「コロナ下での需要開拓力が問われる」流通経済研究所・根本理事

【2020.08.12配信】流通経済研究所は「新型コロナ下での消費と流通」と題したセミナーを開催し、同研究所理事の根本重之氏が講演した。同セミナーは8月5・6日の両日、WEB上で開催されたもの。根本氏の承諾と協力を得て、ポイントを紹介する。

新型コロナウイルス感染症の見通し

まず、各企業が今後の事業展開を考えるうえで、新型コロナウイルスウイルス感染症が今後どうなるかについて展望をもっておくことが重要だとして、この分野の専門家の研究、予測をレビューしたうえ、以下のようなまとめがなされた。

その後、セミナーでは、新型コロナ下での総合スーパー、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンター、生協、ECなどの状況を検討したうえ、小売業、メーカー双方の注目すべき企業の展開が語られた。小売業の取り組みとしてはデジタルマーケティングの必要性やデリバリーニーズの高まりへの対応を説明し、商品関連では贈答品が高い伸びを示したことから、今後、施設等に入居している家族向け需要などの顕在化を指摘した。

8月5・6日の両日、WEB上で開催されたセミナー

需要開拓、マーケティングのDX

小売企業の取り組みとしては、デジタルマーケティングを推進するSOO(Segment ofOne&only株式会社)の取り組みを紹介。同社は九州を地盤とするサンキュードラッグの平野健二社長が社長を務め、小売企業同士が連携してデジタルマーケティングのノウハウを蓄積している。

ECで急伸長の「贈答品」。直系家族への贈答を提案

また総務省「家計消費状況調査」によるEC支出の状況として、この5月、贈答品への支出額が前年同月比で80.5%増という高い伸びを示したことを紹介した。その増加率は、食料品80.1%、飲料78.7%などと同等である。根本氏は、人々が実際に会えなくなっているなかで、直系家族間での贈答が増加しているはずで、今後のお盆、敬老の日、彼岸、さらには年末・年始などでも帰省ができなければ、同じことが起きる可能性があり、注目しておきたいとした。また介護施設入居者などの市場も今後拡大するとみて、ケア従事者の支援を含め、対応していくことに商機があると指摘した。

小売業界が常に注視しているAmazonの動向に関しては、最近、大手物流業や地元物流業との提携に加えて、個人事業主を対象にしたAmazonFlexによって物流機能のキャパシティ拡大を図っていることを説明。最近、各地で増設している物流施設はAmazonFlexの拠点にもなり得ると話した。
これまでは所有権の移転という重要な問題から配送における「置き配」(不在時に玄関前に置いていくことで所有権の移転を容認する仕組み)は懸念を指摘する声があったが、再配達の非効率性からも理解が広がっており、Amazonが先行して置き配を標準化する形となっているという。
「置き配」の文化をつくってきた生協が、コロナで目覚ましい伸長を遂げているとし、根本氏は、「備蓄のものは週に1回でもいいとか、そういった販売の手法など、生協に学ぶべき点は多いのではないか」と指摘した。
また、Amazonがロッカーを設けるAmazonHUBが、ヤオコーやココカラファインなど、小売企業に普及し出している状況にあり、今後、どの程度まで広がりを見せるのか、注目しているとした。一方、小売企業とAmazonHUBの連携が、単なる商品供給の場だけではなく、Amazonと小売企業の一歩進んだ連携に発展する可能性も否定できないとした。例えば生鮮に関しては、Amazonはライフとの提携を発表しているという。

Eコマースに関しては、メーカーのDtoC機能拡大戦略もあり、世界的にSaaS企業であるShopfyが伸びているという。Amazonの対立軸としても、企業のブランディングに役立てられていると語った。Shopfyに象徴される、“収益性高いものを理解できる消費者に売る仕組み”が問われると指摘した。

基幹システムと連携したデリバリーサービスの構築

こうしたAmazonの動きとも関連するのが、コロナで急拡大したデリバリーニーズである。

今後、重点を置くべきキーワードとして根本氏は「飽きさせない」と「支援」を挙げた。
外出自粛でストレスを抱え、運動不足などの問題を抱えている各消費者層供への支援策についても、今一度、何ができるかを考えてほしいと訴えた。「飽きさせない」では、正統派のメニューとは別に「バズ・レシピ」などにも注目したいとしていた。

デリバリーニーズの高まりのほか、商品関連では贈答品が高い伸びを示しているなどの変化が表れている

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