ニュル24時間:ポルシェが新型コロナの影響について説明。代役に“セミリタイア”2名を招集

 9月24日から、ドイツのニュルブルクリンクで開催されているADAC・トタル24時間レース(ニュルブルクリンク24時間レース)。そのレースウイークに入って、前週にル・マン24時間に参戦していたポルシェ勢に新型コロナウイルスの感染者が出たことで、ニュルの絶対的王者マンタイ・レーシングが参戦を取り止めるなど、衝撃が広がった。ポルシェはニュルブルクリンクで行われた記者会見のなかで、この経緯について説明した。

 ドイツの各メーカーが覇を競うニュルブルクリンク24時間のレースウイークに向け、9月24日に行われた記者会見。本来ならば、ドイツの自動車メーカーに所属するワークスドライバーが1名ずつ参加して抱負や展望を語る会見だが、ポルシェワークスドライバーの参加ができないとあり、急遽ポルシェのGT3プロジェクトマネージャーのセバスティアン・ゴルツが登壇した。

 ポルシェは前週に開催されたル・マン24時間のレース後、ワークス関係者全員が受けたPCR検査において、関係者3名の陽性反応が確認され、ル・マン24時間にポルシェGTチームとして参加していたマンタイ・レーシング、および全ポルシェワークスドライバー、広報等の関係者全員が急遽ニュル24時間レースへの参加を取り止め、大きな波紋を呼んでいた。

 この決断の後、ポルシェはル・マンからそのままニュルブルクリンクに入る予定だった人員すべてをニュルへの出入禁止とし、自宅で隔離生活をさせることを決定。また、マンタイ・レーシングの911号車の参戦中止を迷うことなく即断したという。また、ケビン・エストーレ、ロマン・デュマをはじめとする各カスタマーチームのマシンをドライブする予定だったワークスドライバーにおいても、陰性か陽性かは関係なく、ニュルへの参加を取り止めざるを得なかったとゴルツは説明した。ポルシェにとってもマンタイ・レーシングにとっても、ニュル24時間参戦は長年の伝統であり、それらの決断は断腸の思いだったという。

 ただゴルツは同時に、この週末のために準備を重ねてきた7台のカスタマーチームのサポートは予定通りに行うことも決断する必要があったと述べた。すでにニュルに入り、パドックやピットでの設営作業中だったこともあり、予定していたワークスドライバーがドライブできなくとも、なんとか全車を無事にスタートラインへ並ばせるべく、急遽ドライバー探しが行われた。

 そこで選ばれたのが、事実上現役を引退し、ブランドアンバサダーや自身のチーム監督業に専念しているティモ・ベルンハルト、ヨルグ・ベルグマイスターといったドライバーたち。ゴルツから直接「今週末、何か予定が入っている?」と電話を入れ、「すぐ準備してニュルに水曜日に来られる?」と交渉した顛末を明かし、ベルンハルトとベルグマイスターの“隠居”ワークスドライバー2名が、日本でもおなじみKCMGのポルシェをドライブすることになった。

 ベルンハルトはニュル24時間で過去5回の総合優勝をもち、現在はペドロ・ラミーやマルセル・ティーマンとともに歴代最多優勝ドライバーとして君臨しているが、彼がニュル24時間に復帰するのはなんと7年ぶりだという。そんなベルンハルトに声を掛けてみたところ「どうなるかな、頑張ってみるよ」と笑顔でコメントを述べた。ベルグマイスターは2019年もファルケン・モータースポーツから参戦しており、ブランクはない。

 他にもドライバーのチーム交換やダブルヘッダー等、多くの陣営がなんとか短時間で困難を乗り切り、9月26日(土)の15時30分(日本時間22時30分)から第48回ニュルブルクリンク24時間レースがスタートすることになる。

急遽招聘されたヨルグ・ベルグマイスター(左)とティモ・ベルンハルト(右)
ファルケン・モータースポーツのポルシェ911 GT3 R
KCMGのポルシェ911 GT3 R

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