燕・村上は「いずれ3冠王になる器」 名将が語る“平成の3冠王”と遜色ない素質とは?

ヤクルト・村上宗隆【写真:荒川祐史】

高打率を支えるリーグ断トツの四球数「いい打者の条件は…」

■ヤクルト 2-1 阪神(26日・神宮)

20歳にしてヤクルトの4番を張る村上宗隆内野手は26日、本拠地・神宮球場で行われた阪神戦で、1回に先制右前適時打、6回にバックスクリーンを越える決勝18号ソロを放ち、2-1の勝利に貢献した。元オリックス監督で、ソフトバンク、巨人、中日でも名コーチとして知られた森脇浩司氏は、「近い将来3冠王になる器」と絶賛。それが今季になる可能性まであるとみる。

森脇氏は1997年から2009年まで、ダイエー・ソフトバンク時代を通じて13年間ホークスのコーチを務め、松中信彦氏が入団し、徐々にチームの主力に成長し、04年に“平成唯一の3冠王”となるまでをつぶさに見守った。村上の素質は、その松中氏と比べても遜色ないという。

村上は1回無死満塁のチャンスで、阪神先発のガンケルの初球を右前へ運ぶ先制適時打。6回の第3打席では、カウント1-0から2番手・藤浪の152キロの速球を一閃。打球はバックスクリーンを越える特大弾となった。いずれも、やや甘く来たファーストストライクを逃さずとらえたもの。森脇氏は「いい打者の条件は、相手の失投をミスショットしたり見逃したりせず、1振りで仕留めること。この日の村上は見事でした」とたたえる。

「今シーズンだって、簡単ではないが、3部門全てで逆転の可能性はある」

3回2死走者なしでの第2打席では、ガンケルに対し6球ファウルで粘った挙句、10球目のスライダーを打って遊飛に倒れたが、森脇氏はこの凡打にも村上の成長がうかがえたという。「どんなにすごい打者でも、全打席ヒットを打つことはできないが、村上は不利なカウントに追い込まれても、簡単には打ち取られない備えができている。ああやって粘っていれば、四球で出塁する可能性が広がるし、そうすれば高い打率をキープできることにつながる。非常に充実した打席を送っている」と指摘するのだ。

実際、村上は26日現在、セ・リーグ断トツの59四球を選んでおり、DeNA・佐野の.349に次ぐリーグ2位の打率.331につながっている。プロ2年目で新人王を獲得した昨季、36本塁打、96打点を稼ぎながら、.231の低打率に終わったのに比べると、驚異的な進化である。

さらに、18本塁打もリーグトップの岡本の23本に5本差の3位タイ。61打点も岡本に8差の4位。森脇氏は「いずれ3冠王を取る器だと思うし、今シーズンだって、簡単ではないが、3部門全てで逆転の可能性はある」と断言する。村上が3冠に近づくほどの打棒を振るえば、最下位低迷中のチームの浮上にもつながるだろうし、ファンの興味を最後まで引き付ける存在になるはずだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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