マンション経営で手取り収入はいくら?経費や税金など徹底解説

物件の維持管理には多くの費用がかかり、税金も納める必要があります。家賃収入のすべてが手元に残るわけではありません。マンションを経営する場合、手取り収入がいくらになるか気になるところです。今回はマンション経営でどれくらい利益があるか知るため、必要経費や税金について詳しく解説します。

マンション経営における手取り収入はいくら?

マンション・アパート経営で不動産投資する場合、収入から経費を差し引いた収益が不動産所得です。同じく収入から経費に限らずすべての支出を除くと、手取り収入が計算できます。手取り収入は最終的に手元に残った金額を意味し、キャッシュフローとも呼ばれています。

マンションオーナーの平均年収

マンションオーナーの平均年収は、ワンルームマンションを目安に家賃10万円で設定した場合、約120万円といわれています。ただ、この数字は「毎月の家賃収入10万円×12カ月」を単純計算した金額です。実際には建物の立地条件やグレードに応じて家賃の設定額は変化し、物件購入でローンを組めば月々の返済が求められます。マンション経営の手取り収入は一律でなく、さまざまな要素を含めて計算する必要があります。

マンション経営における収入の内訳

マンション経営で得られる収入は、主に家賃収入、共益費、礼金、更新料です。

家賃収入

家賃は、マンション経営において多くの割合を占める収入です。通常、家賃の支払日については賃貸契約を通じてマンションの貸主が指定します。ほとんどの物件で支払期日は1ヶ月ごとに設定され、基本的に入金は前払いです。家賃の支払日を1ヶ月間隔で設定した場合、貸主は月ごとに一定額の収入を得られます。入居者を確保すれば定期的な収入を得られるところは、マンション経営の大きな魅力です。

共益費

共益費は、家賃の一部として得られることの多い収入です。費用の用途について、法律上は明確に規定されていません。よく見られるケースは、電灯のメンテナンスや駐車場の整備に使われるパターンです。町内会費が含まれることもありますが、ほとんどの場合には共有スペースの維持管理に使われるため管理費とも呼ばれます。

礼金

礼金は、借主から貸主に物件を借りることへの感謝の気持ちを伝えるため用意される謝礼金です。通常、契約が成立したとき初期費用として支払われます。一般的な費用相場は家賃の1~2カ月分といわれます。あくまで感謝の気持ちの表れであるため、返還する必要はありません。

礼金の由来については、関東大震災で家を失った人々が住まいを提供してくれる家主に渡した謝礼、あるいは下宿する子どもを思って親が大家に送った心づけなどの説が知られています。いずれが起源かはっきりしませんが、かつての風習が時間とともに習慣となり礼金と呼ばれるシステムは定着しました。

更新料

更新料は、物件の賃貸借契約が更新されるときに借主から支払われる費用です。多くの物件では、賃貸借契約の有効期間が2年に設定されています。契約満期を迎えたときに借主が引き続いての入居を希望すると、契約更新が必要になり多くの場合に更新料が発生します。たいてい、契約期限の1ヶ月ほど前に借主が退去する意思を示さなければ契約は自動更新される仕組みです。

更新料の相場は、礼金と同じく家賃の1~2ヶ月ほどです。最近は入居者を確保するため更新料が設定されないケースもみられますが、一般的には契約が更新されると貸主は更新料を得られます。

マンション経営における支出の内訳

マンション経営に伴う支出は、修繕費、保険料、水道光熱費、メンテナンス費、管理委託料、仲介手数料、ローン返済費、固定資産税・都市計画税や減価償却費などです。確定申告する際には、これらを必要経費として計上すれば節税対策につながります。

修繕費

修繕費は、必要に応じて建物を改修する際に用意する費用です。通常、マンション経営では建物の経年劣化を避けられません。部屋を長く貸していると、日頃の手入れを心がけていても徐々にさまざまな傷みが出てきます。借主に少しでも快適な利用環境を提供するには、問題がある部分の修繕が不可欠です。

長い時間が経過すると、賃貸物件へのニーズも変化します。次々に新しい設備が登場するなか旧式を使い続けていれば、入居者の確保は難しくなるかもしれません。古い物件では、最新のニーズに応えるため多くのリフォーム費用が必要になる場合もあります。

保険料

保険料は、マンション経営で保険に加入すると発生する費用です。とくに貸主が加入を検討したい保険には、火災保険や損害保険、地震保険があります。火災は、入居者に責任が問われるとは限りません。火災の原因によっては貸主に対応が求められるため、火災保険への加入は必須といわれています。

共用部分でトラブルがあり入居者に損害が生じた場合、貸主が損害保険に入っていると賠償に充てられます。地震保険は、地震で建物に被害が出たときに適用される保険です。国内で地震が起きやすい点をふまえると、地震保険への加入も望まれます。

水道光熱費

マンションの水道光熱費は、貸主の負担になるケースがあります。マンションは、入居者の個人スペースと共用部分のふたつに分けられます。個人スペースは入居者が管理しますが、共用部分は貸主の管轄になります。そのため、共用部分で水道光熱費が発生すれば支払いは貸主の担当です。

ほとんどのマンションで、エレベーターや廊下の電気はすべての入居者に共用されています。水道やガスの設備も、マンションの共用部分に設置される場合があります。入居者が共用する設備の水道光熱費は、通常であれば貸主が支払うことになるのが基本です。

メンテナンス費

マンションは、建物だけでなく備えつけの設備も時間とともに劣化が進みます。そのまま放置していると、各々の設備でさまざまなトラブルを招きます。たとえば、屋外に設置した電灯がつかなくなるケースは珍しくありません。エアコン関連の設備が故障して、破損した部品を交換しなければならない場合もあります。

こういった事態が生じても入居者に気持ちよく過ごしてもらうには、建物の修繕費とともに日頃の細かい手入れで使うメンテナンス費用が不可欠です。

管理委託料

管理委託料は、マンションの管理業務を外部に委託すると発生する費用です。通常、業務委託の依頼先には不動産管理会社が選ばれます。マンションを経営する際、管理業務の中身は多岐にわたります。日常的なメンテナンスから建物全体の大規模な修繕まで、自分ひとりで引き受けるとなれば大きな負担です。

そんなとき負担軽減に効果的な選択肢が、不動産管理を外部委託する方法です。委託料はおよそ家賃の2~5%であり、入居者募集の費用などが含まれることもあります。

仲介手数料

仲介手数料は、不動産売買や物件の賃貸を仲介してくれた不動産会社に支払う費用です。マンション経営では、いつでも簡単に入居者が見つかるわけではありません。部屋が満室になるまで貸主が自分で入居者を探すとなると、多くの時間と手間がかかります。

入居者探しを不動産会社に仲介してもらうと、貸主はその負担を減らせます。仲介を依頼していても、自分で入居者を見つけた場合には手数料が発生しません。不動産会社による賃貸物件の紹介を通じて新しい借主と契約が成立したら、仲介手数料を支払います。

ローン返済費

マンション経営を始めるときには、物件の購入費を含めてさまざまな運営資金が必要です。すべて自分で準備できない場合、金融機関から借りるケースは多く見られます。ローン返済額は、実際に借りた金額と利息の合計です。利息分は、ローン金利に応じて算出されます。

固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、いずれも不動産を所有している場合に発生する税金です。

固定資産税は、全国各地の不動産所有者に課されます。通常は居住地域の市区町村で担当しますが、23区に居住している場合には東京都の管轄です。都市計画税は、都市計画法で定める市街化区域に不動産があると課されます。都市計画法によれば、市街化区域とはすでに市街化を終えたか、今後10年ほどで市街化を進めるべきと考えられている地域です。

減価償却費

減価償却費は、時間とともに低下していく固定資産の価値を計上する費用です。実際に支出されるわけではなく、概念的な費用ともいわれています。建物は使用するにつれて資産価値が下がります。完全に価値が失われるまでの期間は法定耐用年数と呼ばれています。

建物の取得原価が法定耐用年数で割られ、年間に減価償却された金額分が費用として計上されます。原価が100万円で耐用年数が10年なら、毎年の減価償却費は100万÷10年=10万円となる計算です。

マンション経営で納める税金

マンション経営で納める税金は、所得税、住民税、事業税、不動産取得税、登録免許税、印紙税や個人事業税・消費税です。そのうち所得税の対象は、年間収入から費用を差し引いた課税所得であり、課税額がいくらになるか計算する必要があります。

所得税

マンション経営では、家賃収入を得ると所得税が課されます。所得税の金額を計算する際、累進課税制度が適用されます。所得は、年間の総収入から費用として計上される必要経費を除いた残りです。累進課税では、所得金額が増えるほど税率も高くなります。

住民税

住民税も、所得税と同じく累進課税が適用される税金です。課税される金額は、年間の所得によって変わります。基本的には、所得額から所得に応じた控除額を差し引いて全国の住民に均等割りされる税額を加算します。住民税の均等割額は市町村税なら3500円、都道府県税であれば1500円です。

さらに調整控除額を計算すると、詳しい住民税が分かります。調整控除額には、配偶者控除、扶養控除や障害者控除が含まれます。住民税の詳細な金額を求めるなら、所得額や所得控除だけでなくひと通りの控除額もふまえて計算したほうが確実です。

事業税

事業税は、個人で事業運営している場合に課される税金です。マンション経営の場合、物件が大規模になり家賃収入が一定レベルに達すれば事業を行っているとみなされます。事業とみなすか判断するときの目安は、物件の部屋数です。部屋が10室ある建物からは、事業税の課税対象になる可能性が高いと考えられています。

事業税額は、所得から事業者控除を差し引いて税率をかけると計算できます。事業税の控除額は290万円であり、課税所得がこの金額以下なら事業税はかかりません。

不動産取得税

不動産取得税は、不動産を手に入れると初年度に課される税金です。不動産の入手方法は新規購入にとどまらず、交換や贈与による取得まで含まれます。標準的な税率は3%ですが、家屋での居住が目的でない場合には4%です。建物の床面積が50~240㎡以上あると、課税標準から1200万円の控除を受けられる可能性があります。中古物件の場合には、耐震基準を満たす必要もあります。

登録免許税

登録免許税は、土地や建物を登記するときに課される税金で、不動産取得税と同じく初年度のみ求められます。不動産を売買、交換や贈与で手に入れると税率は20%であり、相続した場合には0.4%に変わります。床面積が50㎡以上の物件は、登記が不動産の取得から1年以内であれば軽減税率を受けられる控除対象です。ただし、中古物件を所有権保存登記するケースでは適用されません。

印紙税

印紙税は、課税対象となる文書(課税文書)に課される税金です。不動産関係の場合、売買契約書や賃貸借契約書が課税文書に該当します。課税文書であっても法律で非課税要件が定められていると、税金は課されません。控除対象となる主な文書は、建物の賃貸借契約書、国・自治体が作成した文書、個人が作成した領収書です。印紙税も、不動産取得税・登録免許税とともに税金がかかる時期は初年度のみです。課税額は、不動産の取引価格に応じて決まります。

個人事業税・消費税

個人事業税は、個人事業主を対象とする事業税です。マンション経営では、すでに述べた通り部屋が10室以上ある物件は課税対象と認識される傾向が見られます。マンション経営の場合、消費税は居住に使われる部屋の家賃に課されません。初期費用で支払われる礼金なども、消費税の対象外です。物件のなかに貸事務所がある場合や入居者用でなく一般向けに駐車場を貸していると、課税売上高が1000万円以上のとき税金がかかります。

確定申告の注意点

青色申告は、特別控除や損益通算、家族の給与経費の計上などさまざまなメリットがある

マンション経営で一定収入を得た場合、確定申告の必要があるか、また申告方法はどれを選ぶか注意する必要があります。

確定申告を行う必要がある人は?

通常、会社に勤めていると所得税は給与から源泉徴収されるため確定申告は不要です。会社員がマンション経営で副収入を得ている場合、年収が2000万円以上のときや年間の不動産所得が20万円を超えた際に税務署へ申告する必要があります。

申告書の種類

申告書の種類は、白色申告と青色申告のふたつです。サラリーマンは状況に応じて書類を選べますが、それぞれメリットとデメリットがあるため確認しておくと安心でしょう。

白色申告

白色申告は、青色申告に比べると帳簿への記載が簡単です。事前申告は必要なく、税務署に提出する書類が少ないところも大きなメリットに挙げられます。一般的な申告時期は、毎年2月後半~3月前半です。会社では、年度末に向かって仕事がとくに忙しくなります。時間的に自分で手続きする余裕がないときなどは、白色申告が適しているかもしれません。ただし、青色申告より控除額の適用枠が少なくなるデメリットを理解しておく必要があります。

青色申告

青色申告の大きなメリットは、青色申告特別控除がある点です。この特典を利用すると、最大で65万円の特別控除を受けられます。さらに、赤字が出ても損失は3年間の繰り越しが認められ、所得から損失分を差し引いて損益通算すると所得税額を減らせます。また、家族が従業員であれば給与所得を経費として計上できるなど、大きな節税効果を見込めます。しかし、帳簿の記入方法が複雑なため、本業の忙しい会社員の場合は書類作成の時間がなかなかとれないかもしれません。

マンション経営で安定収入を得るためのポイント

マンション経営では、利益が増えるほど生活の安定につながります。少しでも多く収入を得るための主なポイントは、空室や家賃下落によるリスクを減らし物件の維持管理に伴う出費も抑えることです。

空室リスクを減らす

マンション経営を円滑に進めるには、空室対策が重要です。空室率が低いほど家賃収入は増えて、利益アップを見込めます。

利便性のいい物件は、空室リスクを減らせます。とはいえ、物件が立地環境に恵まれた土地にあると購入費は高くなりがちです。駅近や新築で日当たりに恵まれた間取りであっても、購入時にはよく検討する必要があります。家賃設定についても、注意は怠れません。家賃収入が多いほど増益をもたらしますが、安易に高額設定すれば入居者の確保は難しくなるため、相場をふまえた料金設定が望まれます。

家賃下落によるリスクを減らす

家賃の下落を避けるには、入居者に手厚く対応する心がけが大切です。入居者が部屋を退去するまでは、新たな入居希望者を探す必要がありません。できるだけ長く居住してもらうなら、快適な居住環境の提供は不可欠です。いつでも入居者がどんなニーズをもっているか配慮しながら、適切に対処していく姿勢が求められます。

利回りに惑わされない

マンションを購入する際には、あまり利回りに惑わされないことが重要です。購入時にローンを組む場合、新築物件より中古物件のほうが実質利回りは高くなり、返済の負担を抑えられると期待できます。ただ入居率を考えると、新築物件のほうが有利と考えられます。中古物件は、居住環境に恵まれないと入居者が見つかりにくいかもしれません。利回りをふまえて古いマンションを購入するなら、需要の有無にも着目したほうがいいでしょう。

丁寧に維持管理をする

建物の経年劣化は避けて通れませんが、日頃から細かいところまでメンテナンスしているとトラブル防止につながります。日常的に清掃していれば、建物は簡単に汚れません。設備に不具合が生じたときには、手早く修繕するほど大きな故障を防ぎやすくなります。修繕を怠ると設備の買い替えが必要になる場合もあるため、丁寧な維持管理は重要です。

繰り上げ返済をする

住宅ローンは、少しでも早く返済したほうがいいと考えられています。ローン返済には、利息がつきものです。返済期間が短くなると、それだけ利息を減らせます。変動金利の場合、返済が長引けば金利が大幅に上昇する可能性もありますが、返済が終われば金利動向を気にする必要もありません。

ローン返済を早く終えるなら、繰り上げ返済があります。金利上昇のリスクを避けるためにも、毎月の支払いに余裕があれば返済方法の変更を検討してみるといいでしょう。

購入前に収支シミュレーションを行う

円滑に賃貸経営するうえでは、マンションの購入前に、きちんと収支計画を考えておくのが効果的です。不動産投資では、上述した支出以外にもさまざまな出費が生じます。計画性がないまま運営していると、空室を減らしても予定通りに利益を得られない可能性があります。無理なく資金をやり繰りするなら、いろいろな事態を想定して、バランスのいい収支計画を立てるのがおすすめです。

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