楽天、山岳エリアで高度差におけるドローン物資配送実証実験初成功

目的地の「白馬山荘」へフライトスタート

楽天株式会社は、白馬村山岳ドローン物流実用化協議会の一員として、長野県白馬村の白馬岳の登山口にある「猿倉荘」から、山頂にある山岳宿舎「白馬山荘」および白馬岳頂上宿舎までの、最大約1600mの高度差におけるドローンを活用した目視外飛行での物資配送の実証実験に成功したことを発表した。離陸地点と着陸地点の高度差が約1600mある場所での、ドローンによる物資配送の実現は国内初の事例になるという。

同実証実験は、長野県白馬村を含む11の企業・団体・自治体が参画する同協議会が、山岳エリアの抱える物資輸送における課題解決を目指し、2020年8月中旬から9月中旬までの約1カ月にわたり実施したもので、楽天はドローンの配送ソリューションの提供や運用を担った。

山の麓で物資の積み込み

着陸地点に向けてゆっくりと降下する様子

今回、長野県白馬村の白馬岳(標高2932m)の登山口にある「猿倉荘」(標高1250m)から、日本最大級の山岳宿舎「白馬山荘」(標高2832m)および白馬岳頂上宿舎(標高2730m)までの片道約5kmをドローンの配送ルートとし、振動により傷みが生じやすい桃や梨など最大5kgの物資を、傷つけることなく無事に配送した。また、従来の輸送手段であった歩荷で約7時間かかるところを、ドローンでは約15分の飛行時間にまで短縮できた。「白馬山荘」から「猿倉荘」への復路では、建築廃材などを配送ボックスに積み込み配送した。

桃を傷めることなく山荘スタッフへお届け

山岳エリアに位置する長野県白馬村においては、山荘間での物資輸送は大きな課題となっている。現在は、スタッフによる歩荷輸送やヘリコプターによる物資輸送を行っているが、険しい道のりでの歩荷輸送は危険が伴い、ヘリコプターによる荷揚げは費用が高騰している。さらに、白馬山荘までの飛行ルートは、上昇気流や下降気流が急に発生する複雑な地形特性に加え、高度上空における空気の薄さから、正確な飛行のためには機体の高い揚力性能が必要とされ、天候不順時にはヘリコプターの飛行自体が不可能になることもあるという。

物資輸送が滞るなどの万が一の事態が起きた場合は、山小屋が孤立してしまう危険性もあることから、同協議会は2018年より、従来の手法よりも効率的かつ危険性の低いドローンを活用した物資配送の実証実験に取り組んできた。楽天は、2020年から同協議会に参画し、ドローンの航続距離や無線通信などの山岳エリアならではの課題解決に向けてドローン配送ソリューションの提供を担っており、これまでの実証実験やサービス提供を通じて蓄積したノウハウを生かし、今回の実証実験の成功に貢献した。

楽天は、これまで「ドローン配送による物流困難者の支援」を事業目標のひとつに掲げており、離島など物流困難地域に住む人々を支援するため、実証実験や新たな物流ソリューションの提供を、日本全国の12の県で実施してきた。今回成功した山岳エリアにおける物流支援は、白馬村のみならず日本各地の山岳エリアで共通する課題を解決する一助となる可能性があり、今後は実証実験で得た知見を全国の山岳エリアでのドローン配送ソリューションの提供拡大に向けて生かしていくとしている。


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