美術館のリストラから選挙キャンペーンまで:週刊・世界のアートニュース(1)

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いま、世界のアート界では何が起こっているのか? ニューヨークを拠点とする藤高晃右が注目のニュースをピックアップ。今回は、9月12日〜18日のあいだに世界のアート系メディアで紹介されたニュースを「ゆれる美術館」「できごと」「アートと政治・お金」の3項目にわけて紹介する。

グッゲンハイム美術館 出展:Wikimedia Commons(Ajay Suresh from New York, NY, USA)

ゆれる美術館

ニューヨークのグッゲンハイム美術館で24人の従業員のリストラ。コロナの影響で、美術館が閉館していたこと、また開館しても最大25%までしか来場者が入館できないことから今年は15億円強の収益源になることが理由であるとのこと。
https://hyperallergic.com/588884/guggenheim-museum-24-workers-laid-off/

ただ、上記の記事の真相が単純なコロナ禍でのリストラかどうか見極めが必要なのは、同時に、従業員の任意団体「A Better Guggenheim」から美術館での性差別、人種差別、階級差別などを理由にトップ3人の辞任を求める書状が出されていること。
https://hyperallergic.com/588488/a-better-guggenheim-removal-letter/

◎ロサンゼルスではLACMAの理事の一人トム・ゴアズ(Tom Gores)の解任を求める運動がアーティスト達によって行われている。理由はゴアズが2017年に刑務所の電話サービスを請負って暴利を得ている会社を買収したこと。氏がその会社を売却し、刑務所運営に関わる事業を今後買収しないことを求めている。
https://hyperallergic.com/588856/open-letter-lacma-tom-gores/

◎イギリスではターナー賞受賞作家数名を含む300人以上が、テートギャラリーの出版やカフェ部門を運営するTate Enterprisesで働く従業員313人のリストラに反対するストライキをサポートする署名を提出した。政府から受けた900億円以上の救済支援金の10%を使って、リストラをやめるべきだと求めている。
https://artreview.com/tate-strikes-more-than-300-artists-sign-open-letter-in-show-of-support/

◎新型コロナの影響で、ニューヨークだけでも810の文化関連施設から1万5000人程度の職が失われたという調査を踏まえながら、アメリカ、イギリスの様々な美術館からリストラもしくは失意の退職を決意した人々の言葉を紹介。アート業界からの「頭脳流出」について、新型コロナは最後の一撃にすぎなく長期的なものであるとのレポート
https://news.artnet.com/art-world/art-industry-brain-drain-1907518

できごと

◎10月22日から予定されていたパリ最大のアートフェアFIACが開催約1ヶ月を前にしてキャンセルを決定。来年の開催予定を2021年10月21日〜24日と発表。出店ギャラリーには全額が返金されるとのこと。
https://artreview.com/fiac-cancels-2020-edition-due-to-covid-19-crisis/

◎すでにキャンセルが決定している、北米最大のアートフェア、バーゼルマイアミの与える影響について、地元への経済損失は「巨大」であるという市長の言葉。また参加ギャラリーによっては、年間売上の半分を占めているとするため大きな損失であるという報告。
https://news.artnet.com/market/art-basel-miami-cancelled-fallout-1908967

◎バンクシーが2年にわたり欧州司法裁判所でグリーティングカード会社と争っていた商標に関する裁判で、バンクシーに商標権が認められないことが決定された。自身が正体を明かしていないことが影響。
https://news.artnet.com/art-world/banksy-eu-ruling-greeting-card-1908940

◎ポーランドのワルシャワを代表するウジャズドフスキ城現代美術センターで、新しく政権を握る右派の「法と正義」から任命された館長によって、これまでのルールを逸脱して同性愛嫌悪的な作品が購入収蔵されたことが批判を呼んでいる。専門家が長い間積み上げてきたものと、新しく政権をとった保守党との衝突であるとの大きな論争。
https://news.artnet.com/art-world/poland-acquisitions-1907310

ゲルハルト・リヒターと、イスラム教徒でもあるMahbuba Maqsoodi(マブバ・マクスード)がドイツの修道院のステンドグラスを手掛けた。リヒターのステンドグラスは、作品自体は作家からの寄付で実際の制作費はある投資家が請負ったとのこと。高齢のリヒターは大きなプロジェクトを減らしており、最後の大きな作品の一つになりそう。
https://news.artnet.com/exhibitions/gerhard-richter-tholey-abbey-unveiled-1908813

草間彌生の伝記がアメリカで初めて漫画化(グラフィックノベル化)され、9月15日に出版された。
https://hyperallergic.com/587603/kusama-the-graphic-novel-by-elisa-macellari/

アートと政治・お金

◎大手ギャラリーのデイヴィッド・ツヴィルナーの呼びかけで、「Artists for Biden」と題してバイデン大統領候補の選挙資金を集めるセールがオンラインで10月2日から8日に行われる。ジェフ・クーンズ、ケヒンデ・ワイリー、マイケル・ハイザー、ダグ・エイケンなど100人以上が作品を提供。
https://news.artnet.com/market/artists-for-biden-david-zwirner-1905997

◎大手ギャラリーのハウザー&ワースの呼びかけで、「Artists for New York」と題してブロンクス美術館、ニューミュージアムなど16のニューヨークの非営利美術館などへのファンドレイズが行われる。10月1日から22日までオンラインで。ラシード・ジョンソンやジェニー・ホルツァーなど100人以上の作家が作品提供。
https://hyperallergic.com/589048/artists-for-new-york-hauser-wirth-benefit/

◎ブルックリン美術館はオールドマスターのコレクションの一部12点を10月にクリスティーズのオークションで売却予定。批判の声も大きいが、推定落札価格の総額は約2.5億円から3.5億円程度。美術館はその他16万点のコレクションの維持のための約42億円のファンド創設を目指している。
https://www.artnews.com/art-news/market/brooklyn-museum-deaccessions-artworks-christies-1234570972/

◎現在メトロポリタン美術館のファサードに彫刻作品が展示されているワンゲチ・ムトゥや、パティ・スミス、ロバート・ロンゴなど有名アーティスト62人が11月の大統領選挙に向けて「選挙に行こう」キャンペーンのビジュアルイメージを提供。ウェブサイトから無料でダウンロードできる。
https://news.artnet.com/art-world/plan-your-vote-artist-campaign-2020-1907137