コロナで苦境、うどん宅配に活路 丸亀製麺、インドネシアで70店舗

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インドネシアの限定メニュー「鶏白湯うどん」は肉団子入りで食べごたえがある=8月1日

 うどんチェーン店の「丸亀製麺」はインドネシアで約70店舗を展開している。うどんを食べる習慣がほとんどなかった7年前に進出してから、インドネシア全34州の約半分に店舗を構えるまで成長。米国や中国、台湾など、進出する10カ国・地域以上のうちで、昨年は最多の売り上げを計上した。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大後は店舗の一時休業を余儀なくされ、売上高は前年同期の3割以下に落ち込んだ時期も。9月中旬から首都ジャカルタで店内飲食が再び禁止となるなど逆風が強まる中、宅配の強化といった次の一手を模索している。(NNAインドネシア版編集部=多田正幸)

 ▽天ぷらメニューが充実

 ジャカルタの新興住宅地域に住む会社員のステファニーさん(29)は、うどんを初めて食べたのが丸亀製麺の店だった。「うどんが食べたくなったら月に一度くらいの頻度で丸亀製麺に行く」。いつも食べるのは一番人気でもある、牛肉をのせたうどん。気分に合わせて天ぷら二つを組み合わせる。「チリパウダーをたくさん入れて食べるのにはまっている」と満足そうだ。

 インドネシアは、日本と同じようにセルフ式を採用している。うどんを注文してから、並べられた揚げ物を選び、支払いの後に薬味などを取る。製麺や提供するまでの過程を客に見せるライブ感を重視した店づくりだ。注文から提供までの時間は、日本並みとはいかないものの、数十秒でできたてのうどんを提供できるように努力している。つゆは塩分を少し抑え、ぬるめだ。

揚げ物を真剣に選ぶ子どもたち。日本と同じくセルフ方式が採用されている=7月25日

 えび天やちくわ天など日本でもなじみのメニューのほか、半熟卵の天ぷらやノリの天ぷらにマヨネーズやチリで味付けしたオリジナルメニューも充実している。

 ジャカルタにある筆者行きつけの店舗は、かけうどん、ざるうどんとも39万ルピア(約280円)とほぼ日本並み。利用するのは主に中間所得層で、地方都市では10~15%程度安く販売している地域もある。

 ▽人口2億7千万、親日が追い風

 1号店は2013年3月、ジャカルタ郊外にオープンした。現地の店舗を運営しているスリボガ・マルガメ・インドネシアの近藤肇取締役は「白く、つるつるしたうどんを気持ち悪いという人もおり、あまり良いイメージがなかった」と振り返る。うどん専門店はなく、一部の富裕層がうどんという食べ物を知っている程度だったという。

 すすることに慣れていない客のため、うどんの長さは45センチと、日本の60センチより短くした。材料はできるだけ現地で調達し、日本から輸入するのはノリ、だしの原料である昆布やサバといった一部の原材料にとどめている。商品開発は基本的にはインドネシア人に委ね、日本人が感じる「おいしい」を押しつけないようにしている。イスラム教の教えに従ったハラル認証は進出3年目に取得した。

 近藤氏は「2~3年前から地方での売り上げが急速に伸びた」と語る。地方の店舗は天丼やカレー丼が集客の呼び水になり、売上高の3割以上を丼物が占めているという。

 進出成功の理由として近藤氏は「2億7千万人という人口の多さや中間所得層の増加、それに、新たな食文化が入りやすい土壌があった」と説明する。外食産業が成長する過渡期に進出でき、親日が多い国民性も追い風になった。

 現地の提携先である製粉大手スリボガ・ラトゥラヤが、フランチャイズ展開のノウハウを持っていたことにより出店が加速した。同社はピザハットの運営で成功した実績があり、ピザハットから丸亀製麺に出向している幹部も多いという。

 一時は1日に3万食以上を売り上げるまでに成長。今年中に100店舗達成を目標としていたところを新型コロナ感染が襲った。

新型コロナが流行してからは、入店する全ての客に検温を行っている=8月1日

 ▽最終目標「うどんを日常食に」

 ジャカルタの下町や伝統市場では現在、暑さに耐えきれずマスクを外す人も少なくない。消費の中心であるショッピングモールにかつてのにぎわいは戻っていない。映画館など娯楽産業も大半は営業が禁止されたままだ。

 国内初の感染者が確認されたのは3月2日だった。感染拡大防止のため地方政府は次々と独自の制限に乗り出し、ジャカルタでも4月10日から飲食店は店内での飲食が禁止された。

 外出自粛もありデリバリー需要が増加した。スマートフォンのアプリで注文すると、バイクを使ったタクシーの運転手が代わって商品を購入し配達してくれる。近藤氏は当初「できたてを食べてもらいたいという経営理念に反する」とデリバリーの開始を躊躇(ちゅうちょ)していたが、数年前から対応を始めた。丸亀製麺の売り上げ全体の5%程度にすぎなかったデリバリーは感染拡大後に一時、86%を占めるまでになった。

 4月下旬には宅配専門の店舗の運営を始め、計4店舗を開いた。ただ「デリバリーは容器に入れ包装するのに手間がかかる。容器代や配車手配のコストも負担となり、利益は大幅に減ってしまう」と課題もあるようだ。

間仕切りを設置したり、利用できる座席を制限したりして感染を予防している=7月31日

 ジャカルタでは6月中旬に条件付きで店内飲食ができるようになったものの、客足は簡単には戻らない。客席数の制限や店頭での検温、フェースシールドやマスクの着用といった基準を守るため運営コストがかさばる。自立式の間仕切りを全店舗分手配するだけで数千万円のコストがかかるという。近藤氏は「最悪のケースとしては2年半後まで(昨年の)8割程度の水準が続くということも想定している」と明かす。

 これまでショッピングモールへの出店が多かったが、今後は路面店も増やしていく。車で注文から商品の受け取りまでを行うドライブスルーサービスができるなど運営面での自由度が高いからだ。店舗面積を狭くし、価格帯を下げた店舗も計画している。これまで出店が難しかった駅構内やサービスエリアなどへ展開できるようになる。7月下旬には、家庭で調理できる鍋焼きうどんなどの販売も開始。こうした努力により前年同期の7割程度まで売り上げは回復した。

他の客からの感染リスクがないドライブスルーサービスは一定の需要がある=8月1日

 しかし、感染拡大の勢いは増しており、ジャカルタでは9月14日から再び店内飲食が禁止になった。近藤氏は「来年の売り上げ計画を大幅に修正しなければならない」と肩を落とす。

 インドネシアの累計感染者は28日時点で約27万9千人となり、東南アジアで最多のフィリピンに迫っている。国内の失業者は1000万人を超えたという。先が見えない状況だが、近藤氏は「うどんをインドネシアの日常食に」との目標を追い続けるつもりだ。

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