iDeCo改正で何が変わる?59歳の人が後悔しないために知っておくべきこと

いまiDeCoの加入期間(掛け金を積み立てできる期間)は60歳までになります。加入期間が10年あれば60歳から老後の給付金として受け取ることができるわけです。しかし、現在加入中の59歳の人は、60歳で給付金を受け取ってしまうと後悔することになるかもしれません。

2022年5月よりiDeCoの加入年齢が65歳未満に改正される点も考慮しつつ、「59歳で退職、企業型確定拠出年金をどうしたらいい?」といった悩みにファイナンシャルプランナーが答えます。


59歳で退職、企業型確定拠出年金をどうしたらいい?

5月に年金制度改正法が成立しましたが、確定拠出年金の加入可能年齢引き上げがあったのはご存じでしょうか?具体的には2022年5月から個人型確定拠出年金(iDeCo)へ加入できる年齢が現在の60歳未満から65歳未満へと引き上げられることになったのです。

筆者はファイナンシャルプランナーとして活動をしていますが、現在59歳のAさんから、「早期希望退職制度を利用して会社を退職したので、今後の働き方などを含めたライフプランについて相談したい」と連絡がありました。

Aさんが悩まれていた一つは、勤務先で加入していた企業型確定拠出年金の手続きです。退職して加入資格を失うため、どこかへと移す(移換といいます)必要がある状況。確定拠出年金は原則60歳まで途中で引き出すことや脱退することはできないため、退職時に受け取ることができません。

Aさんは失業保険を受給しながら就活をしている状況であり、国民年金の第1号被保険者になったため、個人型確定拠出年金(iDeCo)への移換が必要でした。移換に伴い、まずは決めなければならないことを2点伝えしました。

1.移換先の運営管理機関を選択する
今までは会社が指定した運営管理機関を利用していましたが、iDeCoの場合には運営管理機関を自由に選ぶことができます。銀行や証券会社・生命保険など業態が異なる運営管理機関がありますが、各機関の違いは扱う商品や月々かかる費用、将来受け取る時の手数料などです。自分にベストな機関を選択するポイントは今後の運用をどうするかと手数料を抑えるところです。

2.加入者か運用指図者のどちらになるかを決める
加入者とは今後も掛け金を出し続ける人、運用指図者は掛け金を出さずに運用のみを続ける人のことを言います。どちらの場合も、毎月所定の手数料(口座管理料)がかかり運営管理機関によって金額は異なります。iDeCoナビ(個人型確定拠出年金ナビ)には各運営管理機関の手数料を比較してソートできるので参考になります。

59歳のAさんがiDeCoに加入できるのは60歳になるまでです。移換の手続きに数ヵ月かかると考えて、まずは運用指図者になることを決めました。ただ今回の年金制度改正法でiDeCoの加入年齢が延びたことで注意すべき点があります。

注意!改正前にiDeCoの老齢給付金を受け取ると加入者にはなれない

2022年5月からiDeCoの加入年齢が65歳未満へ引き上げられます。その時、Aさんは62歳になるので加入者になれますが、条件があるので注意が必要です。まず、老齢給付金(60歳以降の老後に受け取る給付金のこと)を受け取ってしまうと加入者にはなれません。

つまり、62歳になった時に掛け金を出せなくなるのです。他に、iDeCoの加入年齢が延びたと言っても、誰もが加入者になれる訳ではありません。Aさんが62歳で加入者になるには、厚生年金に加入しているか、国民年金に任意加入をしている必要があります。

任意加入について補足しますと、そもそも国民年金は60歳までの加入義務がありますが、例えば学生時代など未加入で40年の納付済期間がない場合、任意加入をして国民年金の受給額を満額まで増やすことができるのです。

このような話から、今後の働き方や国民年金の納付状況によっては、2022年5月まではiDeCoの老齢給付金を受け取らずに、運用指図者として検討してはどうかと伝えしました。Aさんは65歳までは働くつもりなので検討したいとのことでした。

65歳までの加入で約13万円の税額軽減と老後資金約83万円を確保できるメリット

なお、Aさんが62歳から65歳になるまでiDeCoの加入者になった時のメリットについてです。退職後から2022年5月までの約2年間は運用指図者となり、2022年5月から65歳になるまでの約3年間は加入者となるケースで試算をしました。

・運用指図者の時にかかるコスト(月額):66円+(※)運営管理機関への手数料
(※)金融機関により0円〜458円。
→2年(24ヵ月)間のコスト: 1,584円〜1万2,576円

・加入者の時にかかるコスト(月額):171円+(※)運営管理機関への手数料
(※)金融機関により0円〜458円。
→3年(36ヵ月)間のコスト: 6,156円〜2万2,644円

上記コストは、企業型確定拠出年金では勤務先が負担をしていたものです。

iDeCoでは自己負担になるため、なるべくコストがかからない運営管理機関を利用することが重要です。ただし、掛金全額を所得から控除できる税制メリットのためコストがかかったとしてもプラス効果は大きいでしょう。

例えば、他の企業年金がない会社に勤務する場合、月2万3,000円の掛け金をかけることができるので年間27万6,000円の掛金に対して4万4,000円の税負担が減ります(所得税率5%+住民税)。3年間で13万2,000円の税負担が軽減されるので、退職後から自己負担になるiDeCoのコストを帳消しにできます。税金の負担が減り、さらに3年間で82万8,000円の老後資金を確保できるとしたら65歳までiDeCoに加入するメリットは大きいのではないでしょうか。

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