民事裁判IT化 「早く行うべき」との意見多数【民事裁判手続IT化アンケートvol.5】

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弁護士ドットコムでは、民事裁判手続のIT化に関して、全国の弁護士にアンケートを実施した(実施期間:2020年7月17日から31日)。7月31日の時点で、182名の弁護士から回答を得た。アンケート結果の概要を5回に分けて紹介する。 5回目は、「民事裁判IT化に関する意見や感想」について、58人から寄せられた自由回答の結果を紹介する。

1回目 民事裁判手続IT化への期待大 弁護士の8割が賛成

2回目 裁判IT化 4割以上が「非弁行為の横行」に懸念

3回目 6割近くが「初回期日から6ヶ月以内に訴訟を終了するルール」を懸念

4回目 IT機器操作の補助などで非弁行為を横行させないための対策とは

「首相官邸 裁判手続等のIT化検討会」より

移動や書類送付などの労力削減に寄せられる期待

「賛成」「早く行うべき」といったIT化を歓迎する回答が約8割を占めた一方で、「基本的IT化に賛成だが、裁判所の心象形成や文書の原本をどのように定めるか懸念がある」との声も聞かれた。 【労力削減への期待】
・弁論準備手続きのためだけに裁判所へ行く必要がなくなるならば良い。
・わずか10分の期日のために往復2時間かけるなどしていいた。ようやくIT化が進む感じだ。どんどん昔ながらの慣習はやめていただきたい。
・他の業種に比べて、月1回の弁論又は弁論準備の慣行は、時代遅れと考える。証拠収集等の防御準備を考えても、短縮できると思う。
・書面にすることが困難な証拠がウェブ上に存在する。また動画等もそのまま送付したほうが早いのもある。企業や外資系ではほぼ当たり前のweb提出がとられていないことに、ひどい憤りを感じる場合も多い。
・(IT化によって)FAX文化を廃止してほしい。

【IT化に賛成だが、懸念がある】
・遠方の裁判所への出廷負担軽減の効果は高く、相手方等の顔が見える点は電話会議よりweb会議の方が優れていると感じる。しかし、証人尋問を全てwebで行なう点は心証形成等の面から問題と考える。また、メールのやり取りでは不達等の不確実性が伴うため、この点の対策も必要である。本人訴訟の場合のケアも問題となり得る。
・文書の原本を何と考えるのか、成立の真正を巡る認定をどう行うべきかは、各論として考える必要がある。

また、時節柄、「コロナ下で安全で迅速な裁判の実現のため積極的にすすめるべき」との意見もあった。

2割弱が「IT弱者が取り残されること」「弁護士業に与える影響」などへの懸念

民事裁判IT化に対して慎重な意見では、「IT弱者への懸念」「弁護士業に与える影響への懸念」「司法機能に関する懸念」などが聞かれた。 【IT弱者への懸念】
・結論ありきで進んでいる。置いていかれる人の存在や弊害への配慮がない。
・IT弱者への配慮は決して欠かしてはいけないので、完全IT化は難しいと思う。証人尋問、当事者尋問については、裁判所の訴訟指揮で一方的に決めるのではなく、必ず原告被告の承認を経るなどして欲しい。当事者尋問、証人尋問については全面的にIT化は反対。
・当事務所の弁護士には高齢の所長夫妻もいるので、2人が機器を使いこなせないであろうことが心配。私自身も、機械に弱く自信がない。現場の弁護士を置いてきぼりにして進んでいる感がある。

【弁護士業に与える影響への懸念】
・IT化によりデータ解析が容易になり、裁判官や弁護士をAIが代替できるようになれば司法が破壊されかねず、この点の手当を検討する必要があると考えている。
・経費負担が増えるし、大きな事務所が有利になる。弁護士業がますます魅力がなくなると思う。

【司法機能に関する懸念】
・(裁判機能の大都市部への)一極集中や書面による機械的な判断につながることで、紛争の適切な解決という司法機能が不十分になるのではないか、という懸念が強い。司法改革という観点からは、土日夜間の調停など、ITに留まらず柔軟な様々な方策を立ち上げて欲しいし、そのための裁判官増員など司法予算の拡充を求めたい。
・実際の対面での心証形成が不要なわけではないから、裁判所支部の閉鎖につながらないようにしてほしい。