嫉妬して支配して、彼の愛情を試してしまう…「束縛女」の歪んだ愛情

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彼の愛情をつい試してしまう

人間の心は複雑だ。はたから見て羨むような家庭であろうと、どんなに愛されて育とうと、何かが歪むこともある。そもそも、何が「普通」なのかはわからないから、「歪み」もどこからが普通の範疇から逸脱しているのか、判断ができないところもある。

愛されて育ったけれど

「恋愛がうまくいかないんですよ、私。愛されている自信がないから、つい相手を試してしまうんです。いけないとわかっているのに止められない」

そう言うのはリカさん(34歳)だ。クールな印象の強い彼女は、とある研究所勤務の研究者。国立大学の大学院を出ている。とはいえ、勉強しかしてこなかったわけではない。

「中学・高校は私立の女子校でした。優等生ばかりだったから、私なんか外れ者でしたよ。他の男子校の生徒とつきあったりしていたし、それがバレて停学になったこともありました(笑)」

表面的に見れば、優秀だった彼女のある種の武勇伝にしか聞こえないのだが、実際には彼女は常に何かに飢えていたような気がすると話してくれた。

「うちは母ひとり子ひとりの家庭だったんです。ときどきやって来る男性が父親だと認識はしていたんだけど、彼には家庭があった。母は愛人だったわけ。私は認知もされていません。だけど父、お金はあったみたいで、けっこういい生活をしていました。小さいころは、父親というのはふだん家にいないものだと思い込んでいたから、小学校に行くようになって友だちの家ではおとうさんが毎日帰ってくると聞いてびっくりしたのを覚えています」

中学生にもなると、だいたいのことは理解していた。だが、いつもおっとりと愛情たっぷりに育ててくれた母を批判する気にはなれなかった。批判などしたら母が壊れそうで怖かった。ときどき来る父もやさしく、彼女が成績がいいと知ると褒めちぎってくれていた。

「父があるとき子犬を連れてきたんです。ふたりじゃ寂しいだろうと思ったんでしょう。私が8歳くらいのときだったかな、高校を卒業してもなお元気でいてくれた犬です」

ただ、大学生になると実験などで多忙となり、恋人ができたのを機に彼の家に転がり込むようにして一緒に暮らし始めた。

「たまに家に帰ると、母が寂しそうにしていました。あとから知ったんですが、そのころ、父は重病でまったく母の元には来なかったみたいです。私、心の底ではやはり母への批判的な気持ちもあったんです。母とふたりきりの生活は息が詰まる感じだったので、またすぐ彼の元へと行っていました」

彼といっても、本当に好きな人だったわけではない。家から逃れるように彼にたどり着いただけだった。大事にされている気はしたが、「私でなければいけないという情熱は感じなかった」という。

私でなくてもいいのでは……という不安

その後、彼女が大学院生のときに父は亡くなった。遺言に別の家庭があること、認知もせずに申し訳なかったこと、遺産はその母子にきちんと分けることなどが明記されていた。

「母はお葬式にも行けず、泣いていましたね。私はこっそりお葬式に行きました。仕事で知り合った関係者として。それでも母は父に愛されていたとはっきりわかったんでしょう。時間とともに元気になっていきました」

リカさんの胸中は複雑だった。認知されなかったことで父からの愛情を実感することができずにいた。父のほうしか見ていない母に、「私はおかあさんがおとうさんから愛情を受けるための手段に使われた」という思いもあった。

「だから私はついつい、恋愛相手の愛情を試してしまうんです。相手がどれだけ自分のためにリスクを冒してくれるのか」

社会人になったばかりのころ、彼女は職場の既婚者を好きになった。母の件があるから、それだけはしないと決めていたのに、好きになったら自分を止められなかった。

「家庭のある彼を、夜中によく呼び出しましたね。研究者って意外と時間が不規則なので、彼も来てくれた。そうすると今度は、旅行をねだった。私のために1泊くらいできるでしょって。それが叶うと海外旅行をせがんだ。別れて私と結婚してとも言いました。1年後、彼は『本当に疲れた』と転職していきました。彼の奥さんに全部バラそうと思ったけど、それだけは勘弁してくれと彼が泣いたので、それはしなかったけど」

相手を試すだけではなく、そうやって自分が悪魔のようになっていくのを彼女は実感し、自分でも苦しかったという。

「相手が独身なら、異常な束縛をしてしまうんです。常に他の女性に目移りするかもしれないと不安を覚えるので、勤務時間以外はひっきりなしに連絡しちゃう。当然、相手はうっとうしくなりますよね。逃げ腰になるのを見たら、すぐ職場に押しかけたりして。わかってるけど止められない。私自身も苦しいんです」

カウンセリングにかかったが、自分でもわかっていることしか解明できず、彼女は自分を律するために携帯電話を捨てたこともある。

「人を好きにならなければいいのに、寂しくてつい好きになる。そうするとお試しモードが入って束縛や嫉妬、支配が始まる。なかなか恋愛が続かないし、逃げられて傷つくことの繰り返し。もう仕事しかしなければいいと思って、1年前、職場の近くに越したんです。今は毎日、歩いて15分の職場と家を行ったり来たりするだけの生活です」

近いうち、保護犬を飼いたいと思っている。自分の愛情を犬に注ぎ、恋愛相手に対してはもう少し愛情濃度を薄めたいと彼女は力なく笑った。

(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))