サラリーマンがアパート経営するメリットとリスクとは?副業として不動産投資を始める方へ

2019年に生じた「老後2000万円問題」などが契機となり、最近は資産形成や資産運用に関する知識の必要性が高まっています。とくに、多くのサラリーマンの注目を集めているのが、本業に集中しつつ資産形成ができる不動産投資です。今回は、サラリーマンが副業として不動産投資を始める場合のメリットやリスク、実際の失敗例などをご紹介します。

サラリーマンが不動産投資に向いている理由

数ある副業のなかでも、サラリーマンには不動産投資が向いているといわれます。実際、本業で得た収入を元手に不動産を購入し、大家として毎月安定した家賃収入を得ている方も少なくありません。こちらでは、サラリーマンが賃貸経営や不動産経営に向いているといわれる理由を3つ紹介します。

ほとんど手間がかからない

アパート経営は、いわゆるオーナー業ですが、管理業務を自ら行う必要はありません。所有している物件の運営は不動産管理会社に委託できるため、ほとんど手間をかけずに運用が可能です。たとえば、株式投資は自ら売買する必要があります。リスクを抑えて投資を行うまでには、多大な時間や労力が必要です。

その点、不動産投資は、管理業務をプロに任せることで時間や労力を最小限に抑えつつ利益を最大化できます。本業が忙しいサラリーマンにこそ適している副業といえます。

融資を利用して資産形成が始められる

資産形成は、自己資本を用いて資産を増やす方法が一般的です。たとえば、株式投資は自己資本から資金を捻出し、投資を行います。安定した利益をあげるには、多くの自己資本が必要です。不動産投資は、金融機関からの融資を受けてマンションやアパートの一室を購入するのが一般的です。他の投資商品とは異なり、融資を活用して資産形成を始められるため、多くの資金を準備できない方でも投資できます。

融資を受ける場合、金融機関から審査を受けます。サラリーマンは経営者と異なり、金融機関の審査で勤務先の信用力を活用できるため、融資を受けやすいのが特徴です。大企業や業界で名の知れた会社に勤めていて安定した収入があるなら、さらに融資を受けられる可能性は高まります。

融資を受ける場合、主に下記の5つの項目について審査が行われます。
・勤務先
・収入
・金融資産の有無
・借入状況
・家族構成

生命保険の代わりになる

不動産投資を始めるにあたって、金融機関から融資を受ける場合、あわせて団体信用生命保険の加入が義務づけられているケースがほとんどです。団体信用生命保険とは、ローンの契約者が死亡や高度機能障害などにより返済できなくなった場合に、生命保険会社がローンの残債を金融機関に支払う仕組みです。金融機関はローンの回収漏れを防ぐことができ、契約者の家族は残債に悩まされることなく、家賃収入を継続して得られます。つまり、不動産投資は生命保険の代わりになるといえます。

アパート経営は副業にあたるのか?

アパート経営やマンション経営などの不動産投資は、副業ではなく投資として扱われるのが一般的です。ただ、事業規模が大きくなると副業と判断され、就業規則に抵触する可能性があります。不動産投資が副業とされる基準や、会社員・公務員の副業禁止規定について確認します。

小規模であれば副業にあたらない

一般的にアパート経営は、小規模であれば副業にあたりません。アパート経営は不動産管理会社などのプロに任せることが多く、収益を得るために労働を必要としない点が大きな理由です。本業に影響を及ぼすことも少なく、副業とは判断されにくい傾向にあります。

また、不動産投資は、自ら物件を購入して始めるケースばかりではありません。相続などをきっかけに物件を取得し、必要に迫られて管理を行う例も多く見られます。そのため、一律に不動産投資を副業と判断するのが難しいといわれています。

事業規模にあたるのは「5棟10室」から

不動産投資が副業とみなされないのは、あくまで小規模な範囲で行われている場合のみであり、規模が大きくなると「事業」となり副業と判断される可能性が高まります。事業規模かどうかの判断は、「5棟10室」を基準とするのが一般的です。戸建て物件であれば5棟、アパートやマンションであれば10室以上に投資していると、事業と判断されます。サラリーマンの場合は、副業禁止規定に抵触する可能性があります。

会社員の副業禁止規定

サラリーマンは、会社の就業規則に従う必要があります。そして、日本の多くの会社の就業規則には、副業禁止規定が定められています。副業によって本業がおろそかになることや、本業と副業の利害関係の発生、同業他社への情報漏洩などの懸念が一般的な理由です。副業禁止規定をはじめとした就業規則に違反すると、懲戒処分などを受ける可能性があります。ただし、労働を伴わない不動産投資は、本業と関係ないのであれば、例外とされるのが一般的です。

サラリーマンが不動産投資を行う場合は、副業禁止規定で不動産投資まで禁止しているのか、Wワークなど狭義の副業のみを禁止としているのか確認する必要があります。不動産投資まで禁止しているのであれば、物件を家族の共有名義にするなど対策が必要です。

公務員の副業禁止規定

公務員には就業規則はありませんが、人事院規則で副業や自営が禁止されています。ただし、副業や自営については一定の基準が示されており、それを満たさない範囲であれば副業とは判断されません。不動産投資の場合は「5棟10室」、および年間の家賃収入が500万円未満などの条件を満たせば、人事院規則の副業にはあたらず、許可を得ることなく投資が可能です。

この範囲を超える事業を行っている場合は、管理業務を外部に委託したうえで承認を得る必要があります。なお、地方公務員の場合は、人事院規則をベースとして独自の規定が設けられているケースもあります。不動産投資を始める前に確認しましょう。

アパート経営のリスク

投資には、必ず一定のリスクがあります。不動産投資は、とくにリスクが高いイメージがあり、手を出せない方も少なくありません。ただ、アパート経営をはじめとした不動産投資は、ほかの投資商品と比べてリスクとリターンが予想しやすいのが特徴です。事前に把握しておけば、リスクも最小限に抑えられます。こちらでは、アパート経営で生じる7つのリスクを紹介します。

空室リスク

アパート経営の最大のリスクは、所有している物件に借り手がつかない、空室リスクです。長期間空室になると、その間家賃収入が得られないだけでなく、修繕費や積立金などでマイナスが発生します。自己資金から補填することになり、キャッシュフローが完全に崩れてしまいます。

空室対策としては、入居者が集まりやすい物件を選ぶことが大切です。空室が発生しにくい物件には、以下のような特徴があります。

・最寄り駅からの距離が近い
・交通の便がいい
・エリアの賃貸ニーズに適した間取り
・周辺の家賃相場に適した賃料設定

また、入居者募集実績の多い不動産会社を選ぶことも重要です。オーナーが自ら入居希望者を募るのは難しいため、経験豊富なプロに任せて空室リスクを最小限に抑えましょう。不動産会社のなかには、空室保証制度を取り入れているケースも見られます。

家賃下落リスク

アパートは築年数の経過により価値が下落するため、それに伴い家賃も安くしなければ、借り手が見つからなくなってしまいます。家賃を下げると得られる家賃収入も少なくなります。これが家賃下落リスクです。エリアや立地によっても異なるものの、築3~10年の下落幅が一番大きく、築20年ほど経過すると下落傾向がゆるやかになります。

ただ、物件のエリアや間取り、立地、再開発事業などによっては、物件の価値が上昇するケースもあります。物件を購入する場合は、周辺の家賃相場や賃料の推移、今後の見通しなどを総合的に考慮することが大切です。中古物件の場合は、管理会社から今までの家賃の推移に関する資料などを取得できます。

金利上昇リスク

金融機関の不動産投資ローンを活用して投資を始めた場合、同時に返済もスタートします。不動産投資ローンは35年や40年といった長期で設定されることも多く、経済状況の変化によって金利が上昇し、最終的な返済額が増える可能性も考えられます。これが金利上昇リスクです。

とくに、近年の日本は史上最低金利となっており、返済期間が長くなればなるほど金利上昇リスクは高まります。金利が上昇すると返済額が増え、キャッシュフローにも影響を及ぼします。金利上昇リスクを最小限に抑えるには、以下のような対策を施すことが大切です。

・変動金利ではなく固定金利を選ぶ
・繰り上げ返済を積極的に行う
・金利上昇を考慮して融資額を決める
・5年ルールや1.25倍ルールを活用する

固定金利は、変動金利より元々の金利が高く設定されており、支払い終わるまで金利が変動しないものです。金利上昇に不安を抱くことなく収支計画を立てられます。

5年ルールとは、本来半年に一度見直される変動金利型のローンにおいて、5年間返済額が変わらない制度です。少なくとも5年間は現在の金利となるため、今後の支払いスケジュールを立てやすいのが特徴です。1.25倍ルールを活用すると、見直し後の金利がどれだけ上昇しても、返済額が1.25倍を超えることはありません。返済額の上限がひと目で判断できるため、どの程度資金に余裕を持てばいいのかがわかりやすくなります。

災害リスク

日本では、大規模な地震や台風などが毎年発生しており、アパート経営をする際は災害リスクに備える必要があります。地震保険に加入するのはもちろん、火災保険にも必ず加入し、地盤の強いエリアを選ぶことも重要です。

また、物件を選ぶ際は、新耐震基準を満たしているかを確認しましょう。新耐震基準とは、1981年に設定された基準で、それ以前のものを旧耐震基準と呼び区別しています。旧耐震基準では震度5強に耐えられるかどうかを基準にしていましたが、新耐震基準では震度6強や7に耐えることを想定しています。実際、新耐震基準を満たしていたマンションは、阪神淡路大震災や東日本大震災のときも倒壊しなかったものが多く見られました。

修繕リスク

アパートには、エアコンや給湯器など、経年劣化によって交換する必要のある設備があります。また、築年数が経過すると、フローリングや壁紙などの交換も必要です。

アパート内の設備の故障は、入居者の故意や過失によるものでない場合は、基本的にオーナー負担で修繕しなければなりません。修繕リスクは回避できないため、費用が必要となったタイミングで慌てないためにも、修繕費を毎月積み立てておきましょう。目安は、賃料収入の3%程度です。

流動性リスク

投資を始める場合、スタートの方法だけでなく出口戦略、不動産投資では「最後に不動産を手放すタイミング」についても考える必要があります。不動産は取引市場がなく、買い手と売り手の双方が見つからないと成立しない相対取引です。売却に時間がかかるため、その間に老朽化が進み、価値がさらに下落してしまう可能性もあります。流動性リスクを最小限に抑えるためには、常に出口戦略を考えておくことや、投資した物件を良好な状態に維持することが大切です。

事故物件リスク

不動産投資では、収益物件が事故物件となる可能性が考えられます。事故物件となった場合、事故が発生してから数年間は告知するのが通例です。そうすると、以前と同じ賃料で入居者を募るのは難しいでしょう。事故物件リスクをゼロにすることはできませんが、最近はそういった事件にも対応している保険があります。保証内容は会社によって異なりますが、原状回復や6~12か月の空室保証がついているものもあります。万が一に備えてこうした保険に加入しておくのがおすすめです。

サラリーマンがアパート経営をする場合の失敗例

副業としてアパート経営を行うのであれば、物件管理は不動産会社に任せるのが無難

投資は、全員がイメージ通りに成功するわけではありません。ただ、失敗する方には一定の共通点があり、それを学ぶことで失敗の可能性を大きく減らせます。こちらでは、サラリーマンがアパート経営をする場合の失敗例について紹介します。

リスクの認識が甘い

サラリーマンのアパート経営の失敗は、多くがリスクの認識の甘さが原因です。金利の上昇を考慮して資金計画を立てておらず返済が滞ったり、入居者募集業務に弱い不動産会社を選んで空室が長く続いたりと、リスクをしっかりと認識していれば防げた失敗も少なくありません。

購入した物件の管理をプロに任せていると、リスクへの対応も会社任せになってしまいがちです。ただ、不動産会社には過去の空室状況や家賃の下落の可能性など、オーナーにとって不利な情報の告知義務はなく、オーナー自身が積極的に情報を収集する必要があります。アパート経営で失敗しないためには、オーナー自身がリスクを徹底的に認識し、不動産会社をうまく使いこなすことが大切です。

地域や物件の調査不足

アパート経営において、もっとも重要なのが「どの物件を購入するか」という点です。賃貸需要が高く、それを維持できるような物件を購入できれば、多くのリスクを回避できます。

入居希望者の需要をつかむためには、地域や物件の徹底した調査が欠かせません。リサーチが不足しており、正しい情報を把握できていないと、割高な物件を購入してしまったり、ニーズのない地域を選択してしまったりします。物件を購入する際は、リサーチに多くの時間をさきましょう。

利回りを優先する

利回りを優先しすぎるのも、サラリーマンがアパート経営で失敗する原因のひとつです。利回りとは、運用資金に対して得られた利益を1年あたりの平均に直したものを指します。利回りが高い手段を選ぶほど得られる収入は増えるため、利回りは不動産投資をするうえでも重要な指標です。

ただ、不動産投資の利回りには想定利回り・表面利回り・実質利回りの3種類があり、物件を購入する際に不動産会社から提示されるのは主に前者ふたつのどちらかです。

想定利回りとは、アパートが満室状態であることを想定した利回りです。表面利回りとは、管理費や税金などの経費を考慮しないで算出した利回りを指します。実際のアパート経営では、空室が出ることもありますが、その場合も管理費や税金などの経費を支払わなければなりません。つまり、想定利回りや表面利回りはあくまで目安であり、必ずしも実態を反映しているとはいえないのが実情です。

想定利回りや表面利回りを優先して物件を選ぶと、実際のアパート経営はその通りいかず、失敗する可能性があります。利回りを計算することは大切ですが、優先しすぎないように注意しましょう。

物件管理を自分で行う

前述の通り、サラリーマンがアパート経営をする場合、物件管理はプロに任せるのが一般的です。ただ、不動産会社に依頼すると管理費がかかるため、自主管理でコストを抑えようと考える方も少なくありません。

自主管理では、通常不動産会社に任せる作業をすべて自分で行う必要があります。本業のあるサラリーマンにとっては簡単ではありません。結果、物件管理が行き届かなくなり、入居者が離れてしまうこともあります。副業としてアパート経営を行うのであれば、物件管理は不動産会社に任せるのが無難です。

本業の節税効果を期待する

不動産投資は、家賃収入(インカムゲイン)とアパート経営に関わる費用の収支を赤字にして給与所得を減らす、つまり節税効果を期待して始める方も少なくありません。減価償却費という名目上の費用を計上し、給与所得から毎年一定額を控除します。一見節税効果が期待できそうですが、問題となるのが不動産の売却のタイミングです。

減価償却費を計上するたびに不動産の価値は減少するため、数年後に購入時と同じ価格で売却できた場合でも、計上した減価償却費の金額分が譲渡所得として課税対象になります。購入後5年以内の短期譲渡であれば、通常より高い税率が課されます。最終的には、節税効果どころか大きな赤字を抱えるケースも珍しくありません。

アパート経営の節税対策

アパート経営には、一定の節税効果があります。過度に期待しないほうがいいものの、安定した経営を行うためには、理解しておくことが大切です。こちらでは、アパート経営の節税対策を紹介します。

必要経費を計上する

アパート経営をはじめとした不動産投資を行う場合は、必要経費を計上して利益を絞り、課税所得を減らすことが大切です。アパート経営で必要経費として計上できるものの一部を列挙します。

・固定資産税や不動産取得税など、不動産の維持や購入時にかかる税金

経費になる減価償却費とは

経費のなかでもっとも大きな項目を占めるのが、減価償却費です。減価償却費とは、不動産の資産価値の目減りのスピードを、会計上で定めたものです。たとえば、RC造のマンションは47年、木造アパートであれば22年で資産価値がゼロになるように経費計上を行います。3000万円の木造アパートを購入した場合は、3000万円÷22年=約136万円を毎年減価償却費として計上できます。

減価償却費は名目上の費用であり、実際にお金が動くわけではありません。ただ、利益を絞って課税所得を減らすことができるため、節税のスキームに利用されます。

確定申告を忘れずに

アパート経営を行う場合は、青色申告により確定申告を行うのが一般的です。青色申告を行うと、所有しているアパートの部屋数などによっても変わりますが、最高65万円の控除を受けられます。面倒に思う方も少なくありませんが、確定申告は忘れずに行いましょう。

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