【フランスなるほど雑学1】コロナウイルスの影響で“あの挨拶”がなくなった!?

現地の人々には当たり前なことでも、日本人からするとあっと驚いてしまうような雑学が世界にはあります。気がつけば在仏歴12年にもなる筆者も、びっくりしてしまうようなフランス人の行動や習慣、文化などに日々遭遇しています。理由や文化背景を知れば「なるほど、そうだったのか」と思わず納得してしまうフランスの数々の雑学。今回は挨拶編をお伝えします。

コミュニケーションはまず「ボンジュール」から

旅行先などで道に迷って、知らない人に声をかけるときは、日本ではまず「すみません」という一言から入りますよね。フランスでも「Excusez-moi(エクスキューズモア)」という「すみません」を意味するフレーズがありますが、実はこの一言から入るのは御法度。場合によっては失礼と捉えられることもあります。日本の習慣が染み付いている筆者も、このようなシチュエーションで「すみません」と言ってしまったことが過去に何度かありましたが、「そういう風には言わないよ」とフランス人に言われてしまう始末・・・。

では、何と言って声をかけるのかといいますと、「ボンジュール」(こんにちは)。日本人からすると、誰か知らない人から「こんにちは」といきなり話しかけられると、距離の近さにちょっと驚いてしまいますが、フランスでは「ボンジュール」と言って声をかけることが当たり前なんです。

そもそもフランスでは、コミュニケーションの最初は「ボンジュール」から始まります。例えば、お店に入店するときは、必ず「ボンジュール」と言って、お店に入らなければなりません。「ボンジュール」はフランスにおいて、挨拶の基本のマナーなのです。

男性は握手、女性はビズ

フランスでは、ホームパーティーなどで初めて会う人や知っている人に出会うときに、男性は握手、女性は「ビズ」と呼ばれる頬と頬をくっつけてする挨拶のルールがあります。

握手はそもそも「武器を持っていないことを示す」ために行われるようになった欧米での挨拶の習慣のひとつ。日本では挨拶の際にお辞儀することが習慣となっているので頭を下げますが、フランスではしっかり目を見て握手をしなければなりません。握手のときに目を逸らしてしまうと失礼にあたるので、注意しなければなりません。

挨拶において、頬と頬をくっつけることは、日本だとかなり驚きの挨拶の仕方かもしれません。知り合いのフランス人女性が、東京に住むフランス人の友達にクラブで会ったときにビズをしたら、「きゃー、みんなでキスしてる!」と、隣に居合わせたほかのお客さんたちに驚かれたのだとか。日本人からすると距離が近すぎるように感じますが、逆にフランスでビズをしないと、「この人は私と親しくなりたくないのかな」「私と距離を取りたいのかな」など、勘ぐられる理由となるのです。

コロナ禍で握手やビズは自粛中

フランスでは3月のロックダウン以前から、握手やビズで挨拶をしないようにと自粛のお達しが政府からありました。というのも、フランスで新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大した理由のひとつが、握手やビズであると考えられたからです。フランスでは、握手やビズをする人はほとんどいなくなりました。ロックダウン解除の直後には、伝統的な挨拶方法ができなくなり、「距離感を感じてしまって寂しい・・・」と話すフランス人もいました。

しかし、フランスのメディアは握手やビズに代わる挨拶の方法を紹介して話題となっています。例えば、2006年の鳥インフルエンザや2014年のエボラ出血熱の際に、アメリカの保健当局が握手の代わりに行っていた、「Elbow bump」(肘バン)と呼ばれる、2人の肘が触れる挨拶の仕方や、足と足でタッチして挨拶する「武漢シェイク(武漢握手)」など、非接触型の挨拶方法が取り入られつつあります。

フランスでは、ここ最近、以前のような挨拶の仕方である握手やビズがほとんどなくなったことが不思議と当たり前のようになってきています。新型コロナウイルスの収束後には、どのような挨拶の仕方が主流となっているのでしょうか。

今回はフランスの挨拶の仕方をお届けしました。フランスに来た当初は、日本とはかなり違う挨拶の仕方に戸惑ってしまった筆者ですが、フランス流の挨拶をすることによって、フランス文化にちょっぴり溶け込んだような気がしました。挨拶を通して、ほかの国のことを理解する。挨拶は異文化を知る最初の手段のように思います。

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