周庭さんが警告「無料PCR検査で香港市民の個人情報が盗まれる」

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8月10日、香港の雨傘運動で知られる周庭(アグネス・チョウ)さんが国安法違反の罪に問われ、突然逮捕された。翌日保釈されたものの、その保釈期間中である9月7日、アグネスさんが街頭でごく少数のメンバーと「健康コード」(後述)に反対する活動に参加していたところ、駆けつけた警察によって30分以上も軟禁。集会制限法違反の罪で、罰金を課される事件が起こった。
この警察の動きには、香港市民の掌握を強めたい北京当局の意向が色濃く反映されているという。

「市民への新型コロナウイルス感染検査を推し進める香港政府は、9月1日より『全市民への無料PCR検査』を開始しました。検査を請け負うのは『華大基因』ほか、中国の3つの調査機関。しかし、いま国際問題になっているウイグル族への大規模なDNA採取なども、この華大基因が実施しているため、香港で各界から心配の声が沸き起こっているんです」(香港在住ジャーナリスト・角脇久志氏)

香港市民が何より恐れているのが、検体が採取された後、個人のDNAデータが保存されて中国側に渡されることだ。個人情報が守られる保証がなく、一部の医療従事者はPCR検査を受けないよう警告を出しているが、香港食物及衛生局のソフィア・チャン長官は、「偏見と陰謀説を捨ててください。個人データを香港外に送ることはありません」と、安全性などを強調している。

「多くの市民が政府の発言を信用できないのには、理由があります。7月1日の返還記念日におこなわれた抗議デモでは、複数の若者が国安法で逮捕されました。このとき、彼らからDNAの採取がおこなわれ、『別の目的に利用するのではないか』と、批判が集中した経緯があるんです。

もうひとつ不安要素となっているのは、この全市民へのPCR検査を通じて集められた各個人の健康データは、将来的には中国政府が運用する『健康コード』と紐づけられると言われている点です。香港市民は、PCR検査が陰性であれば『健康コード』を取得でき、14日間の隔離が免除になります。隣接する広東省やマカオとも、スムーズに行き来できるようにする構想が発表されています。

中国本土では、この健康コードなどを運用し、アリババが運営する『芝麻信用(セサミ・クレジット)』などの社会信用システムと結びつけて、市民の行動をスコア化し、管理するシステムが確立されています。これが香港でも導入されれば、個人の自由が制限される恐れが高いと懸念されているわけです」(角脇氏)

香港政府が強硬に推し進める無料PCR検査は、9月16日現在で検査数はいまだ178万3000件にとどまっている。香港全人口の4分の1にも届いていない。また、政府は5億3000万香港ドル(約72億円)を検査のために拠出するが、一人の陽性者を見つけるのに1656万香港ドル(約2億2500万円)もかかる計算で、専門家からも、検査に対する効果に疑問の声が噴出している。

新型コロナウイルスの感染拡大防止さえ口実にして、市民の集会や抗議活動を取り締まりつづける香港政府。警察の権力と武力を最大限行使し、行き着く先は中国本土以上の「超管理都市」なのか。