県も分野も“領域”超えて 障害、高齢の元受刑者の更生支援 コロナ禍の現状、若者の学び

県内外の大学生らがオンラインでつながり、更生支援の現状について学んだ=諫早市福田町、県地域生活定着支援センター

 新型コロナ禍の中、医療や福祉、法律を学ぶ長崎と香川の大学生らが専門領域を超えてつながり、罪に問われた障害者や高齢者らを福祉につないで更生を支援するリアルな(実際の)現状を学ぶオンライン講座を開催している。専攻や居住地域を超えて若者が学び合うビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」の講座に参加して取材した。

 14日午後6時、諫早市福田町の県地域生活定着支援センター。講師を務めた伊豆丸剛史所長がパソコン画面に呼び掛けた。「皆さん、聞こえていますか?」。長崎大と長崎純心大で医療や福祉を学ぶ学生でつくる「長崎多職種連携・たまごの会」や、香川大法学部の学生団体「PROS」が企画するオンライン講座は8月に始まった。同センターが橋渡し役となり、この日で3回目。
 テーマは前回に続き「長崎定着の“リアル”」。伊豆丸所長は、長崎で生活苦などを理由に罪を繰り返した障害者・高齢者ら元受刑者の状況を説明した。支援対象者と面会する際には「もう一度、自分に会いたいと思ってもらうことが大事。相手の感情記憶を何より重要視している」と明かした。支援がうまくいくとは限らない。支援を拒む人がいる。支援しても途切れることもある。「支援は途切れてもよいが、また相手が戻って来られるような場所をつくっておくことが重要。いかに相手に好かれるか、感情記憶を高めないといけない」
 伊豆丸所長はこのほか、官民で障害者支援などを進める自立支援協議会や、県と各市町が連携する地域再犯防止推進モデル事業など罪に問われた当事者を支える仕組みが整備されてきた現況を紹介した。両大学以外からの参加もあり、大学生と教職員ら約30人が集った。講座は約2時間。学生たちは熱心にメモを取り、グループに分かれて意見を交わした。
 たまごの会の佐藤楓さん(21)は長崎純心大の3年生。医療と福祉を学んでいる。たまごの会として企画に携わり「活動の制限がある中でも、オンライン交流を通じて活動の枠組みを広げ、学びを深めていきたい。専門知識が異なる人同士の交流により視野も広がる」と手応えを語る。法学を専攻している香川大3年の藤井萌花さん(20)は「長崎の現状を知ることができ、大変勉強になった。今後もつながりを持っていきたい」と感想を述べた。
 今後も不定期でオンライン講座を実施していく。伊豆丸所長は「こうした活動が全国で広がってほしい。大人世代だけでなく、若い『たまご世代』が自主性を持ってつながりを広げて学びを深め、発展してもらえれば」と期待を込める。

© 株式会社長崎新聞社