【リフォーム産業新聞社に聞いてみた】4年間で4回もリノベーションした人がいるってホント?

リフォームやリノベーションは、住空間を心地よく便利な空間にするだけでなく、住む人のライフスタイルそのものを見直すきっかけになります。なかには、リフォーム、リノベーションによってその後の人生が大きく変わったり、生きがいが見つかったりする人も。そんな、「生き方リノベーション」をした人について詳しく知るためにお話を聞いたのはリフォーム産業新聞社『リフォマガ』編集長の川村史子さん。リフォーム業界歴14年のベテラン編集者です。自身も5歳のお子さんを育てるワーキングマザーとして、生活者目線で多くのリフォーム取材をしてきた川村さんに、印象に残ったエピソードを聞いてみました。

リノベーションが楽しくなって何度も繰り返すように…

リフォーム、リノベーションをとおして人生が変わったという事例は多くありますが、今回ご紹介するのは、リノベーションそのものが趣味になったという50代のご夫婦。リノベーションは1回で終わらせるのが一般的かと思いますが、どうやら、このご夫婦はなんとお金がたまるたびにリノベーションを繰り返しているのだとか。

「築20年の戸建て住宅で暮らし、ハーレーでツーリングを楽しむなどセカンドライフを満喫しているアクティブなご夫婦。もともとは老朽化した家を改修する目的だったそうなのですが、リビングダイニング→寝室→風呂洗面→トイレ→玄関ホールの順で、実に4年間で4回もリノベーションされました」(川村さん)

仕上がりまでの過程が楽しく、工事が終わってしまうと「寂しい」

ご夫婦のリノベーションはこのリビングダイニングからはじまった。無垢材のフローリング、カウンターキッチンの古材がポイント
キッチンに隣接するご主人の書斎。アイアンの内窓で緩やかにエリアを区切っている

施工会社「高崎テクノ」さんの女性プランナーと一緒に仕上がりを想像しながら、素材やデザイン、使い勝手をひとつずつ吟味。4回のリノベーションはどれもこだわりが詰まったもので、かなりの数のサンプルの中から実際の色や質感をひとつひとつ確かめながら決めていったのだとか。

「無垢材風のフローリングを採用したリビングダイニングや、ウォールナットの洗面カウンターをはじめ、特にトイレで過ごす時間を大切にしたいとのことで、施工費用はトイレだけで100万円以上にも。タイルや照明、洗面台の設置など、どれも洗練されたデザインのトイレになっています。ほかにもお風呂の扉を透明にして海外のホテルのような雰囲気にするなど、各所で並々ならぬこだわりを感じます」(川村さん)

一般的には、リノベーションの最中はあわただしく、完成した家に落ち着いて住めるようになった時が喜びであることが多いはず。もちろんご夫婦もひとつひとつのリノベーションにとても満足していたといいます。一方で、理想とするイメージや完成像に近づけていく段階や丁寧にプランを練っていく過程のほうに、より楽しみを感じていたそうで……。

「女性プランナーさんが提案してくれるたくさんのおしゃれな建材の中から選んでいたようなんですが、『今回はどんなものを提案してくれるんだろう』と毎回の打ち合わせが楽しみだったのだとか。時間をかけてたてたプランや選んだ建材で、家が変わっていく様子を見るのが楽しくて、工事が終わると寂しくて「あーおわっちゃった」という感覚だったそうで(笑)。リノベーションに関する一連の過程を楽しんでいるご夫婦。さすが、リノベーションが趣味というだけありますよね」(川村さん)

一度の海外旅行よりも家のリノベーションに投資する

「リノベーションを依頼した高崎テクノさんが『1回の海外旅行よりも家をリノベーションしよう』というコンセプトで、それが2人のライフスタイルにハマったのかもしれません。海外旅行も魅力的ではありますが、コロナ禍で旅行がしづらい今、ぴったりの趣味ともいえそうです。長い時間を過ごす住宅にこそお金をかけて、好みのスタイルにリノベーションするというコンセプトに共感する人は多いかもしれませんね」(川村さん)

コロナ禍で思うように外出できずにストレスをかかえているなら、むしろ積極的に出かけなくても家にいることこそが心地いい、そんなお金の使い方は有効といえるかもしれません。

「今回のご夫婦のように、リノベーションを繰り返すケースにときどき出会います。たとえば一度、壁紙を変えてみたら空間が変わる楽しさに気付き、次はこっちの部屋の壁紙を変えてみようといった具合ですね。最初から100万円単位の大がかりなリノベーションを決意するのはハードルが高いですが、10万円単位の小規模リリノベーションを段階的に進めていくのであれば、始めやすいでしょう。家族構成が変わるタイミングなど、ライフステージに合わせて少しずつマイナーチェンジしていくというのは、成功しやすいリノベーションのひとつだと思います」(川村さん)

大きく間取りを変えたり、設備や建材をひとつずつ選んだり、リノベーションにまつわる一連の決断は知識がない初心者にとっては難しく、かといって業者に任せっぱなしでは仕上がりに満足できないことも。少しずつ小さい部分からカスタマイズをしていくスタイルなら初心者も挑戦しやすく、一度に大規模リノベーションをするよりも失敗するリスクも少なくて済みます。段階的にリノベーションを経験することで徐々にリノベーションの魅力を知り、知識も増えていく中で、自分の好みやライフスタイルを理解してくれる理想のリノベーション業者が見つかる可能性もあるでしょう。相性のいい業者が見つかれば、今回のご夫婦のようにリノベーションが生きがいとなるような新たな人生が待っているかもしれません。

取材・文:古田綾子
撮影:高崎テクノ

川村史子

株式会社リフォーム産業新聞社が発行するリフォーム業界の現場担当者向けメディア『リフォームセールスマガジン』編集長。1984生まれ。東京都出身。大学卒業後、2006年にリフォーム産業新聞社に新卒入社。同社で発行する『リサイクル通信』・『リフォーム産業新聞』の記者・編集職を経て、2012年に創刊したリフォームセールスマガジンの編集業務に携わる。

【リフォーム産業新聞社に聞いてみた】4年間で4回もリノベーションした人がいるってホント?
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