コロナ禍における米経済活動再開の歩み〜NY州編〜

 私は、大人になってから初めて、アメリカは州ごとに運転免許証が発行されることを知って、かなり驚いた記憶。同じ国内なのに交通ルールまで違うの?と日本人なら思うが、州憲法や州法で定められた規制・行政権限がこの国ではスタンダードなのである。

  アメリカでも随一の大都市・ニューヨークでは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、クオモ州知事が経済活動再開に向けて、4つのフェーズを掲げた。

「ニューヨーク州における経済活動再開 4つのフェーズ (当初発令案)」

 ・第一段階:建設業、農業、林業、小売業(店先または店内での受け渡しに限定)、製造卸売業

・第二段階:事務所、不動産業、小売業、修理・清掃業、美容院・理容院、レストラン(屋外席・テイクアウト・デリバリーに限定)

・第三段階:レストラン、フードサービス

・第四段階:芸術、エンターテイメント、レクリエーション、教育

(*再開延期・・・スポーツジム、映画館、学校の対面授業等)

 7月20日からフェーズ4に入り、順調な回復を見せているかのように見える現地の様子をレポートしたい。 

州別対応でスピーディ且つ的確な方向に

 テニスプレーヤーの錦織圭選手がコロナ陽性と判明し、先日の全米オープンを欠場したことは記憶に新しい。彼のベースはフロリダ州、米国内でも今夏感染拡大が目立つ地域だった。

  現在、行政命令で感染拡大州からニューヨーク州を始めとする他の州への移動が厳しく、9月16日時点ではその対象となる州・地域は28州と2地域にのぼる。(※対象州となる基準:直近7日間の平均で、陽性者数が10万人当たり10人以上または陽性率が10%以上の州)

 ニューヨーク州では、フェーズ4に至るまで、日々の状況を鑑みて様々な取り組みをスピーディに設ける姿勢があり、これが”走りながら考える”日本とは異なるスタイルか、と感じる。

実際の対応例(ニューヨーク州の場合)

 ニューヨークでは、公共交通機関利用客に対してマスクの着用を拒否した場合に50ドルの罰金を科せるようにするなど、活動再開の幅は徐々に広げていても、罰金制度の設置など然るべき対応は緩めない。街の至るところに居るNYPD(ニューヨーク市警察)のパトロール体制もすごい。

  また、路上や店外にテーブル席を広げる“青空レストラン”の光景が定着してきた中、クオモ州知事はニューヨーク市内のレストランの屋内営業を9月30日から条件付きで認めることを発表。入店時の検温、客数は最大収容人数の25%まで、万一に備え客の連絡先入手などを義務付けている。11月初めを目安に経過を見て収容人数50%までの引き上げを認めるか判断予定で、経済活動再開を進めつつ、対応はかなり慎重だ。

 私の住むアパート内アメニティのスポーツジムも、今週から条件付きでの再開を公表した。州が定める予防手順に従い、webでの事前予約や、フロントでの問診票記入など、対策に関する全11項目を管理事務所が定めている。先月末から一部再開したニューヨーク市内の美術館など、文化施設と同じような対策方針だ。面倒だなと思う反面、慎重な対応に安心感はある。

活動再開に向けて 国別対応違いの印象

 このように、アメリカでは州間の移動、飲食店・公共交通機関や施設の営業や利用ルールを厳密に義務化してあり、市民として、それはむしろ有り難いと感じている。日本では義務化まで持っていくまでの道のりが長く、多くは各々の判断に委ねられている印象だ。個人的意見だが、日本は人の往来を促進するGo Toキャンペーンで右往左往するくらいなら、もっと他にやるべき事があるのではと思ってしまう。もちろん、ニューヨークでも観光・ホテル・飲食産業はインバウンドが止まってしまっているため、皆、大変な苦労をしているのは言うまでもないのだが...。

 コロナ禍において、改めて国ごとの緊急時の対応には国や地域ごとの違いが多くあることに気付かされた。刻一刻と変わっていくニューヨーク州の対応方針を見逃さないために、クオモ州知事のツイッターのチェックが欠かせない日々が当分は続きそうだ。

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