【社会人野球】トヨタ自動車・栗林は「ゲームを作れる」 西武渡辺GMが語るドラ1候補の理由

Honda鈴鹿戦に先発したトヨタ自動車・栗林良吏【写真:福岡吉央】

社会人No.1右腕と呼び声高い栗林が1失点完投、都市対抗野球本大会出場決定

第91回都市対抗野球大会の東海地区2次予選が26日、岡崎市民球場で行われ、今秋のドラフト1位候補として注目されるトヨタ自動車(豊田市)の栗林良吏投手(愛知黎明-名城大)が第1代表決定戦でHonda鈴鹿(鈴鹿市)相手に1失点完投の好投をみせ、ドラフト前最後の公式戦で、改めて能力の高さを見せつけた。試合はトヨタ自動車が5-1で勝利。6年連続22回目の本大会出場を決めた。

7回2安打無失点、10三振を奪った16日の第1代表決定トーナメント初戦、東邦ガス(名古屋市)戦から中9日と休養十分で迎えたマウンド。前日25日に予定されていた試合は雨で流れたが、初のスライド登板にも動じなかった。

「4連勝で突破できて嬉しい。初回から飛ばしていくつもりだった。トーナメントの中で、1球の大切さを学んで成長できた」

Honda鈴鹿の先発は、同じくドラフト候補の左腕、森田駿哉投手(富山商-法大)だった。プロ注目の投手同士の投げ合い。勝てば都市対抗野球本大会出場が決まる大一番で、森田は2回2/3、4失点で降板する中、栗林はエースとして9回を1人で投げ切った。5安打、1四球、109球の熱投で6奪三振。この日は調子が悪かったが、変化球を駆使し、7回までは三塁を踏ませず。8回には連打の後、内野ゴロの間に1点を許したが、打線が奪った5点のリードがあれば十分だった。

「今日は全然ダメだった。1試合を通して、狙っているところに投げられなかった」

それでも、この日の自身の状態を冷静に見極め、マウンドで対応した。初回、この日の球審のストライクゾーンが狭いと感じると、相手が打ち気な打線であることも考慮し、すぐに2回から変化球中心の組み立てに変えた。「調子がいい時だけ、いいピッチングをしても、信頼は得られない。調子が悪くても9回まで投げられれば自信になる」。社会人1年目の昨年は、5、6回で交代し、リリーフ陣にマウンドを託すことが多かったが、今年は藤原航平監督から、長いイニングを任されており、エースとしての責任感も増している。

スカウト総じて高評価「大事な試合でしっかり投げる責任感も評価できる」

藤原監督は「エースとして投げる姿を普段から体現してくれた。堂々たるピッチングだった。エースとしての自覚があり、チームのことを考えて行動していた。そこが成長したところ」と、コロナ禍の中でもしっかりと今大会に向けて調整してきた栗林を称えた。

スタンドでは、西武、中日、阪神など約10人のスカウトが栗林の投球を見守った。西武の渡辺久信GMは「調子の良し悪し関係なく、ある程度ゲームを作れる投球ができており、ピッチングが上手くなっている。フォークのウイニングショットもあるし、当然上位で消えるでしょうね」と評価。中日の清水昭信スカウトも「四球も少なく、リズムが良かった。今日は直球は少なかったが、変化球をしっかり投げていた。能力も高いが、大事な試合でしっかり投げる責任感も評価できる」と話した。

トヨタ自動車はこの日勝ったことで、これがドラフト前最後の公式戦となった。栗林は「やるべきことはやってきたので、あとは待つだけ。自分を必要としてくれる球団ならどこでもいい。(ドラフト前最後の登板は)完封して、いいピッチングで終わりたかったですが、チームが第1代表として予選を突破できたので、悔いはないです」と、晴れやかな表情を浮かべた。

10月26日のドラフトまで、あと1か月。栗林は11月に開催される都市対抗野球の本大会に向けて準備を進めながら、運命の日を静かに待つ。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

© 株式会社Creative2