在来線特急初、E257系「踊り子」が伊勢海老を運ぶ 東京駅で「伊豆美味いもん市」開催

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「踊り子」による鮮魚輸送はJR東日本の在来線特急としては初めての試み

2020年9月26日(土)12時30分ごろ、南伊豆下田産の伊勢海老を積んだE257系「踊り子」号がJR東京駅に入線しました。

これまでも各地の鮮魚やフルーツが新幹線で輸送されたことはありますが、JR東日本の在来線特急がこの役目を担うのは初めてのことです。26日(土)に「踊り子」が運んだ60尾9㎏の伊勢海老は2箱に分けられ、30尾は「グランスタ東京」内にも出店する「羽田市場」などで提供。残る30尾は東京駅で開催されている「伊豆美味いもん市」イベント会場で販売されました。

イベント会場での伊勢海老販売の様子 本来は「金目鯛」の販売が行われる予定だったが、台風12号の影響で中止に。 写真提供:JR東日本横浜支社
グランスタ内「羽田市場」へ運ばれた伊勢海老
この伊勢海老を店内で提供します

「伊豆美味いもん市」は9月26日(土)~28日(月)の三日間にわたり、JR東京駅改札内の「スクエア ゼロ」で開催されています(各日11時~20時)。伊勢海老の他にもしいたけやところてんなど、伊豆の名物・特産品を販売。お昼の14時ごろからは、1時間ほどではありますが、会場と伊豆をZoomでつなぎ現地の方々と直接対話しながら購入できるオンライン販売も行われます。

会場内の様子
イベント会場と現地を結ぶオンライン販売も実施

「貨客混載」ではない、伊豆活性化へ向けた取り組み 将来性は?

2019年6月に行われた東北新幹線「やまびこ」によるウニの輸送

伊勢海老輸送はあくまで「踊り子」号の車販用スペースを活用したもので、「貨客混載」事業とは異なります。規模を見ても手探り感は強く、ビッグプロジェクトというわけではありません。

JR東日本横浜支社の担当者によれば、今回の「踊り子」による輸送は「伊豆を盛り上げるためにできることはないか」という思いから、他支社の新幹線輸送にヒントを得て試験的に実施したものだそうです。伊豆の特産物を東京という一大ターミナルに集め、伊豆のアピールや地域活性化・地域連携の強化、伊豆への送客といった効果を期待しつつ、事業としての採算性も考慮して収益を確保する。現時点ではビジネスの芽として小さなものですが、今後もJR全体の取り組みとして広げていきたい思いはあるようです。

果たして新幹線や特急列車を使った輸送サービスに将来性はあるのでしょうか?

電車を利用する輸送サービスの強みは定時性です。新型コロナウイルスの影響により「自家用車で移動する」という選択肢を取る方が増えた影響か、先日の四連休は各地の高速道路で大規模な渋滞が発生しました。そうなるとトラックによる輸送は安定せず、「朝獲れ鮮魚をその日のランチやディナーで提供」といった戦略は取りづらくなってしまいます。その点、電車なら混雑の影響は受けません。

また、東京駅でもこうした取り組みを受け入れるための下地作りが進んでいます。株式会社鉄道会館の担当者によれば、本年8月に開業した「グランスタ東京」のイベントスペース「スクエア ゼロ」には衛生設備が揃っているため、「動輪の広場」などでは販売できなかった商品も扱えるようになりました。

イベントスペース内のディスプレイで発車時刻や運行情報、お買い物しやすい環境も整える

1尾1,000円という値付けで30尾限定だったとはいえ、イベント会場に搬入された伊勢海老はわずか数分で完売しました。目の前でぴちぴち跳ねる伊勢海老の訴求力が高かったのは間違いありません。本来なら現地に行かないと体験できないような新鮮なものを東京の巨大なターミナル駅で提供する――ここにはなんだか大きな可能性が潜んでいるように思えるのです。

文/写真:一橋正浩