怪しい不動産投資に要注意。勧誘セミナーの特徴とセールストークの実例を紹介

不動産投資へのハードルは、ごく普通のサラリーマンが副業で始められるほど低くなりました。初心者向けの不動産セミナーも各地で開かれており、不動産投資に興味を持つ人も増えています。

そんな中、怪しい不動産投資勧誘セミナーも見受けられ、劣悪な物件を売りつけられる人が多数いるのもまた事実です。悪徳な投資不動産会社に騙されないために、怪しい勧誘セミナーを見分ける方法を、セールストークの実例と合わせて紹介します。

不動産投資のセミナーは「怪しい」?

「不動産投資」はお金持ちの専売特許のように思われていた時代もありましたが、今や普通のサラリーマンの口からも話が出るほど身近なものです。収入を増やしたい若年層から、年金不足を心配する高齢者まで、不動産投資を始める年齢層は広がりを見せています。それにあわせて初心者向けから中・上級者向けまでさまざまな不動産投資セミナーが各地で開催されていますが、怪しいセミナーも多いため注意が必要です。

中には本当に信頼できるセミナーもあり、学んだ内容を実際に活かせるかどうかは本人次第です。しかし明らかに怪しいセミナーも存在します。退職金をつぎ込んでしまったため老後資金の目処が立たず、途方に暮れている人もいます。セミナーを開くにも会場や講師の人件費などコストが発生するため、メリットがなければ企業がお金をかけてセミナーを開催することはありません。

怪しいセミナーは参加した初心者に、セミナー独特の高揚感で冷静な判断力を失わせ、物件を売りつけることで利益を得ているケースが多くあります。節税効果や自己資金不要といった魅力ばかりを主張し、不動産投資のデメリットやリスクを説明しない投資セミナーには注意が必要です。次章では怪しい不動産投資セミナーの特徴を詳しく解説します。

「怪しい」不動産投資セミナーの特徴

まずは初心者の知識のなさにつけこんで物件販売などで儲けようとするような、怪しいセミナーを見分けるためのポイントを3つ紹介します。

節税効果を売り文句にしている

「不動産投資は節税になる」という話を聞いたことはありませんか?不動産投資が節税になるというのは、嘘ではありません。ただし、節税効果を売り文句にしているセミナーは怪しいと判断できます。不動産投資における節税効果を売り物にするときには、「所得税」を指すことが一般的です。

不動産投資が節税につながるのは、不動産所得は「損益通算」の対象となっているためです。損益通算というのは、確定申告で総所得金額を計算するときに、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得に限っては、赤字となっている場合にほかの所得から差し引けることを意味します。

赤字が解消できずにマイナスになった場合には、損失を翌年以降に繰り越しての繰越控除も可能です。サラリーマンの場合なら、不動産投資で赤字が出た場合には、本業で得た給与所得から赤字分差し引いて損益通算ができます。結果的に総所得が減り、納付する所得税を減らす節税につながるというのが「不動産投資による節税効果」の仕組みです。

確かに不動産投資をスタートする初年度は、不動産所得税や仲介手数料、入居者募集にかかるコストなどが必要になるため費用がかかり赤字になることもあるため、所得税を節税できるかもしれません。しかしその後も節税し続けるためには、不動産投資で常に「赤字を出し続ける」必要があります。

資産を増やすために始めた不動産投資で、節税するために赤字運営を続けるというのは、よほどの高額所得者でもなければおかしな話です。一般的なサラリーマンなどを対象にしているにもかかわらず、節税効果を売り文句にするような不動産投資セミナーは、怪しいと言わざるを得ません。

「自己資金ゼロでも大丈夫」とうたっている

「自己資金ゼロからでも始められる」この言葉の裏にはレバレッジ効果を高めて投資効率を上げる狙いが。借入金額が高ければ返済金額も高額になる

「自己資金ゼロでも大丈夫」とうたっているセミナーにも要注意です。確かに最近は不動産投資でも、物件価格をすべて借り入れるフルローンや、場合によっては諸費用も含めたオーバーローンすら可能な場合もあります。それでも同じ「自己資金ゼロ」でも、もともと資金力があるうえであえて自己資金を出さないのと、資金に乏しくて自己資金が用意できないのとでは大きく意味が異なります。

不動産投資では、プロでも金融機関から借入をします。自己資金ゼロというのは非常に希で、自己資金20〜30%、借入金70〜80%というのが一般的です。そもそもプロが金融機関から借り入れるのは、資金が用意できないからではなく、レバレッジ効果を期待するからです。たとえば1000万円の物件を自己資金1000万円で購入し、利回り10%運用したと仮定すると、年間収益は100万円になり、回収するには10年かかります。

一方自己資金1000万円にさらに銀行から借入期間30年、元利均等返済の金利2%で1000万円借り入れて、2000万円の物件を購入して同じく利回り10%で運用したと仮定します。年間の利益は2000万円×10%で200万円ですが、そこから年間の返済額約44万円を差し引くと年間利益は約156万円になり、自己資金1000万円に対する利回りは15.6%、回収には約6年5ヶ月しかかかりません。

実際に差し引く経費や税金を考慮しても、同じ自己資金1000万円でも金融機関から借り入れたほうが年間収入も増えるうえ、自己資金を早く回収できます。このように借入金を使うことで自己資金に対する利回りを上げ、多くの収益を得ることを「レバレッジをかける」と言います。不動産投資で融資を受ける目的は、レバレッジ効果を高めて投資効率を上げることが目的です。

単に自己資金が足りないといった理由で金融機関からの融資をできるだけ多く受けたい、あわよくば資金ゼロで不動産投資をはじめたいと考えるのは、不動産投資における融資に対する理解が間違っています。借入金額が増えれば当然返済金額も高くなり、空室が発生したときなどには資金がなければローンを返済できなくなります。「自己資金ゼロでも不動産投資が始められる」を売り文句にしているセミナーは、参加を見合わせましょう。

「キワモノ物件」を中心に扱っている

「キワモノ物件」は価格が安い点では魅力だが、プロも手を出さない「ハイリスクハイリターン」物件である可能性大。勧められたら断るべき

誰も借り手が見つかりそうもないような空き家を「キワモノ」と言いますが、そのような物件を中心に扱うセミナーも怪しいと言えます。そういった物件は価格が安く、スモールスタートしてみたいと考えている不動産投資初心者には魅力的です。しかしそういった物件は、利回りが低いことが特徴です。収益不動産の実力を現す指標としてNOIがあります。NOIはNot Operating Incomeの略語で、日本語では「営業純利益」を意味します。

NOI(%)= 純収益(年間賃料収入-諸経費)÷(物件価格+諸費用)×100

このNOIが高ければ利回りがよく、高収益の物件と判断できますが、NOIは物件価格が安くなるほど高くなることが特徴です。キワモノ物件は人気がないため物件価格が安く、NOIが高くなるため一見高収益物件に見えてしまいます。しかしもしそのようなキワモノ物件が高収益を生むとするなら、プロの不動産投資家が競って購入しているはずです。

利回りが高すぎる物件は、ハイリスクハイリターンということです。物件価格が安いことには、なにか理由があると考えるのが自然です。プロすら避けるような物件を、不動産投資初心者が手を出すことは危険です。キワモノ物件を中心に扱っているセミナーは、のちのちそういった物件を売りつけようとしている可能性が考えられるため、出席は見送りましょう。

信頼できるセミナーの特徴

それでは反対に、信頼できるセミナーの特徴をふたつ紹介します。

都内のワンルームマンションなどリスクの低い物件を紹介している

利便性が良く設備の整った、都内のワンルームマンションは需要が高い。このような低リスクで収益を見込める物件を紹介するセミナーは信頼性あり

都内のワンルームマンションや、新築アパートなど、手堅く収益が期待できるローリスクな投資物件を紹介するようなセミナーは信頼できます。参加者に優良物件とはどのようなものか、どのように選べばいいのかなど、成功につながるポイントを教えてくれるようなセミナーであれば安心です。

「リスク対策」のセミナーは出る価値あり

成功につながるポイントと同様に、失敗のリスクを減らすための対策を教えてくれるようなセミナーも参加する価値があります。空室はどのようにすれば防げるのか、入居者の退去を防ぎ長く入居を続けてもらうにはどうすればいいのかなどの知識は、不動産投資を続けていくうえで役立ちます。

不動産投資のセミナーでは、いいことばかりを並べてリスクを隠して伝えないものが多くあります。実際の不動産投資にリスクはつきもので、いかにそのリスクを避けるかは非常に大切です。不動産投資にはデメリットがあることをあえて伝え、そのリスクをできるだけ減らして失敗の確率を下げることを目的とするようなセミナーなら、参加しても問題ないと考えられます。

不動産投資の「怪しい」セールストーク4例

不動産投資をはじめようと思って投資不動産販売会社を訪れると、営業マンからいろいろな切り口で物件購入を勧誘されます。ここでは注意すべき「怪しい」セールストークを4つ紹介します。

「家賃収入は年金代わりになりますよ」

「家賃収入が年金代わりになる」という言葉はそのまま鵜呑みにはできない。新築で購入した物件も資産価値は下がり、所有しているだけで費用がかかる

不動産投資を検討している人の中には、老後に不安を感じている人が多くいます。そういう人たちにとって、「家賃収入は年金代わりになりますよ」というのは、とても魅力的な誘い文句に聞こえます。確かに家賃収入をそのまま貯蓄できれば、「年金不足」を補えるかもしれません。

しかし不動産投資で得られる家賃収入は、積立貯金のように貯蓄できるわけではありません。実際には家賃収入から、さまざまな必要経費を支払っていかなければなりません。新築で購入した物件も、購入した時点で中古物件となり、資産価値はどんどん目減りします。

経年劣化にともなう修繕費や、築年数が古くなると、空室対策のために家賃を大幅に値下げする必要もあります。「ローンを完済したら家賃収入が年金代わりになりますよ」というセールストークは、そのまま信じないようにしましょう。

「家賃保証が付きますので、一棟買いでも安心です」

「家賃保証が付くので一棟買いでも安心ですよ」というセールストークも、そのまま信じるのは危険です。「家賃保証」は「サブリース」とも呼ばれ、手数料を払うことで空室期間中でも保証賃料を受け取れるシステムです。しかし実際には保証賃料=家賃と同額ではないうえ、サブリース契約を結んでしまうと借地借家法によって投資家は不利な立場になります。

借地借家法ではサブリース会社のほうが立場が強く、保証賃料の減額や契約解除も一方的に可能になります。実際に空室が出たとき「家賃を下げないと空室が埋まりません」と迫られ、「下げたくない」と断ると「では契約を解除します」と言われる可能性もあります。家賃保証でローリスクを訴え、物件購入を勧めるような営業マンは信用できません。

「地方の物件なら手ごろな価格で大きな利益がありますよ」

地方の物件は手ごろな値段でも入居者が見つからなければ利益は出ない。築年数が古すぎて、購入して数年後に修繕費が発生するケースも

地方の物件は、キワモノ物件と同様に、物件価格が安いために表面利回りが良く見えます。その利回りの高さをエサに、「地方の物件なら手ごろな価格で大きな利益がありますよ」とセールストークをする営業マンにも要注意です。安さと利回りの良さに地方の物件を購入しても、入居者が見つからなければ利益は得られません。

現物を確認したら築年数が古すぎて、数年後には大型の修繕工事が必要な可能性もあります。プロでもなかなか手を出さないような、リスクの高い地方の物件を勧めてくる営業マンは、信用しないようにしましょう。

「不動産投資にリスクはないので安心ですよ」

「不動産投資にリスクはないので安心ですよ」と言うような営業マンは、初心者の知識のなさにつけ込もうとしているか、本人に知識がないかのどちらかです。リスクのない投資などありえません。「この物件はリスクはないので安心して購入してください」「早く契約を」と急いで契約を迫るような投資不動産会社は危険です。

経営状態が伸び悩み、営業マンが過大なノルマを抱えている可能性も考えられます。不動産投資のリスクをきちんと説明したうえで、少しでも安全な投資を勧める会社を探してください。

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