ブラジル連邦最高裁判所、性的少数者の人権を擁護する判決を下す

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2019年6月13日、ブラジル連邦最高裁判所は、既存の人種差別に関する法令に沿ってホモフォビア(同性愛嫌悪)トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)に有罪判決を下した。

ブラジルの刑法には、性的指向や性自認を理由とする偏見や暴力を明確に処理する法律がない。裁判所によると、今回の判決はブラジルのLGBTQ+の人たちを守れなかった法の欠落を埋めたものだそうだ。

LGBTQ+の人たちへの暴力行為は、懲役1~5年の実刑判決に処せられる場合もある。1989年施行の刑法規定にしたがった、民族、肌の色、人種、宗教、国籍による差別に対する現行の処罰と同じものだ。

最高裁判所の裁判官11名は、レズビアン、ゲイ、両性愛者、異性装者およびトランスジェンダーでつくるブラジル人協会(ポルトガル語でABGLT)と社会主義人民党(PPS)が提出した訴訟に対する投票を行い、8対3で有罪とした。

Dia 13 de junho de 2019: o Brasil se torna o 43º país no mundo a criminalizar a homofobia e a transfobia.

Conforme a decisão do STF, se torna crime “praticar, induzir ou incitar a discriminação ou preconceito” em razão da orientação sexual da pessoa.#ÉCrimeSim #LoveWins #AEQSE pic.twitter.com/JUHavYGFJE

— #AgoraÉQueSãoElas (@AEQSE_) June 13, 2019

June 13, 2019: Brazil becomes the 43rd country in the world to criminalize homophobia and transphobia.

According to the STF decision, it becomes a crime to “practice, induce or incite discrimination or prejudice” because of the sexual orientation of the person.

2019年6月13日:ブラジルは世界で43番目にホモフォビアとトランスフォビアを有罪とする国になった。

連邦最高裁判所の判決によると、個人の性的指向を理由とした「差別や偏見の行為、誘発、または扇動」が犯罪行為になる。

グルポ・ゲイ・ダ・バヒアによる写真。許可を得て使用。

裁判所は暴力行為を処罰するだけでなく、性的指向を理由に公共施設や庁舎への出入りはもちろん、教育や就業の機会も与えないことも有罪とする判決を下している。ソーシャルネットワークなどのメディアを使って差別的な態度を助長したり出来事を誘発させたりすることも、ブラジルの人種差別に関する法では処罰されることがある。

ブラジルは、メキシコや米国、コロンビアに続き、世界で最もLGBTQ+の人たちの殺害率が高い国の1つである。

ブラジル最古のLGBTQ+人権団体である グルポ・ゲイ・ダ・バヒアの情報では、2018年に420人のLGBTQ+の人たちが殺害された。これはまさに20時間にひとりの計算だ。そのうち72%が他殺、24%が自殺であった。

カーメン・ルシア裁判官は有罪化に賛成票を投じたことに触れ、「あらゆる偏見は暴力であり、あらゆる差別は苦しみを生むのです」と語った。差別はたいてい家庭で始まり、家族や友人を引き裂くと指摘して、こう付け加えた。

Não há como negar a jurisdição a todos a quem foi negado, às vezes, o direito à vida. Na maioria das vezes, o direito à liberdade e à dignidade, pela ausência de uma legislação ainda 30 anos depois do início de vigência dessa Constituição.

We can't deny jurisdiction to those who have been denied, at times, the right to life. Most of the times, the right to freedom and dignity, due to the absence of legislation still 30 years after the entry of this constitution.

生きる権利を時に否定されてきた人々の裁判権を拒むことはできません。現憲法の制定以来30年経っても法律がないために、自由と尊厳を持って生きる権利を否定され続けてきた人たちの裁判権を拒むことなどできないのです。

有罪に投票した別の裁判官ルイス・フックスは、「暴力的な態度は明らかな暴力と同じく注意すべき」であり、この法はホモフォビアやトランスフォビアのような態度を有罪として人々の考え方を変えていく一助となるものだと語った。ルイスいわく、「同性愛者に対する暴力の多さは世界中で懸念されている」が、国会議員たちは相変わらず怠慢で気がつかないままだ。

過去20年以上、ブラジルではホモフォビアを有罪とする法案の提出が何度か試みられたが、宗教的な習慣や古い因習に阻まれ、議会での議論は進展しなかった。

法の議論で議会がまっぷたつ

リオデジャネイロを拠点にしている刑事弁護士のフェルナンダ・ゴンサルベスがグローバル・ボイスに語ったところによると、この決定はいわゆる「法定準備預金の原則」の侵害にあたるようなものだという法律家も何人かいるという。つまり、法律なければ犯罪なしということだ。

No Brasil, temos três poderes independentes – Legislativo, Executivo, e Judiciário. A função característica do Legislativo é criar leis e a do Judiciário é julgar. Enquadrar atos homotransfóbicos na lei de racismo via interpretação, em tese, extrapola a função do Judiciário, por mais nobre que seja a intenção e a causa envolvida.

In Brazil, we have three independent powers — Legislative, Executive, and Judiciary. The characteristic role of the Legislative is to create laws and the one of the Judiciary is to judge. Framing homotransphobic acts in the law of racism via interpretation, in theory, extrapolates the function of the Judiciary, even if the intentions and the causes are noble.

ブラジルは立法、行政、司法の三権分立です。法律を作ることは立法の、裁くことは司法の専権事項です。同性愛者やトランスジェンダーに対する差別的行動を人種差別法の解釈で有罪にすることは、理論上は司法が行うことだと思われます。たとえその意図や原因が崇高なものであったとしても、です。

市民が選ぶのではなく大統領が任命した裁判官で構成される最高裁判所が刑法を作る際、そこには危険が伴うとフェルナンダは言う。

E se, no futuro, um Presidente da República eventualmente nomeia ministros do STF que decidem que a Lei Anti-terrorismo se estende para atos praticados por ativistas e integrantes de movimentos sociais? Abre-se um precedente perigosíssimo.

What if, in the future, a president eventually appoints justices who decide that the anti-terrorism law extends to acts practiced by activists and members of social movements? It opens a dangerous precedent.

将来、活動家や社会運動家の行動にまでテロ対策法を拡大することを決定するような裁判官を、大統領が任命してしまったらどうなるでしょう。それは危険な先例を作ることになります。

一部の活動家や研究者は、国内の黒人や貧困層の大規模な投獄を、新たに罰則規定を作る際に審議すべきさらに別の問題として引き合いに出した。ブラジルは米国や中国に次いで、投獄者数が世界で3番目に多い

イラン・ジュスティも同じ意見だ。イランは活動家で、家を追われたLGBTQ+の人たちを受け入れる場所であるカーサ1をサンパウロに創設した。イランはグローバル・ボイスとのインタビューの中で私たちは慎重にならなければいけないとして次のように話す。

Precisamos rever todo o nosso sistema penal e carcerário. Quem é punido no país? Quem é encarcerado no Brasil? Basta olhar os dados para saber que são as pessoas negras.

We need to consider our entire criminal and prison system. Who is punished in this country? Who is incarcerated in Brazil? All one need to do is look at the data to conclude that it's black people.

私たちは、この国の刑罰と投獄の制度全体をよく考えなくてはいけません。この国で罰せられるのは誰なのか。投獄されるのは誰なのか。まずすべきことは、その刑罰や投獄の対象が黒人の人たちだと結論づけるデータを調べることです。

ブラジルでは2013年、同性婚を合法とする最高裁判所の判決も下された。同じ判決では、男性カップルが養子を迎える権利も認められている。

性差別との戦いは一進一退

写真:アントニオ・クルズ/アジェンシア・ブラジル。出典を明記する条件で許可を得て使用。

ホモフォビアを公言しているジャイール・ボルソナーロが2018年に大統領に選出され、その最高裁判決とこの国の現在の政治状況との大きな差が明確になっている。かつては息子がゲイであるぐらいなら死んでくれた方がましだと語り、最近ではブラジルのゲイ・ツーリズムに抗議した

Acreditamos que o punitivismo não deveria ser o caminho para regulamentação, mas, por enquanto, que vivemos em uma sociedade que só se reorganiza a partir de leis, é uma determinação importante. #lgbt #lgbtqia\+ #transgender #vidastransimportam #vidaslbgtsimportam #pride pic.twitter.com/iY3YwjTfoO

— Erica Malunguinho (@malunguinho) June 13, 2019

We believe that punitivism should not be the way for regulation, but for now, since we live in a society tha only reorganizes itself with laws, it is an important decision. #lgbt #lgbtqia #transgender #translivesmatter #lgbtslivesmatter #pride

私たちは制裁主義で規制すべきではないと考えています。しかし、法によってのみ承認される社会に生きている以上、これはひとつの重要な判決なのです。#lgbt #lgbtqia #transgender #translivesmatter #lgbtslivesmatter #pride

先ごろ、ブラジルの議員で初めてゲイだとカミングアウトしたひとりであるジャン・ウィルスは、殺害予告を受けて連邦議会下院を退いた。彼によると、連邦警察はこの脅迫を見て見ぬふりをしたそうだ。ジャンの後任には、ゲイのデビッド・ミランダ下院議員が新たに就任した。5月下旬、ホモフォビアに関する最高裁判所の審議が再開されると、デビッドはこうツイートした。

Amanhã estaremos acompanhando o retorno dessa importante votação no Supremo Tribunal Federal. Não podemos fechar os olhos para tantos e tantas de nós que são violentadas e morrem diariamente.
#LGBTfobiaMata #ÉCrimeSim #CriminalizaSTF pic.twitter.com/iKYWnRpbtC

— David Miranda (@davidmirandario) May 22, 2019

Tomorrow we will be following this important vote in the Supreme Court. We cannot close our eyes to so many of us who are abused and die daily. #LGBTphobiaKills #ItsACrime #CriminaliseItSTF

明日には最高裁判所でこの重要な投票がおこなわれているでしょう。私たちは、毎日のように嫌がらせを受けたり亡くなったりしている大勢の仲間から目を背けてはいけません。#LGBTphobiaKills #ItsACrime #CriminaliseItSTF

5月上旬、デビッドはLGBTQ+の人たちに対する暴力抑制を狙いとした新法案を提出した。彼はFacebookへの投稿でこのように説明している。

Se aprovada, essa Lei poderá garantir uma série de medidas protetivas que poderão salvar milhares de vidas. Será um avanço civilizatório importante em tempos de obscurantismo. Mais um passo em direção à construção de uma sociedade verdadeiramente mais justa e democrática.

If approved, this bill could guarantee a series of protective measures that will save thousands of lives. It will be an important civilisational advance in times of obscurantism. One more step towards building a truly just and democratic society.

この法案が通れば、何千もの命を守る一連の保護法案が確実に続くことになるでしょう。蒙昧主義がはびこるこの時代に価値ある文明の進歩になるでしょう。真に公明正大で民主的な社会を築くために、もう一歩前進するのです。

校正:

Yasuhisa Miyata

原文 Isabela Carvalho Translated (en) by Isabela Carvalho, Kaori Kuwayama · 原文を見る [pt]

この記事 はGlobal Voices 日本語版から配信されています。