ゼロから始める東南アジアの不動産投資。メリット・デメリットや各国の特徴を解説

海外での不動産投資を検討している人たちに注目されているのが、東南アジアです。東南アジアは日本から近く、比較的アクセスしやすいことから、海外不動産投資の初心者向けだと言えます。

東南アジアで不動産投資を行うことには、日本に比べて様々なメリットがありますが、その反面デメリットもあります。今回は、東南アジアでの不動産投資を検討している方のために、メリットやデメリットから、投資先の国の選び方や各国の特徴について紹介していきます。

東南アジアの不動産投資|4つのメリット

東南アジアの不動産投資は、日本の不動産投資と比較しても、メリットに感じることは多いです。

・人口増加傾向にあるため、経済成長が見込まれる
・キャピタルゲインが得やすい
・不動産価格が安い
・利回りが高い

ここでは、それぞれのメリットについて、ひとつずつ説明していきます。

人口増加傾向にあるため、経済成長が見込まれる

少子高齢化により、人口が減っている日本と違い、東南アジア諸国では、人口が増加傾向にあります。「United Nations(国際連合)」のホームページにある「Total Population – Both Sexes」では、各国の年別の人口数が公表されています。日本と、代表的な東南アジア6カ国、それぞれの5年毎の人口推移は以下のとおりです。

日本では、2010年から人口が減ってきていることが分かります。その点、東南アジア6カ国では全て、年を経るごとに人口が増えていることが分かります。人口が増えれば、それだけ経済成長が見込まれるほか、賃貸需要も高くなります。

キャピタルゲインが得やすい

東南アジア諸国では、市場の取引が活発になっており、物価が上がる「インフレ」が起きています。インフレが起きると、不動産価格も上がるため、「キャピタルゲイン」を得やすくなります。

キャピタルゲインとは「売却益」のことで、具体的には、不動産物件を購入時より高く売却した際に得られる差益です。たとえば、ある物件を2000万円で購入して数年経った後、不動産価格が高騰して2500万円で売れれば、500万円のキャピタルゲインが得られます。

一方で日本では、これ以上の大幅な経済成長が見込めず、人口も減っているため、長い間物価が下がる「デフレ」状態です。そのため、不動産価格も上がりにくく、一流の不動産投資家でも、キャピタルゲインを狙って得るのは難しいのが実情です。

不動産価格が安い

インフレで値段が上がっているとはいえ、東南アジアの物価は、日本と比べると低いといえます。当然、不動産の価格も、日本より安価です。東南アジアには、外国人向けのジム・プール付きの高級コンドミニアムも多く、そちらのほうが日本の都心部のワンルームよりも安く購入できることもあります。日本だけでなく、物価の高い外国へ不動産投資をするよりも、費用的に始めやすいのが特徴です。

利回りが高い

不動産物件を購入するうえでは、投資額に対する収入の割合である「利回り」が重要です。年間の「表面利回り(経費の額を考慮せずに出す利回り)」は、以下の計算式で算出できます。

「年間利回り=年間の家賃収入÷物件の購入価格」

この利回りが高いほど、投資額に対する収益性が良く、利回りが低いほど、収益性が悪くなります。家賃収入が高く、物件の購入価格が安ければ、利回りは高くなります。東南アジアは物価が安いぶん、家賃もあまり取れないイメージがあるかもしれません。

しかし、都市部においては、家賃相場も高くなってきています。その一方で、物件の購入価格は日本よりずっと安いので、東南アジアの物件は、日本に比べて高利回りです。ただし、東南アジア全ての国の利回りが高いわけではなく、低い国もあるので注意しましょう。

東南アジアの不動産投資|3つのデメリット

東南アジアでの不動産投資はそう簡単なことではありません。メリットはさまざまありますが、同時にデメリットも存在します。不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」といわれていますが、事前にデメリットを把握し、それでも魅力的だと感じるようであれば投資を検討していきましょう。

・情報を集めるのが難しい
・カントリーリスクが高い
・日本のバブル期のようなキャピタルゲインは期待できない

ここでは、それぞれのデメリットについて説明していきます。

情報を集めるのが難しい

ひとつ目のデメリットは、情報を集めるのが難しい点です。国内であっても、土地勘のない場所で行う不動産投資は、何かと苦戦しやすくなっています。土地勘がなければ、その地域の賃貸需要が高いかどうかが分からないからです。

都心部に近くても、その地域の治安が悪ければ、賃貸需要は低くなります。こうした場所にある物件を、何も知らずに購入してしまえば、入居者付けに苦労することも。土地勘のない場所で不動産投資を始めるのは、国内でもハードルが高くなっています。日本から現地の情報を集めるのが難しいうえ、言葉の壁があり、文化も違う海外ならなおさらです。

カントリーリスクが高い

東南アジアで不動産投資を始めるうえで、大きなデメリットとなるのが「カントリーリスク」があることです。カントリーリスクとは、国の経済や政治的な事情によって、投資した際の収益の確保が難しくなるというリスクです。

東南アジアは、日本に比べて政治情勢が不安定で、法律や税制が変わりやすくなっています。現状でも、東南アジアでは外国人の不動産投資に対する規制が設けられている国がほとんどですが、今後ますます厳しくなる可能性もあります。

日本のバブル期のようなキャピタルゲインは期待できない

日本のバブル期には、たった1年の間に、不動産価格が倍近くに高騰することもありました。この場合、物件を売却すれば、物件の購入価格と同じだけのキャピタルゲインが得られます。

しかし、いくら成長していると言っても、東南アジアでこれだけのキャピタルゲインを得ることは期待できません。東南アジアの場合、1年での上昇率は、高くても10%程度と言われています。

日本のバブルは、国全体が裕福な状態から、国民が様々な投資を行ったことで得られた経済効果です。東南アジアは、成長局面にはあるものの、貧富の差が激しく、国全体が裕福とは言えないため、日本のバブルのような経済効果は見込めません。

東南アジアの不動産投資先は何を見て決めればいいか

東南アジアで不動産投資を行う場合、最初に決めることは、どの国で投資を行うかという点です。投資先を選ぶうえでは、以下の4点が重要になります。

・人口推移
・GDP成長率
・表面利回り
・不動産価格

ここでは、これらの各ポイントについて説明していきます。

人口推移

人口推移率が高ければ、今後の賃貸需要も高くなることが期待できます。United Nationsの「Total Population – Both Sexes」における、東南アジア6カ国それぞれの2019年と2020年の人口をもとにした人口推移率は、高い順に以下のとおりです。

いずれの国も人口推移率はプラスですが、特にラオスとカンボジアが高いことがわかります。

GDP成長率

GDPは「国内総生産」のことで、その国で一定期間中に生み出された財とサービスの価値の総額を指します。GDP成長率は、GDPが以前に比べて、どれだけ成長したかを表す指標です。

この数値が高いほど、その国の経済成長率が高いということになります。「THE WORLD BANK(世界銀行)」の「GDP growth (annual %)」では、各国のGDP成長率(年率%)が公表されています。東南アジア6カ国の2019年のGDP成長率(年率%)は、高い順に以下のとおりです。

1.カンボジア:7.1%
2.ベトナム:7.0%
3.フィリピン:6.0%
4.ラオス:4.7%
5.マレーシア:4.3%
6.タイ:2.4%

同年のGDP成長率は、世界全体では2.5%、日本では0.7%となっています。これらと比べると、いかに東南アジアのGDP成長率が高いかが分かります。

表面利回り

利回りは、国によって、高いところも低いところもあります。世界の不動産投資調査を行っている「Global Property Guide」では、国別の平均利回りが公開されています。こちらの「Country Analysis」の「ASIA」によれば、東南アジア6カ国の表面利回りは、高い順に以下のとおりです。

1.フィリピン:6.13%
2.カンボジア:5.33%
3.タイ:5.13%
4.ベトナム:4.33%
5.マレーシア:3.72%
※ラオスはデータなし

同データでは、日本の表面利回りは2.66%。それと比べて、東南アジアの表面利回りはずっと高いことが分かります。

不動産価格

不動産価格が安いほど、投資額が低く済むため、収益性が高くなります。イギリスの比較サイト「finder」の「Cost of a city centre flat around the world」では、国別に、寝室がふたつある物件の平均価格が公開されています。各国の平均価格は、安い順に以下のとおりです。

1.フィリピン:9万2000ポンド
2.マレーシア:9万7000ポンド
3.ベトナム:10万2000ポンド
4.タイ:16万9000ポンド
※カンボジア・ラオスはデータなし

日本の、寝室がふたつある物件の平均価格は39万1000ポンドで、公開されている国のなかでも5番目に高いという結果でした。それと比べると、東南アジア諸国の不動産価格が、いかに安いかが分かります。

東南アジアの不動産投資先と各国の特徴

一口に東南アジアと言っても、様々な国があり、国によって特徴や、外国人に対する規制などに違いがあります。ここでは、東南アジアで注目すべき6カ国と、それぞれの特徴や規制について説明していきます。

【タイ】大手日本企業が進出している

タイに進出する日本企業は多く、そのため駐在などでタイに居住する日本人は7万人を超えている

近年では、タイに進出する日本の企業も多く、在タイ日本人も増えています。家族で駐在する方も多く、日本人学校もあるため子育てもしやすいのが特徴。外務省が発表した平成30年版の「海外在留邦人数調査統計」の「国別在留邦人数上位50位推移」では、タイは「7万2754人」で4位にランクインしています。

東南アジアのなかでは、1番高い順位です。そのため、他の国に比べて、在留日本人の賃貸需要も見込めます。タイでは、外国人でも土地を購入できますが、それには投資資金として4000万バーツ(約1億4000万円)以上を保有していなければなりません。

【ベトナム】2015年から外国人の不動産購入が可能に

ベトナムではもともと、外国人の不動産所有が認められていませんでしたが、2015年の法改正により、外国人も不動産購入が可能になりました。ベトナムのメリットは、高いGDP成長率にあります。

年代別の人口では20代が多いため、今後数十年は安定した賃貸需要が望める点も魅力です。ただし、ベトナムでは現地でローンを組む場合、審査が特に厳しく、金利も約10%と高い点がデメリットです。

【フィリピン】リゾート地や都心部の利回りが高い

フィリピンは、不動産物件の平均利回りが6.13%と高いのがメリットです。特に、一等地の「コンドミニアム(分譲マンション)」は、利回りの相場が7~8%程度となっています。ホテルコンドミニアムなら、利回り10%以上も期待できます。ただし、フィリピンでは、土地の購入は法律で禁止されているので注意しましょう。

【カンボジア】首都プノンペンの不動産価格が上昇中

首都プノンペンのビジネス街。GDP成長率が高く、今後の経済成長が期待できる

カンボジアは、成長国のタイやベトナムと隣接しており、今後の成長が期待されている国です。GDP成長率は、ベトナムを上回る7.1%です。首都であるプノンペンの不動産価格は年々上昇しており、今後も上がっていくことが予測されています。

カンボジアでも、外国人が土地を購入することは禁止されています。建物については、1階や地下の部屋は購入できませんが、2階より上の階層の部屋なら購入可能です。

【マレーシア】カントリーリスクが低い

マレーシアは、他の国に比べて政情が安定しており、カントリーリスクが低い点がメリットです。ただし、マレーシアでは、外国人が購入できる不動産物件の価格に下限があります。現状、外国人はRM(マレーシア・リンギッド)100万(約2600万円)未満の物件は購入できません。

【ラオス】今後の法改正に期待

ラオスも、カンボジア同様、タイやベトナムに隣接しており、今後の成長が期待されている国のひとつです。1990年頃から、GDP成長率が毎年プラスとなっており、安定した成長が見られるのが特徴です。現在は、外国人の不動産購入は認められていませんが、今後ベトナムのように解禁されるという噂もあります。今後の法改正に期待したいところです。

東南アジア6カ国の比較

ここまで紹介した東南アジア6カ国の比較表は、以下のとおりです。各項目を比較して、投資先を検討してください。

東南アジアの不動産購入はローンを組めるか?

不動産投資では、物件の購入に高額な初期費用がかかるぶん、ローンを利用する人が多くなっています。東南アジアで不動産投資を行う場合も、金融機関から融資を受けられるのかと疑問に思う方は多いはず。結論から言えば、東南アジアでも、ローンを利用できます。東南アジアで不動産投資をする場合のローン事情について説明していきます。

現地の金融機関から融資を受けるのが一般的

東南アジアで不動産投資を始める際、ローンを利用するのなら、現地の金融機関から融資を受けるのが一般的です。海外の不動産物件の購入にあたって、融資をしてくれる国内の金融機関はほとんどないからです。

審査は国内で融資を受けるよりも厳しい

金融機関から融資を受けるには審査があり、この審査にパスしないと融資は受けられません。一般的に、東南アジアで現地の金融機関から融資を受けるのは、日本で国内の金融機関から融資を受けるよりも難しいと言われています。

海外で金融機関に融資を申し込むときは、日本と同様、様々な書類を用意する必要がありますが、言語の違いもあるため、審査以外の面でも苦労することは多いと言えます。

現地のディベロッパーや仲介会社から金融機関を紹介してもらう

異国の地で金融機関を探そうにも、どうやって探せばいいのか分からないという方もいるかもしれません。この場合は、現地のディベロッパーや不動産仲介会社から、金融機関を紹介してもらうことをおすすめします。ディベロッパーや仲介会社が、金融機関と提携していれば紹介してもらえます。

各国の規制や法律により条件が異なる

東南アジアでは、各国の法律や規制により、融資条件やルールが異なることがあります。ローンを利用する場合、融資金額は物件価格の6~8割程度と決められている国も多いため、投資先の融資条件は事前に必ず調べましょう。法律や規制がかわることもあるため、常に最新情報を得るよう努めてください。

東南アジアの不動産投資を始めるために準備しておくべき事

東南アジアで不動産投資を始めることを検討しているなら、失敗を防ぐためにも、やっておくべきことがあります。最低限、事前に準備しておくべきことは以下の3つです。

・常にネットなどで最新の情報を集める
・海外不動産投資のセミナーに参加する
・実際にその土地を訪れる

ここでは、東南アジアで不動産投資を始めるうえで重要な、上記3つについて説明していきます。

常にネットなどで最新の情報を集める

情勢に影響を受けやすい海外不動産投資では、インターネットで最新の情報を入手することが重要

不動産投資で成功するためには、常に地道な勉強が必要です。国内で不動産投資を行う場合、勉強方法は書籍とネットが主になりますが、東南アジアに特化した書籍は限られているため、主な情報源はインターネットになります。

「不動産投資 東南アジア」などのキーワードで検索すると、様々なサイトや記事が見つかります。こうした記事から、東南アジアでの不動産投資のやり方などを学びましょう。東南アジアは法律や規制が変わりやすいので、ニュースなどもチェックして、最新情報を入手するようにしましょう。

海外不動産投資のセミナーに参加する

不動産投資の勉強をするうえで、書籍やネットの他に、役に立つのがセミナーです。このなかには、特定の国に特化した、海外不動産投資のセミナーもあります。この時注意したいのが、なるべく有料のセミナーに参加することです。無料のセミナーは、終了後に何かを売りつけることを前提としていることが多いため、無知なまま参加してしまうのは危険です。

実際にその土地を訪れる

不動産投資を成功に導くうえで、実際にその土地を訪れることは欠かせません。実際に物件を見たり、治安状況をチェックしたりせずに物件を購入することは、博打を打つようなものです。しっかり現地を確認して、賃貸需要が高いかどうか、チェックしておきましょう。

低金利時代、東南アジアの不動産投資を視野に入れる

不動産投資はよく、ミドルリスク・ミドルリターンの投資と言われています。銀行の定期預金などはローリスクですが、金利は良くても0.2%程度で、リターンはほとんど得られません。

その点、不動産投資にはリスクはあるものの、うまくいけば十分な利益を得られます。とはいえ、日本の不動産物件は利回りが低く、キャピタルゲインも狙えません。その点、東南アジアなら、利回りが高く、物件価格が上がっているので、キャピタルゲインも十分狙えます。これから資産運用を始めたいという方は、ぜひ東南アジアでの不動産投資も視野に入れてみては。

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