漁師・川内谷幸恵が自身に課す“セブンルール”「働く姿を子どもに見せる」

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視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出す新感覚ドキュメント『7RULES(セブンルール)』。

9月22日(火)放送回では、漁師・川内谷幸恵(かわうちや・さちえ)に密着。札幌から電車で1時間半、海の幸に恵まれた漁業が盛んな北海道・余市(よいち)で、全国でも数少ない女性の漁師として活躍している彼女。

最も得意とするのはウニ漁で、専門店などが指名買いするほど、品質に定評がある。極上のウニを獲りながら、漁業の魅力を発信する川内谷幸恵のセブンルールとは。

ルール①:他の漁師の見落としを狙う

朝5時、漁に向かう川内谷。彼女がベースとする漁港では季節によってさまざまな魚が獲れるが、夏場はウニ漁のシーズンだ。

漁の開始時間、5時半になると一斉に海へ出て行く漁師たちの中で、彼女が向かったのは浜辺に近いポイント。ウニ漁は、ガラス箱と呼ばれる道具で海中を探していくが、身を乗り出しながらの作業は、バランスを崩すと海に落ちる危険もある。

しばらくして手にした「タモ」と呼ばれる網には大量のウニが。

多くの漁師は、1箇所を1回流すとすぐに別のポイントに移っていくが、彼女は一度決めたポイントを離れない。むしろ、他の漁師が以前探した場所でも探すという。 他の漁師の見落としを狙うことで、その間に成長したウニが獲れることもある。そういったウニは大きく、身が詰まっているので、高値がつくのだとか。

「やっぱり男性と女性の力の差っていうのは、どうしてもあると思うんです。女性らしさっていうキメ細やかさだったり、忍耐とか、工夫したやり方とかでカバーしていかなくちゃいけない」と、女性漁師ならではの“武器”を明かした。

ルール②:殻に沿ってウニの身をむく

漁から戻り、正午、自宅の作業小屋で始まったのは、獲ってきたウニの身むきの仕事。内臓や殻が入らないよう、細心の注意を払って作業を進めていく。

ウニは通常、形を保つ効果のある「ミョウバン」という添加物を使うが、彼女はその量をなるべく少なくし、丁寧にむくことで、ウニの形を維持するよう心がけている。

父・藤一(ふじいち)さん、母・伸子(のぶこ)さんも加わり、家族で行う一連の作業の中で、藤一さんはもっぱら、殻を割るだけ。「女性ならではの繊細さで対抗するしかない」と話す川内谷と伸子さん、女性陣が丁寧に身をむいていく。

そんな彼女のむき方には、ある特徴が。身を傷つけないよう、“殻を削るくらいの気持ちで”、殻に沿ってウニの身をむくという。

塩水(えんすい)で何度も洗い、最後にパック詰め。彼女のウニは市場でも高い評価をうけており、この日、彼女が獲った一番大きなウニは、100グラム6200円の値がついた。

ルール③:シケの日は息子とキャッチボール

1978年、3姉妹の長女として生まれた彼女。短大卒業後は、福祉施設で事務員として働いていた。転機となったのは5年前、父の藤一さんが心筋梗塞で倒れたこと。

意識不明の重体だった父だが、その3日後に目を覚まし、奇跡的に持ち直した。しかしこれまでのように1人で漁を続けるのは難しいという判断から、彼女は家業を継ぐことを決心し、男社会である漁師の世界に飛び込んだ。

そんな彼女が漁に出る前に必ずしているのが、早朝、まだ眠っている末っ子の遥泰(はるや)くんにキス。「可愛くて仕方ないのと、『お母さん頑張ってくるね』という気持ちも込めて」だと明かす。

5年前に離婚した彼女。大学生の長男と長女は現在一人暮らしをしており、小学1年生の遥泰くんの子育て真っ盛りだ。

「シングルマザーで3人も育てていけるのかな」と不安に陥った中で決意した漁師の道だが、「自分が楽しいと思う仕事に出会えれば、そこからいろいろ変わってくる。逆に楽しく子育てができている」と話し、この仕事に出会ったことで前向きになれたという。

あいにくの“シケ”(強風などの悪天候のために海上が荒れること)で漁に出られない日には、決まって、遥泰君とキャッチボール。母としてだけではなく、父親の役目も、一人で二役を果たそうとしている。

ルール④:両親にハンドルは握らせない

もともと運転するのが好きだったという父・藤一さんだが、家族みんなで買い物に行く際、車を運転しているのは彼女。「両親にハンドルは握らせない」 というのが、心に決めているルールの一つだ。

「両親が歳を重ねる中で、危ないところがないか、とか。それを見つけるのは私の仕事だと思っている」と話す。両親にはいつまでも元気でいて欲しいと願い、家族が移動するとき、運転をいつも請け負っている。

ルール⑤:毎週土曜日は観光ツアーを企画する

毎週土曜、ウニ漁は休漁日。休日を返上して彼女が取り組んでいるのが、ウニの身むきの体験ツアー。観光客を迎えて、ウニの身むきを体験してもらい、むいたばかりのウニとともに、手料理をその場で振る舞う。

「余市にはこういう女性漁師がいて、こういう催しものをやってますよっていうのを知ってもらう、ひとつのツール。漁師って、どちらかというと人気のない職業じゃないですか。漁師という仕事に興味を持ってもらうために」と語る彼女は、その発信力が認められ、全国でも25人しかいない水産庁の「水産女子プロジェクト」のメンバーにも選ばれている。

ルール⑥:網を張った後は寝て待つ

ウニ漁のシーズンが終わると、サケ漁が始まる。川内谷は父と共に、魚が通過する場所に網を張り網目に魚をからませる「刺し網」という漁法(ぎょほう)でサケを獲る。

およそ4キロほど網を張ると、サケがかかるのを朝まで待つ必要があり、通常、漁師はここで一旦家に帰るのだが、彼女は狭い船倉に潜り込んで仮眠をとり、藤一さんもそれに従って操縦室で仮眠。

帰る時間がもったいないから、と、家に戻らず船で寝ることで体力を温存している。そして、3時間の仮眠を終えた朝6時。網にかかったサケで、用意していた箱はいっぱいに。

この日は「まさかこんなにかかっているとは思わなかった」と、彼女自身も驚きを見せるほど、大漁だった。

ルール⑦:働く姿を子どもに見せる

ある日、ヘラガニを獲っていた彼女。息子・遥泰くんが「これ、海に返してきていい?」と声をかける。小さいカニを海に戻すのは遥泰くんの役目だ。

「子どもにも、私の働いている背中を見せられる」ときが、漁師になって良かったと、心から思える瞬間だという。

「私自身も親の背中を見て育ってきているので。やっぱり自分が親になってから、大変な思いして(好きなことを)やらせてくれてたんだっていうことに気付いた」と振り返る。

家に帰った息子の目に飛び込んでくるのは、いつも働いている母の姿。「お母さんのことどう思う?」と聞いたスタッフに「かっこいい」と一言。

いつかきっと、彼女が漁師として働く理由に、遥泰くんも気づくだろう。

※記事内、敬称略。

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次回、9月29日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、「シネマ尾道」支配人・河本清順に密着。「東京物語」「時をかける少女」の舞台となった映画のまち・尾道に映画館を復活させ、俳優の井浦新も「24時間ずっと映画のことしか考えてないんだろうな」と感心する、彼女の7つのルールとは。