国策銘柄は買い!?新政権誕生を期に注目された銘柄をおさらい!

9月16日に菅義偉内閣が発足しました。8月28日に安倍晋三前首相が突然の辞任を発表した際は、マーケットにも衝撃が大きく日経平均株価は一時高値から700円超の下落となりました。しかし安倍政権で官房長官を務めた菅氏が順当に総裁選で勝利するなど、サプライズなく新政権への移行が進み、日経平均株価は23,000円台近辺をキープしています。

新政権が発足するにあたり、様々な改革が進められることが予想されています。安倍前首相の辞任以降、「国策に売りなし」という相場の格言にならうかのように国の政策に関連する銘柄の関心が高まっています。

今回は直近で注目されたセクター、今後注目が集まりそうなセクターに関して見ていきたいと思います。


通信業界へは逆風!?

「国策に売りなし」の格言とは裏腹に、逆風となっている業界もあります。通信業界は世界の主要国の中でも高いとされる通信料金の値下げ要求が強まっており、国策が向かい風となっています。

菅総理は官房長官時から通信料金の値下げには言及しており、2019年からは通信料金と端末料金を分けた分離プランの義務化が施行されています。新任の武田総務相も通信料金に関して「1割の値下げが可能である」と発言しており、これから具体的な値下げの数値も議論されていくことが予想されます。

通信各社の業績面でいうと、通信事業の営業収益に対する営業利益率は現在約20%~30%程度となっています。プラン拡充などの政府からの要求を受けても1%近辺の低い解約率で高い利益率を誇る通信各社の経営力をすれば、この度の値下げの影響も限定的との見方もできるかもしれません。

しかし相場ではネガティブに受け取られており、一連の発言を受けてNTTドコモ(9437)、KDDI(9433)、ソフトバンク(9434)のキャリア大手3社は軒並み売られ、NTTドコモやソフトバンクは一時年初来安値をつけています。

一方で格安キャリアを展開している楽天は上昇して年初来高値を記録するなど明暗が分かれています。

国策が思惑で買われた銘柄は?

新政権発足によって今後の動きで特に注目が集まるのは地銀関連とDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の銘柄ではないでしょうか。

菅総理が「数が多すぎる」と発言した地銀は再編の動きが加速することが予測され注目されています。

中でも地銀連合構想を考えるSBIホールディングス(8473)と昨年11月に資本・業務提携を発表した福島銀行(8562)は株価の反応が大きく、貸借倍率も0.10倍を割り込むなど需給面も良好であったため一時2倍まで上昇しました。そのほかにも栃木銀行(8550)や筑波銀行(8338)など地銀銘柄は9月上旬に買いを集め、値上がり率上位銘柄が地銀銘柄で埋め尽くされる日もありました。

最も、地銀銘柄は解散価値の尺度となるPBR1倍を大きく割れているものも多く割高感もないため、今後も地銀統合が現実味を帯びてくると物色の対象となることがあるかもしれません。

続いては新型コロナウイルスを受けて急速にトレンドワードとなっているDXにまつわる銘柄です。すでに注目度は高いですが、菅政権の目玉政策のひとつのデジタル庁の創設によってさらに注目を集めそうです。

最近で相場の注目度が高かった関連銘柄は、ふるさと納税サイトの「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクを傘下に持ち、ビッグデータ等を用いた業務改善支援を本業とするチェンジ(3962)です。DXへの関心と菅氏が手掛けたふるさと納税の思惑の両面が追い風となり、株価は3月に付けた安値から約10倍に迫る水準にまで急騰しています。

肝心のデジタル庁の詳細は明らかにはなっていませんが、10万円の特別定額給付金の際もデジタル化が遅れていると度々話題となった官公庁のシステムのデジタル化の促進、マイナンバーカードの普及促進あたりが中核になることが考えられます。

デジタル化関連では前出のチェンジの他、コンサルティング関連の三菱総合研究所(3636)、マイナンバーカード関連ではITbookホールディングス(1447)やキャリアリンク(6070)が関連銘柄と目されるでしょう。

これらの国策銘柄を狙うには、政治家の発言にも注目してみてはいかがでしょうか。トップを務める菅首相はもちろんのこと、改革の中核を担う大臣の発言にも今後の動向は読み取ることができるでしょう。

改革の中核を担うとされる平井デジタル改革相は就任直後からYouTubeによる発信をしている他、河野行政改革相もTwitterを中心に発信をしています。政治家の日々の発言から注目セクターを見つけることができるかもしれません。

総選挙によって全体相場に影響が出る場合も

また、直近で衆議院の解散総選挙が行われるのではないかとの憶測も広がっています。新型コロナウイルスは落ち着きを見せてはいるもののいまだに終息とは言えない状況であるため、感染動向に左右されるでしょう。

選挙関連銘柄では選挙関連機器を扱うムサシ(7521)や選挙用の封筒を手掛けるイムラ封筒(3955)、が挙げられます。衆議院議員の任期である来年秋までには必ず選挙はあることから、チェックしておいてはいかがでしょうか。

この秋に日本で総選挙が行われるとなると、11月前半には米国大統領選も控えていることから、マーケットは政治動向の不透明感を嫌気するかもしれません。日経平均株価はここ数年で何度も跳ね返されている24,000円台へのトライが期待される水準に来ていることからも、全体相場への影響も気になるところです。

新政権の改革、選挙とこの秋は政治動向に注目しながら関連の個別銘柄に目を向けつつ、相場全体の流れにも目を向けてみてはいかがでしょうか。

<文:Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>

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