【幕末維新 山口れきし散歩】 No.8 「高杉晋作寓居地」

▲稲穂の香りが風に運ばれる(山口市江良)

 「山口私寄宿処ハ、江良村静間某之処ニて、格別入用之人も無之候故、断然御定候。立小路(堅小路)ヲ去事十四五下計、頗御閑静之場所ニ御座候。家も手細く小シンマリトして、住居も随分宜敷御座候。白雲野鶴之隙、朝暮ハ被思出候。私之幽栖之処ニ御座候ー」

 1863(文久3)年9月27日。高杉晋作は、両親に手紙を書いた。その頃、藩政府内で政務座役に就いていた彼は、役を退き、江良の借家で、隠棲生活を送ろうとしていたようだ。空に静かに浮かぶ白雲のように、野に遊ぶ鶴のように。何の束縛も受けず、悠々として自然の中で暮らしたい。だが彼には、まだ、次の大仕事が待っていた。

防長史談会山口支部長 松前了嗣

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