だからバフェットも商社株を買った!?いま日本株に見直し気運が高まる理由

日経平均株価はここひと月ほど継続している23,000円台前半のレンジ相場をしっかりと維持し、相対的な底堅さを示しました。3月以降の米ハイテク株上昇にはやや反動的な動きが生じましたが、世界的にも物色面で出遅れ株、割安(バリュー)株への短期見直し買いの動きが観測され、日本株への評価がやや回復した印象を感じさせます。

8月末に判明した米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイによる日本の5大商社株買いもこうした流れを後押しする動きと捉えられるかもしれません。


TS倍率は過去最低に

足元では米ハイテク株の急失速がやや警戒を呼んだものの、ここ数ヵ月間の成長期待銘柄への集中投資には行き過ぎ的な動きも混在したと見られますので、需給の立て直しを図る意味でむしろ望ましい修正とでしょう。着実な景気の持ち直しに加え、財政・金融政策の支えも継続する見通しで全体相場の上向きトレンドも依然途切れていないと思われます。

またこの過程で先月、日本株と米国株の相対比較にあたる「TS倍率」(TOPIX÷S&P500)が過去最低水準を突破しました。日本株の割り負けが一段と際立つ格好となりましたが、新たな下げ局面入りとは考えづらいと見ています。

足元の反転は長期で見れば微かな兆しに過ぎないともいえますが、内外での新型コロナの感染傾向はいまだ予断を許さないものの、各国政府は経済を止めないスタンスを強く打ち出しており、景気最悪期脱出の観測が広がっています。

更なる政策対応への期待などファンダメンタルズ面での追い風は続きます。「世界の景気敏感株」に位置づけられる日本株に見直し気運が高まることは理に適った動きと言えるかと思います。

際立つ日本株の割安感

東証株価指数(TOPIX)とS&P500のPBR(株価純資産倍率)の格差が現在、過去最大級に拡大していることも、日本株見直しの支えとなりそうです。日本のPBRは近年、企業の解散価値とされる1倍付近での推移が継続している一方で、米国は約4倍に拡大しています。両者の格差はITバブルの1999年に匹敵する3倍近くに達し、日本株の割り負けが極まったと見ることが出来ます。

PBRや配当利回りなどから見た割安度合いを重視すると言われるウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイの日本株買い出動にも影響した可能性もありそうです。

日米株価の「季節性」にも注目

短期的には日米株価の季節性も影響を与える可能性がありそうです。過去10年間の日足から作成した日米株価の年間パターンを見ると、ともに9月10月に短期調整を経て年末高に向かう姿を示しています。

平均してみれば米国株(S&P500)は年間を通じてほぼじり高展開と言える一方で、日本株(TOPIX)は年央~秋のもたつきの後、ボックス相場を突き抜ける上昇パターンを描いています。中段の相対比較からわかるように年初から米国株に出遅れていた日本株が一気に巻き返す展開で、年末に向け米国にキャッチアップする格好となります。

下段で今年の日米相対株価を見ても、年初からの日本割り負け状態が、9月頭に反転しています。足元の米ハイテク成長株への極端な集中投資が和らぐなか、日本株やバリュー株の見直しムードに繋がっています。例年通りの日本株高を期待したい場面と考えます。

<文:投資調査部 林卓郎>

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