リュウグウ表面に別タイプの小惑星の岩石が存在。はやぶさ2の観測で判明

はやぶさ2によって撮影された小惑星リュウグウの表面に散在する明るい色合いの岩石(矢印)を示した図(Credit: 2020 Tatsumi et al.)

東京大学の巽瑛理氏らの研究グループは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」が観測とサンプル採取を行った小惑星「リュウグウ」の表面に存在する明るい色合いをした岩石を調べたところ、リュウグウの元になった天体(母天体)と衝突した小惑星に由来する可能性が高い岩石が見つかったとする研究成果を発表しました。

■母天体を破壊した小惑星の破片が混ざった可能性が高いとみられる

リュウグウは有機物を多く含むC型小惑星に分類されていて、母天体が破壊された際の破片が集まって形成されたとみられています。研究グループは、はやぶさ2の「光学航法カメラ(ONC)」「近赤外分光計(NIRS3)」の観測データをもとに、全体的に暗い色合いをしたリュウグウの表面に散在している明るい色合いの岩石を多数発見し、詳細な分析を行いました。

その結果、リュウグウの多くは水を取り込んだ含水鉱物でできているのに対し、明るい岩石のうち6個は無水鉱物(珪酸塩鉱物)であることが明らかになったといいます。研究グループは、リュウグウの表面に含水鉱物ではなく無水鉱物でできた岩石が存在する理由として、リュウグウの元になった母天体が無水鉱物でできたS型小惑星と衝突したことで破壊され、その際に混ざったS型小惑星の破片が母天体の破片とともに現在のリュウグウを形成したのではないかと考えています。

また、無水鉱物だった6個以外にも明るい岩石が見つかっていますが、これらは暗い岩石とは異なる温度条件を経験してきたために色が変わったものであり、リュウグウの母天体に由来する岩石とみられています。

■ベンヌとリュウグウは同じ衝突で一緒に形成された小惑星ではない可能性も

小惑星リュウグウ(右、直径約900m)とベンヌ(左、直径約500m)。大きさは2倍近くも違うが、どちらもそろばん玉に似た姿をしている(Credit: ESA)

いっぽう、NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」の観測データをもとに、小惑星「ベンヌ」の表面にV型小惑星(小惑星「ベスタ」に似た特徴を持つ小惑星)に由来するとみられる明るい岩石が見つかったとする研究成果が、アメリカ月惑星研究所(LPI)のDaniella DellaGiustina氏らの研究グループから同時に発表されています。

リュウグウとベンヌについては「同じ母天体の破片から一緒に形成された」可能性が指摘されていますが、リュウグウとベンヌからそれぞれS型小惑星とV型小惑星に由来するとみられる岩石が見つかったことで、2つの小惑星は同じ衝突からは形成されておらず、異なる歴史を歩んできたことが示唆されるといいます。

関連:リュウグウとベンヌの起源と歴史に迫る研究、天文学者ブライアン・メイも参加

はやぶさ2はリュウグウにおいて2回のタッチダウンを実施しましたが、S型小惑星に由来するとみられる明るい岩石の欠片も微量ながら含まれている可能性があるといいます。研究グループは、今年の12月6日にオーストラリアへ届けられる予定のサンプルを分析することで、リュウグウのさらに詳しい歴史が明らかになることに期待を寄せています。

Image Credit: 2020 Tatsumi et al.
Source: JAXA / 東京大学 / NASA
文/松村武宏

© 株式会社sorae