【社説】「Go To」拡大 ブレーキ踏む基準示せ

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 政府は、消費喚起策「Go To キャンペーン」を10月以降、拡大する方針を決めた。

 観光支援の「トラベル」事業の対象に1日から東京を追加し、飲食店や商店街、イベントを支援するキャンペーンも順次スタートさせる構えだ。

 新型コロナウイルスの影響で苦境にあえぐ業界を支援し、地域経済のてこ入れにつなげる事業の狙いは理解できる。

 ただ消費喚起策の拡大によって、人の動きが活発になれば、感染リスクが高まることは避けられない。感染の動向や地域ごとの医療への影響などに、きめ細かく注意を払う必要がある。

 7月下旬以降に流行が広がった「第2波」の新規感染者数は、8月初旬をピークに減少傾向にある。そうした状況を踏まえたのか、感染症や経済の専門家らでつくる政府の分科会は、キャンペーンを拡大する方針を大筋で了承する判断を示した。

 分科会は一方で、感染が再び拡大する恐れがあるとも強調している。感染状況が悪化した地域に対しては、イベントを中止したりキャンペーンの対象から除外したりすることを検討すべきだと政府側に提言した。

 感染防止対策と経済活動の回復は、新型コロナ対応の両輪に位置づけられる。感染が再び広がれば、経済活動は滞る。バランスが取れなくなれば、軌道修正するのは当然だろう。分科会の提言が指摘するように、感染の状況に応じて支援事業を柔軟に見直す仕組みが必要だ。

 「トラベル」事業を巡り、政府は、感染が急拡大した都道府県について割引の対象からの除外を検討する考えを示してはいる。ただ除外するための明確な基準はなく、実効性は不透明と言わざるを得ない。

 目安となるのは、分科会がまとめた感染状況の4段階のステージと6種類の指標だ。分科会の提言では、感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」以上になった都道府県を除外するよう求めている。

 ただ、どのステージにあるかの判断は都道府県の裁量に委ねられている。

 東京都の場合、感染経路不明の割合や病床の逼迫(ひっぱく)具合など複数の指標が「ステージ3」に該当しているが、感染状況は「ステージ2」と判断している。

 東京都ではきのう新たに270人の感染者が報告され、一気に増えた。これからインフルエンザが流行する季節を迎え、同時流行への警戒も怠れない。

 ブレーキを踏む判断が遅れると、医療体制の崩壊に直結しかねない。政府が責任を持って、キャンペーンを見直す場合の明確な基準を示すべきだ。

 「Go To キャンペーン」は、菅義偉首相が官房長官だった時に主導した。「トラベル」事業は開始から8月末までに延べ1300万人以上が利用しており、首相も「やらなかったら大変なことになっていた」と成果をアピールする。

 だが緊急事態宣言の解除後、人の動きが広がる中、7月下旬に事業を前倒しして始めたことが「第2波」を広げる一因になったとの指摘もある。政府は、これまでの経緯を検証し、事業の効果と感染リスクについて、国民に説明する必要がある。

 経済再生は急務だが、前のめりになって消費喚起のアクセルを踏み続けるだけでは危うい。