「不明朗な収支」「寄付金の要求」消防団運営に募る不満 山形・遊佐

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山形県遊佐町消防団の事務局を担う町役場。団と共に運営の改善を目指す考えだ

 「消防団運営に改善が必要だ」。山形県遊佐町消防団員の建設業鈴木健雄さん(43)から「読者とともに 特別報道室」に訴えが届いた。不明朗な会計、違法性のある寄付金受領、私生活を犠牲にする行事…。団の旧態依然とした運営に町の予算抑制が加わり、過疎地に残った数少ない若者が負担と責任感のはざまで悩む構図が浮かぶ。

 全国の消防団員は非常勤特別職の地方公務員。報酬や装備品の費用は国の地方交付税に盛り込まれる。交付税の算定上は報酬年額3万6500円、出動手当1回7000円だが、遊佐町の支給額はそれぞれ2万円と1300円。総務省消防庁は算定額未満の全国の市町村に引き上げを求めるが、町は2011年度以降、増額に応じない。

 さらに、この低水準の報酬すらも団員個人に届いていないのが実情だ。遊佐町消防団は7分団から成り、班が連なる。消防庁は団員個人に直接支給するよう全国に通知を繰り返すものの、町は団員の装備費や負担金を天引きした上で、所属する班の全員分を各分団に一括支給する運用を変えない。分団から受け取った多くの班が班全体の収入として積み立て、活動経費や飲み会代に充てるという。

 法令順守の問題もある。町消防団の分団や班の中には、活動の助成や謝礼として自治会などに寄付金を要求したり、受け取ったりする慣習が残る。町消防団条例は金品受領を禁じており、抵触する恐れがある。

 全国では消防団への寄付は10年、横浜地裁判決で「公務員が本来の職務で金銭を受領していると受け取られる可能性がある」と違法性が指摘され、やめさせる自治体が出てきている。

 町消防団の複数の若手に聞くと、事実上ほぼ無償で参加を求められる年間行事に不満が噴出する。大規模行事として大演習や防御訓練、出初め式があるほか、消防技術を競う「操法大会」は直前2カ月間、出場する班は隔日で夜間練習が続き、他の班の団員も補佐役として動員される。

 若手団員らは「集落の祭事なら喜んで出動するが、形だけの行事は不要だ」「家族や職場に迷惑を掛けるのがつらい」「活動の負担を知っているから若者は入団を避ける。今に団が成り立たなくなる」と明かす。

 鈴木さんは「無償奉仕して当然、という昔の感覚が団上層部に根強い。今は若者が激減し、環境が変わった。集落に残り支えようという若者の責任感に団や町は付け込み、運営改善を怠っていないか」と厳しい。

 町消防団は10月ごろに全団員にアンケートを実施し、団運営の在り方を再検討する方針。佐藤和博団長(68)は「報酬の個人支給や行事の簡素化は過去にも議論された。待遇改善を団も求めてきたが、町財政との兼ね合いがある。団の活動経費は町から交付されず、団員報酬からやりくりせざるを得ない」と話す。

 町消防団事務局の町総務課によると、待遇改善の一環として、団員が半額を負担してきた装備品は町が全額負担するよう6月に変更した。寄付金の是非は本年度内に考え方をまとめる。(菊間深哉)

◎入団拒否で8万円 プール金で飲み会 全国で問題表面化

 消防団の在り方を巡っては、「読者とともに 特別報道室」と同様の調査報道に取り組む全国の地方紙も各地の問題を指摘している。長く地域の若者に支えられてきた消防団が、転換を迫られていることがうかがえる。

 西日本新聞は2018年9月、福岡市消防団で団員の個人口座に市から振り込まれた報酬を団が徴収し、運営費に回す運用が常態化していると報じた。全63分団にアンケートし、回答した34分団の約8割が団員個人の報酬を分団で保管(プール)していた。

 分団には市から交付金が出るものの、地域活動への自主的な手当支給、訓練時の飲み物購入などには使えない。一方で「プール金が飲み会や海外旅行に充てられている」「プールする報酬を減らしたくないため団を辞めさせてもらえない」といった団員の声も伝える。

 岐阜新聞は今年1月、入団しない若者に団や自治会が最大年8万円を払わせる慣例が岐阜県各地にあることを報道。「入団を断る人は逃げ得だ」として、新入団員確保に躍起になる実情を浮かび上がらせた。

 他にも、実際は活動していないのに名前を使われ、団に報酬だけをもたらす「幽霊団員」の存在が指摘される消防団が全国各地で報告されるなどしている。

 消防庁によると、全国の団員数は現行制度になった直後の1952年は209万人だったが、昨年度は過去最少の83万1000人。75年に33.3歳だった平均年齢も過去最高を更新し続け、昨年度は41.6歳になった。

 消防庁は待遇改善や人材の多様化、活動の効率化を市町村に求めるが、消防団が敬遠される風潮は食い止められていないようだ。