「働くのに疲れたので50歳でリタイアしたい…」49歳男性の希望は叶う?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、49歳、会社員の男性。最近転職したものの、慣れない業務内容に疲れきってしまい、リタイアを希望する相談者。節約生活もはじめたそうですが、希望は叶うのでしょうか? FPの高山一惠氏がお答えします。

50歳を機に、リタイアもしくはセミリタイアを考えております。現在の資産でリタイアはできますか?

精神的にも体力的にもかなり疲れてしまいました。会社に行くのに本当に疲れてしまいました。今は最近転職した仕事の関係で関東の賃貸に住んでいますが、関西にマンションを保有しています(ローン完済、築25年)。

転職前にセミリタイアをしようと半年ほど無職を体験し、生活費は年間換算で180万円程度で、不満なく暮らせていました。もう少し削れると感じていました。節約生活はいろいろ学びもあり、自炊を始め、体調も安定していました。

転職したのは、コロナの影響で景気が悪くなり、資産が心許ないかと思ってのことでした。が、やはり一度消えかけた仕事への情熱が戻ることはなく、それだけでなく、慣れない業務内容に心身ともに疲れきりました。車は年内で売却します。

趣味は安いチケットを探していく海外旅行ですがコロナでしばらくはいけそうにありません。今は疲れすぎて、旅行を考えることもしばらくありませんでした。

無職の時に取得した日本語教師の資格で、日本で困っている外国人の手助けをしながら、少しですが収入を得ることも考えています。月に5万円から10万円程度。あと、株式の配当が年間約30万ほどあります。年金は今収入をなくしたとして、65歳から支給の場合、約15万ほどになると年金事務所で聞きました。

甘い相談なのかもしれませんが、第三者の貴重なアドバイスをいただけると幸いです。

【相談者プロフィール】

男性、49歳、会社員、未婚

子どもの有無:なし

住居の形態:賃貸

毎月の世帯の手取り金額:68万円

年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

住居費:15万円

食費:3万円

水道光熱費:1万5,000円

保険料:5,000円

通信費:1万円

車両費:1万円

お小遣い:1万円

【資産状況】

毎月の貯蓄額:7万5,000円

ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

現在の貯蓄総額:2,250万円

現在の投資総額:2,750万円

現在の負債総額:0


高山: ご質問ありがとうございます。心身ともにお疲れのご様子で早期リタイアを目指していらっしゃるとのこと。できれば希望通りの生活を送りたいですよね。限られた情報の中での見通しとなりますが、現在の資産でリタイアもしくはセミリタイアが可能かどうか考えてみましょう。

リタイア後にかかる生活費を「見える化」する

ご相談者さんは、50歳を機に、リタイアもしくはセミリタイアしたいとのことですが、まずは、リタイア後にかかる生活費を確認してみましょう。

日本人の男性の平均寿命(2019年)は、81.41歳となっており、ご相談者さんが80歳まで生きると仮定して、計算してみましょう。

50歳からの生活費ですが、ご相談者さんによると、関西にマンションを所有しており、車も年内に売却するとのこと。リタイア後にどこを拠点に生活するのかいただいた情報だけではわかりませんが、仮に所有している関西のマンションに引越しをして生活をするとして、管理費・修繕費、固定資産税なども考慮し、毎月の生活費を15万円として計算します。

65歳までの生活費からチェック

まずは、年金の支給開始年齢になる65歳までの生活費を見てみましょう。

・50歳から65歳までの生活費
15万円(ご相談者さんのコメントなどから今後の生活費として想定)×12ヶ月×15年間=2700万円

・50歳から65歳までの収入
この期間の収入として、日本語教師でのアルバイト収入を5万円程度得るとします。
5万円×12ヶ月×15年間=900万円

2,700万円から900万円を差し引くと1,800万円となり、50歳から65歳までの足りない金額を単純に計算すると、1,800万円ということになります。この不足分を現在の金融資産から取り崩すことになります。

現在の金融資産を確認すると、
・現在の貯蓄総額:2,250万円
・現在の投資総額:2,750万円

となっており、預貯金から取り崩すとしても、450万円預貯金が残る計算となります。

65歳以降は病気や介護状態になるリスクも加味して

では、65歳以降についても見ていきましょう。

ご相談者さんが年金事務所に確認したところによると、現在仕事を辞めたと仮定して65歳から毎月15万円程度の年金が支給されるとのこと。ですから、毎月15万円程度の生活を65歳以降も維持することができれば、預貯金を取り崩すことなく生活することができます。

ただし、高齢になると、病気になったり、介護になったりするリスクが高まります。厚生労働省が公表している「生涯医療費」のデータを見てみると、1人の人が一生に使う生涯医療費は2,700万円とのことですが、生涯医療費の約半分は、70歳以降にかかる傾向にあります。そうすると、70歳以降の医療費は、1,300万円程度になります。とはいえ、これは医療費の総額ですから、自己負担は年齢や所得によっても違いますが、1〜3割です。今後は、高齢化が進み医療費の自己負担が増えることが予想されるので、老後の医療費として500万円程度はみておきたいところです。

加えて、介護にかかるお金ですが、公益財団法人生命保険文化センターの資料によると、介護になった時に一時的な費用の平均は69万円、毎月の介護費用の平均は7万8,000円とのこと。介護期間の平均が4年7か月とのことなので、介護費用の平均として約500万円かかります。

ですから、老後の医療費と介護費用合わせて1,000万円見ておくと安心です。

50歳から全く貯蓄ができていないとすると、65歳時点での預貯金は450万円、投資資産も変動がないとすると2,750万円ですから、試算上ではなんとかなりそうですね。

セミリタイアなら実現可能性は高い!

完全にリタイアするのではなく、セミリタイアという選択肢であれば、ざっくりとした試算ではありますが、実現可能性は高いと思います。

現在、それなりに資産があること、持ち家があることも有利に働いていると思いますが、事前にリタイアした場合の生活を想定して、どれくらいの生活費で暮らせるのか、具体的にシミュレーションができていたのもよかったと思います。

今回は日本語教師のアルバイト収入を5万円と想定して試算しましたが、毎月の収入が10万円あると、貯蓄や投資ができる余裕が生まれると思います。仮に毎月10万円の収入を得たとして毎月5万円貯蓄ができる余裕が生まれるとします。そのうち、3万円を預金、2万円を投資信託(3%の利回りと想定)の積立を行い、50歳から65歳まで実行したとします。そうすると、預金で540万円、投資信託の積立で約453万円になり、1000万円近く資産が増えます。今回は株式の配当金や現在の投資資産の運用については考慮していないので、これらも考慮すれば、さらに資産は増える可能性もあります。

不動産の活用も視野に入れて

また、住まいについても今回関西にお持ちのマンションに居住することを前提に試算しましたが、違うエリアで生活をすることを考える場合には、マンションを賃貸に出したり、売却したりといった、不動産についてのプランニングも必要になってくるでしょう。

今回は限られた紙面でのアドバイスになってしまいますがセミリタイア後の収入や生活費、住居などについて考える際のご参考にしていただけたら幸いです。仕事のストレスから解放され楽しい人生を送れるようにお祈りしています。

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