ししてくれている。

 片岡さんは会津伝統の草木編みや、有害鳥獣の駆除で確保される野生のシカやイノシシの皮を使い、この地域ならではの作品ができないかと思案する。工房完成後は自身の創作活動に加え、ワークショップを開くなど町民の交流拠点として開放するつもりだ。工房以外に道の駅など町内で観光客らに販売したいと夢を膨らませる。

 縁もゆかりもなかった土地だが、今は愛着が生まれている。「町の方々に協力してもらいながら、かばんを通して西会津の魅力を広く発信できるよう力を尽くす」と誓っている。

■首都圏の若者ら 町への相談、定住実績増

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う地方移住への関心の高まりや、リモートワーク普及などを受け、西会津町では今年に入り首都圏の若者らの移住や相談の件数が増えている。

 昨年度は年間の相談件数が八十三件で、移住者が七人だった。今年度は八月末時点で既に七十三件の相談があり、移住実績は十一人に達した。町の担当者は「いずれ地方で生活してみたいと考えていた人が、新型コロナをきっかけに移住を現実的に考え始めているようだ」と話す。