西武ベテラン2人が見せた意地 通算3000勝に華を添えた一打「自分、燃えたので」

4回に同点3ランを放った西武・木村文紀(左)と中村剛也【写真:宮脇広久】

右手首痛の中村&腰痛の木村が戦列復帰、逆転劇で“西武ライオンズ3000勝”に華

■西武 6-5 日本ハム(23日・メットライフ)

5位に低迷中の西武に頼もしいベテラン2人が戻ってきた。19年目・37歳の中村剛也内野手と14年目・32歳の木村文紀外野手だ。23日の日本ハム戦では2人の活躍で逆転勝ち。埼玉に移転し「西武ライオンズ」となってから通算3000勝目を挙げた。今シーズンはちょうど3分の2の80試合を消化。この白星が浮上のきっかけとなるか。

まずは、死球による右手首痛で今月3日に出場選手登録を抹消され、この日21日ぶりに登録された中村。2回の復帰初打席では、左翼に舞い上がった飛球がフェンス際で失速し凡打に終わったが、3点ビハインドの4回2死一塁で迎えた第2打席では中前打を放ち、逆転劇につなげた。辻監督は試合後、「ヒットでつないだのもそうだが、(第1打席の)レフトフライも紙一重で、ちょっとタイミングが違えば楽勝でホームランになっていた」と目を細めた。プロ野球現役最多の421本塁打を誇る男の存在感は、やはり格別だ。

一方、腰痛で戦列を離れ、中村より1日早く22日に復帰していたのが木村。昨季に俊足・強肩で右翼のレギュラーの座を獲得し、今季は6月26日のソフトバンク戦で逆転満塁弾を放つなど勝負強さを発揮。辻監督から「打撃でも成長が見られる」と評されていた。この日は4回の第2打席で、中村のヒットの直後、起死回生の5号3ランを左翼席へ放り込んだ。試合後のお立ち台で「えー…腰痛のため離脱をして、自分自身が1番悔しい思いをしたので、戻って来て結果を出せて、すごくうれしく思います」と語ると、スタンドから万雷の拍手が湧きおこった。

もっと味わい深かったのが、5回の第3打席だった。1点リードで迎えたこの回、栗山の適時打でリードを広げ、さらに2死二塁とすると、日本ハムのベンチは中村を申告敬遠し、続く木村との勝負を選択した。木村が前の打席で本塁打を放っているとはいえ、これまでの実績からいって当然の策といえるが、木村としては、これで打ち取られては男がすたる。

「正直言って、(中村の)申告敬遠は頭になかった。されたからには、自分、燃えたので、なんとかタイムリーを打とうと思いました」と明かす。そしてカウント3-2から、左腕・公文の147キロ速球を右前へ打ち返し、貴重な追加点をもぎ取ったのだった。「彼が試合に出られる状態であれば、ぜひ上(1軍)でと思っていた」と待ち焦がれていた辻監督は、「やはり頼もしい」とうなづいた。

常に泰然自若としてリラックスムードを漂わせる中村と、折れない闘志を前面に押し出す木村。この日は主軸の山川と森がそろって打撃不振でスタメンを外れていたが、こういう苦境で踏ん張れるところに、ベテランの価値がある。チームは首位ソフトバンクに8.5ゲームの大差をつけられ、リーグ3連覇は厳しい状況だが、全選手に「自分、燃えたので」の精神で意地を見せてほしいものだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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