豪州SC第9戦:DJRのクルサードが今季初勝利。加熱するタイトル争いのなか遺恨残す接触も

 同一開催地連戦の続くVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第9戦は、9月19~20日に“ザ・ベンド”ことベンド・モータースポーツパークでのスーパースプリント戦3ヒートが争われ、初戦でDJRチーム・ペンスキーのファビアン・クルサード(フォード・マスタング)が今季初優勝をマーク。その後方では、タイトル候補の2連覇王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJRチーム・ペンスキー)とシリーズ7冠王者のジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/トリプルエイト・レースエンジニアリング)が遺恨を残す接触劇を演じるなど、残る2戦のタイトル争いが熱を帯びつつある。

 翌週9月26~27日の“ザ・ベンド”連戦のオープニングとなったこの週末のレース25~27は、3戦3様のウイナーが誕生したものの、最終戦『バサースト1000』でのタイトル決着に向け、各ドライバー、各陣営の思惑が交錯する白熱のラウンドとなった。

 そんななか、土曜レース1に向けて予選シュートアウトを制したのはチャズ・モスタート(ホールデン・コモドアZB/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)で、これがモスタートにとってはWAU移籍後初、2020年最初の最前列獲得となった。しかし、レースで主導権を握ったのは5番グリッド発進だったクルサードで、自身200戦目の記念すべきラウンドで冷静に24周を走破していく。

 グリーンシグナルの蹴り出しで“バッドスタート”となったモスタートに対し、背後に控えたマクラフランや、レッドブル・レーシング・オーストラリアのWエース、“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/トリプルエイト・レースエンジニアリング)、その僚友ウインカップらがモスタートの前へ。クルサードはタイトルコンテンダー3台とポールシッターの背後、5番手でオープニングラップを進めていく。

 すると、最終コーナー手前の右コーナーで首位マクラフランのインを狙ったウインカップが、リヤブレーキを激しくロックさせながらマスタングのボディサイドに接触。そのまま2台はグラベルへとコースオフし、ともにポジションを失ったばかりか、ウインカップには15秒加算のペナルティが与えられる。

 さらにはレース終盤にポジション回復を焦ったマクラフランも、4番手を行く同陣営のリー・ホールズワース(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)のリヤをヒットし、マクラフランにもまさかの15秒加算の裁定が科されることに。

 この混乱をよそにリヤタイヤのグリップダウンに苦しんだSVGをパスしたクルサードが今季初優勝を記録。2位には今季初表彰台のジャック・ルブローク(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)、3位にはモスタートのチームメイトとして雪辱を果たした、ルーキーのブライス・フルウッド(ホールデン・コモドアZB/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)が並ぶ、新鮮な表彰台となった。

R1の最終コーナー手前右コーナーで、首位マクラフランのインを狙ったウインカップが、リヤブレーキを激しくロックさせながらマスタングのボディサイドに接触
さらにR1終盤にはマクラフランがリー・ホールズワース(フォード・マスタング/Tickford Racing)のリヤをヒットするアクシデントも
R1では随所で接触バトルが勃発したが、その混戦を掻い潜ったジャック・ルブローク(フォード・マスタング/Tickford Racing)は2位表彰台を獲得

■2連覇王者が“絶望的な判断ミス”をしたと批難

 レース後、オープニングラップのアクシデントを問われたウインカップは、自らの過失を認めつつも「チャンピオンシップを賭けた戦いの場合、それは当然起こりうること」だとその正当性を主張した。

「僕らはレースをしていて、彼はその手前のコーナーでミスを犯して失速した。もちろんダイブを決めて前に出るつもりだったが、2台並んで芝生の上を走るのは気分の良いものじゃない」と続けたウインカップ。

「ペナルティは厳しいが、もし僕がコントロールタワーに居ても同じ判断を下しただろうね」

 一方の選手権首位マクラフランも、この件に関しては「リラックスしている」と語り、それよりも終盤のマスタング同士の接触の方に疑念を呈した。

「彼(ウインカップ)が隙間を狙ってくることはわかっていた。スペースを残したが、彼がロックして僕にヒットしたんだろう?」と振り返るマクラフラン。

「だから彼にペナルティ裁定が下ることは理解していたし、僕は自分にできること……ポイントを最大化するための努力に全力を傾けることを考えていた。でもホールズワースとのバトルでは僕の側にチャンスがあり、こちらの方で不可解な動きはなかったはずだ」

「僕のマシンは完全にコントロール下で、左フロントはロックしてさえいなかった。だとすればアウト側のドライバーはスペースを残すべきで、僕に何が出来ただろう? チームメイトの勝利をともに表彰台で祝いたかったが、スチュワードはそれに同意しなかった。理解に苦しむよ」

 その当事者ホールズワースも、マクラフランに対しては「選手権でウインカップより優位な立場にいながら“絶望的な判断ミス”を下した」と、不満を表した。

「なぜか彼は必死でドライブしている。どうしてそうなのかは分からないが、僕は彼にスペースを残したし当てる必要はなかった。荷重の抜けたリヤがどうなるか、彼には理解できないらしい。彼はほぼ選手権を手に入れているのに、がっかりだよ」

 明けた日曜の決勝2ヒートに向けた予選は、そのマクラフランが制圧して2戦ともにポールポジションを得ると、午前のレースではフロントロウ発進のSVGがタイヤ交換を引っ張る戦略で24周の勝負を制し今季3勝目。2位に今季初表彰台のアンドレ・ハイムガートナー(フォード・マスタング/ケリー・レーシング)を挟んで3位マクラフラン、4位クルサードとニュージーランド出身の“キウイ”勢がシリーズ史上初のトップ4を独占した。

 そして最終ヒートのレース3は、マクラフランが通算73度目のポールからライト・トゥ・フラッグの勝利を手にし、2位のクルサードとともにDJRチーム・ペンスキーがワン・ツーを達成。3位に入ったウインカップはランキングで215ポイント差を付けられる厳しい状況となっている。

 続くVASC第10戦も9月26~27日の週末に、同じく“ザ・ベンド”でのスーパースプリント・フォーマット戦を開催し、10月15~18日にはいよいよシリーズ最大の祭典である『バサースト1000』で2020年のチャンピオンが決定する。

ここまで不振が続いていたDJR Team Penskeのファビアン・クルサード(フォード・マスタング)が今季初優勝をマークした
日曜のR2はレッドブル・レーシング・オーストラリアのWエース、”SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が今季3勝目
2020年VASCシーズンも残すは2戦。最終戦バサースト1000では、耐久カップ登録ドライバーのパフォーマンスが結果を分けそうだ

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