熊本地震で自宅全壊も修理できぬ 護岸復旧工事に協力し振動被害 補償調査に不満

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熊本地震で全壊の判定を受けた自宅で暮らす森田憲幸さん。県が行った護岸復旧工事による補償額に納得いかず、修理できないまま4年以上が過ぎた=益城町

 熊本地震からやがて4年半。益城町小谷の森田憲幸さん(58)は、全壊と判定されたままの自宅に今も住み続けている。解体せずに修理する予定だが、それができない理由があるという。

 はがれ落ちた天井、室内を覆うブルーシート。「4年前から時が止まったみたいでしょう」。森田さんの自宅は築45年の木造2階建て。玄関は被災して使えないため、勝手口から室内へ案内された。台所と、隣接するリビングに冷蔵庫やテレビ、ベッドなどの家財道具が並ぶ。トイレと風呂は応急修理しているが、それ以外の部屋は被災したままで使えず荷物が山積みだ。

 母ミツ子さん(83)と娘2人はテクノ仮設団地に住み、森田さんと妻(54)は自宅に残る。周辺には再建された真新しい住宅。「本来ならうちもとっくに再建できていたはず。こんなことになるなら工事に協力しなかった」と森田さん。

 「工事」とは、自宅に隣接する県が施工した高谷川の護岸復旧工事だ。地震で崩落したため、県は森田さん宅の庭に重機を入れて工事に着手し、2018年9月に完了した。

 県は19年1月、工事の振動などが森田さんの自宅に与えた影響を調査し、5月に事業損失補償として3万5千円を提示。建具と壁の隙間が広がったことへの修理費だった。

 だが森田さんによると工事完了後、トイレのドアが勝手に閉まるようになり、縁側のガラス戸に隙間ができて施錠できなくなった。影響は「建具だけのはずがない」と森田さん。修理を先延ばしにして再調査を求めた。

 すると県は今年6月、ひさしにも影響があったとして補償額を35万8729円に増額。8月7日に3度目の調査をし、今はその結果待ちだという。

 熊日の取材に県央広域本部土木部災害復興課は「調査は適切と考えている」と回答。建物の基礎部分で確認された最大7ミリの沈下や数ミリの傾きについては「受忍の範囲として、補償の対象外と判断した」と説明する。

 だが森田さんは「調査結果で金額が変わるかもしれない。まだ修理なんてできない」と不満を隠さない。

 町が進める仮設団地の集約に伴い、ミツ子さんらも今月末までにテクノ仮設から木山仮設に移らなければならない。集約前に自宅再建を終わらせるつもりだった森田さんは、急きょ県に仮設への入居期間延長を申請した。その際、自宅再建工事の契約書提出を求められた森田さん。「それができないから困っているのに」

 7月豪雨の被災地で仮設団地の整備が進むニュースを眺めながら森田さんがつぶやいた。「自分みたいに先が見通せない被災者が出ないことを願います」(立石真一)