アパート経営で空室対策にインターネットを導入――費用や設置方法を解説

アパート経営をする際に考えなければならないことのひとつに、「インターネット回線を導入するか否か」があります。インターネット回線を導入するためには費用がかかりますが、入居後すぐにネットが使える物件は入居者から人気があります。しかし、回線の種類や費用、インターネット回線の導入で生じるデメリットについても理解しておかなければ、本当に導入すべきか判断できません。

この記事では、インターネット回線の種類やアパート導入にかかる費用、回線導入で生じうるメリット・デメリットについて解説します。とくに最近では、リモートワークやオンライン授業の増加からネット環境需要の高まりが考えられるため、アパートの経営を考えている場合には、インターネット回線を導入するか否かは、大切なポイントになります。

入居者にとってインターネット設備は必須

アパートやマンションにインターネット設備がはじめから設置されているかどうかは、入居者にとって重要なポイントです。インターネット回線が導入されていない物件に入居した場合、入居者は回線を引くための工事費用を負担しなければなりません。

とくに近年はパソコンやスマートフォンを使う入居者が多く、インターネット設備は必須と言っても過言ではありません。賃貸探しの際にはネット環境が整っているかを重視する入居者も多いので、アパートオーナーにとってインターネット設備を設置するかどうかは重要な問題と言えます。

アパートにネット回線を導入するための基本知識

アパートにネット回線を導入するためには、まず回線の種類について知っておかなければなりません。アパートの特徴に合った回線を選ばなければ、入居者がうまくインターネットに接続できず、苦情が発生する可能性があります。事前にインターネット回線の種類と導入の方法を確認しておきましょう。

回線の種類

インターネット設備には有線接続と無線接続があります。それぞれにメリット・デメリット、適した物件が異なるため、インターネット回線を導入する場合は両者の特徴を把握しておく必要があります。

有線接続

有線接続とは、物件に光ケーブルを引き込み、各部屋にLANケーブルを通す方式です。各部屋では、すでに開通している回線を使い、有線接続やWi-Fi接続をします。

有線接続のメリットは、通信速度が安定することです。各部屋までLANケーブルを通して通信するので、鉄筋コンクリート造りの物件でも安定してインターネット接続できます。各部屋内ではパソコンをLANケーブルにつないだりWi-Fi機器を設置したりするので、一般的な固定回線と変わらない使い勝手を実現できます。

デメリットは工事に時間や手間がかかることです。各部屋で工事が必要なので、部屋数が多いとその分工事完了までに時間がかかるうえ、すでに入居者がいる場合には入居者との日程調整も必要です。LAN差込口にLANケーブルを挿し、パソコンやWi-Fi機器につながなければならないため、コンセント周りがすっきりしない点もデメリットといえます。

無線接続

無線接続とは、近くの電柱からインターネット回線を建物に引き込み、アパートの共有部分や外壁に設置したWi-Fi機器から無線で各部屋に電波を飛ばすものです。

無線接続のメリットは、工事に手間と時間がかからないことです。有線接続のように各部屋までLANケーブルを引き込む必要がないので、部屋数が多くても工事に時間はかからず、すでに入居者がいても工事立会い日程を確認する必要がありません。入居者は、Wi-Fiに接続する機器にパスワードを打ち込むだけでネット利用を開始できます。LANケーブルがない分、コンセント周りがすっきりする点もメリットです。

デメリットは、通信が不安定になりやすいことです。無線接続ではひとつのWi-Fi機器から複数の部屋に電波を飛ばすため、広いアパートや部屋数の多いアパート、鉄筋コンクリート造りのアパートなどでは電波が届きにくい可能性があります。電波が届きにくくインターネットへの接続がスムーズに行えないと、クレームの発生や退去の一因になるかもしれません。

アパートの場合、無線接続で電波が届くのは木造2階建てで、各部屋40㎡以下の物件とされています。アパート向けのインターネット回線業者では、事前に電波テストを行ってくれます。電波接続テストの結果とインターネット回線業者のアドバイスを参考に、回線の種類を決めましょう。

アパートにインターネットを導入するための費用

インターネット回線の導入費用には、工事費用と月額費用(維持コスト)があります。これらの費用は支出として経費に計上するために、どれくらいの金額がかかるのか把握しておくことが重要です。有線接続にするか無線接続にするかによっても費用が違うので、確認していきましょう。

工事費用

インターネット回線を導入するためには、近くの電線からアパート内に光ケーブルを引き込む工事が必要です。工事費用はアパートの部屋数やプロバイダーによっても変わりますが、一般的には50万〜120万円程度が相場といわれています。無線接続の場合は有線接続よりも2〜3割程度安いとされています。

月額費用(維持コスト)

インターネット回線を導入すると、毎月の通信料や保守点検費用といった月額費用(維持コスト)がかかります。保守点検費用とは、インターネット設備が故障したり通信障害が発生したりしたときのためのサポート費用です。通信料や保守点検費用といった月額費用は回線の種類や保守点検サービスのプラン、アパートの部屋数などによっても異なりますが、月々2万〜4万円程度が相場です。インターネット回線の導入費用以外にも、月額費用がかかることを覚えておきましょう。

アパート経営においてインターネットを導入するメリット

アパートにインターネット回線を導入するためには工事が必要で、工事費や月額費用といったコストもかかります。しかし、ネット環境を提供することには、コストをかけるだけの価値があります。

入居率が高まる

アパートにインターネット回線を導入するメリットとしてまず挙げられるのが、入居率が高まるという点です。賃貸物件を探す人の中には、インターネットが無料で使えることを重視する人も多くいます。インターネット回線があらかじめ導入されている物件の方が、入居率が高い傾向にあります。在宅勤務やオンライン授業が増えている昨今であれば、すでに回線を引き込んである、もしくは無料のインターネット設備の需要はより高まるでしょう。

インターネット回線を導入すると、物件紹介ポータルサイトでのヒット率も上がり、入居率が高まる可能性もあります。賃貸アパートを探す人の中には、「インターネット無料」を条件に検索をかける人も多くいるのでヒットしやすく、より多くの入居希望者にアパートのことを知ってもらえます。

賃料の向上が見込めるため利回りが上がる

インターネット回線を導入するとアパートの需要が高まるので、家賃を上げて利回りを高くできます。ただし、インターネット回線を導入したからといって大幅に賃料が上げられるわけではありません。賃料に上乗せする金額は、入居者が個人でネット回線を引いた場合の月額費用よりも低くすることがポイントです。個人で回線を引いた場合の月額費用は5000〜7000円程度なので、インターネット回線を導入することによる賃料の上乗せは、2000〜3000円程度におさえた方がいいでしょう。

ただし、家賃を上げたからといって、必ずしも利回りが上がるとは限りません。賃料の向上により家賃収入が増えたとしても、同時にインターネット回線の導入工事費用や月々の維持費で経費も多くなっているので、家賃収入と経費を差し引きした結果、あまり利回りが変わらない場合もあるのです。アパート経営の実質利回りは、「(年間家賃収入−経費・税金)÷物件価格×100」で計算できるので、実際に計算してみましょう。

入居者の手間が減る

インターネット回線が導入されていないアパートの場合、入居者は自分でネット環境を整えなければなりません。インターネット回線が一切ないアパートであれば、入居者は固定回線を引くか、いわゆるモバイルルーターで対応する必要があります。

とくに固定回線を引く場合、工事の日まで思ったよりも長くかかったり、工事当日は自宅にいなければならない問題が生じるでしょう。工事は申し込んでから2週間〜1カ月程度、引っ越しシーズンであればそれ以上かかることもあります。あらかじめアパートに回線が引かれていれば、入居者はこうした手間をかけずにスムーズにインターネットを使い始められ、こうした手軽さも入居率向上につながります。

アパート経営においてインターネットを導入するデメリット

アパートにインターネット回線を導入すると、一般的には入居率や賃料が上がり、より利益を生み出しやすくなるといわれます。しかし、インターネット回線の導入にはデメリットもあることを忘れてはなりません。物件によってはあえてインターネット回線を導入しないままにした方がいいという場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

物件によっては費用対効果が合わないこともある

インターネット回線の導入は、物件によっては費用対効果が合わないこともあるという点に要注意です。インターネット回線の導入によってメリットが得られるのは、入居率の向上や賃料の上乗せによる増収が見込める場合のみです。インターネット回線を導入して初期費用や月額費用といった支出が増えたのに、空室率が変わらず家賃収入が増えない場合、経費だけが増えて結果的に所得が減ってしまいます。経費とインターネット回線導入によって見込める増収とのバランスを見て、費用対効果がいいかどうか、よく検討しましょう。

アパート経営にインターネットを導入する際のポイント・注意点

入居者のパソコンやスマートフォンの利用率に着目して、コストに見合った増収が見込めるか検討すべき

アパート経営でインターネット回線を導入するときのポイント・注意点を解説します。インターネット回線の導入を有効に活かせるよう、よく確認しておきましょう。

導入の際は費用対効果を意識する

インターネット回線導入の費用対効果を考える際には、導入コストに見合った増収が見込めるかどうかが重要です。インターネット回線導入により増収が見込めるかどうかを考える際は、入居者層のニーズがどれくらいあるかを検討しましょう。

アパートの入居者層があまりインターネットを必要としていない場合、入居率の向上にはつながりません。回線導入に伴い賃料をあげることで、より入居者が見つかりにくくなる可能性もあります。入居者層がインターネット回線を必要としているかどうかを判断する際は、以下の2点を意識しましょう。

・入居者層はどのような人か
・パソコンとスマホの使用割合

入居者層が高齢者であれば、インターネット回線の需要は少ない可能性が高いです。会社でインターネットを使う程度で、家では使わないサラリーマンが多いアパートも同様でしょう。一方、若者であれば家でのインターネット利用率が高い傾向にあります。しかし、インターネット無料のニーズが高いとはいえ費用対効果がいいのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。

若者向けのアパートであれば、パソコンとスマートフォンの利用率に着目しましょう。若者の場合はパソコンよりもスマートフォンを使う人も多く、スマートフォンは自宅にネット回線がなくても使えます。そのため、インターネットは使うけれどネット回線はいらないというケースもあるのです。

とくに近年は格安の通信業者もあるので、インターネット回線なしの安いアパートで事足りる場合もあります。このように、費用をかけてインターネット回線を導入してもあまり意味がなかったということになる可能性もあるため、費用対効果の観点から、しっかりと必要性を検討することが重要です。

周辺の物件との差別化を意識

近くに同じような家賃や間取りの競合物件がある場合、インターネット回線があることは差別化につながります。最近ではインターネット回線を導入しているアパートも多いので、単にインターネットを無料で使える点だけではなく、通信速度で差別化を図ることも大切です。

とくに夜はアパート内の多くの人がインターネットを利用するので、通信速度が落ちる傾向にあります。さらに最近では、日中でもリモートワークやオンライン授業などでインターネットを利用する人も多く、スムーズにインターネットに接続できることは入居者にとって重要です。インターネット回線の導入を検討する際は、複数の業者を比較検討し、工事費用や月額使用料だけではなく、通信速度にもこだわりましょう。

DIYで光回線をつなぐには資格や専門知識が必要

アパート内に光回線を引き込んでMDFという配線盤につなぐところまでは、電気工事士の資格を持つ専門業者でないと行えません。有線接続の場合、各部屋にLANケーブルや光ケーブルを通す必要がありますが、この作業はオーナー自身でも行えます。手順は以下の通りです。

・IDFと呼ばれる機器やLANケーブルなどを使って光回線を各戸に分配
・各部屋にWi-Fiルーターを置く場合は、SSIDやパスワードを設定し、入居者に伝える

上記のステップは特別な資格がなくても行えます。しかし、実際に光回線を各戸に分配するにはIDFなどの機器に関する知識がなければ難しいので、インターネット回線の導入は全行程、専門の業者に依頼することをおすすめします。

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