「大寒の候」「鏡開きも済んで」 - ビジネスメールで使える季節の挨拶【1月編】

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季節の挨拶は、四季がはっきりしていて寒暖差がある日本で、古くから大切にされてきた表現です。手紙を書く習慣が減った今日でも、ビジネスレターや学校、地域コミュニティなどの案内には、どれほど短くても季節の挨拶が含まれています。 書き慣れていないと苦労してしまう季節の挨拶を、本記事では年始から1月中旬、下旬まで用途や場面に応じて紹介していきます。

季節の挨拶はなぜ必要?

ビジネスレターや案内状は、季節の挨拶から文章を書き始めるのが礼儀とされています。季節の挨拶が果たす役割を理解し、書く上での参考にしてください。

実用文だからこそ伝えたい相手への気遣い

ビジネスレターや案内状などの公式の文書は、以下のような構成を取ります。

①頭語(「謹啓」や「拝啓」などの冒頭の言葉)
②季節の挨拶
③相手の安否を尋ねる
④日頃の感謝の言葉(省略される場合も)
⑤本文(用件)
⑥結びの挨拶
⑦結語(頭語に対応するもので「謹啓-謹言」、「拝啓-敬具」のように組み合わせが決まっている)

本来ならば、実用文は⑤の用件だけが伝われば十分なのですが、用件だけではどうしても事務的な印象になってしまいます。前後に相手に対する気遣いを加えることで、人間関係を豊かにする工夫がなされています。

定型化されている季節の挨拶など不要なのではないか、と考える人もいます。しかし、パターンを踏襲することで、丁寧に読まなくても公式の文書であることが伝わります。また、忙しい人であれば、用件が書いてある場所も把握できるため、そこだけを読むこともできます。慣れていない人でも、パターンに沿うことで、失礼のない文書を作成することができるというメリットもあります。

「〇〇の候」「〇〇のみぎり」「〇〇の折」とは?

季節の挨拶から相手の安否を気遣う文言までをひとつの文章でまとめ、本文へと続ける場合があります。その際は、季節を表す言葉の後に「〇〇の候」「〇〇のみぎり」「〇〇の折」と続けます。

「候」は「こう」と読み、古代中国で1年を72に分割した5日間を指す言葉に由来しており、季候や時候を指します。 「みぎり」は漢字では「砌」と書き、時候や「~の頃」という意味の言葉です。 「折」は「おり」と読み、季節や時候を指します。 いずれも「〇〇の頃ですが」という意味になります。

《「頭語~季節の挨拶~安否を気遣う」パターンの例》

例1.
謹啓 初春の候、貴社ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
例2.
拝啓 大寒のみぎり、皆様におかれましてはご健勝のことと存じ上げます。
例3.
拝啓 寒さ厳しき折、貴社におかれましてはいよいよご隆盛のこと、お喜び申し上げます。

1月の挨拶の特徴

季節の挨拶はその季節に合った言葉を使わなければ、的外れなものになってしまいます。レターや案内状を出す日付に合わせて、適切な言葉を選ぶ必要があります。

年始の挨拶

年始の挨拶は1月の正月休み明けから1週間のうちにすませます。

①新年の挨拶
②昨年の厚誼への感謝
③今年の豊富と引き続いての厚誼のお願い
④相手の繁栄を祈る言葉
⑤日付
⑥会社名

《年始の挨拶の例》

謹んで新年のお祝いを申し上げます。
旧年中はひとかたならぬご厚誼を賜りまして、厚く御礼申し上げます。
本年も皆様のご期待に沿えますよう、社員一同、いっそう精進、努力いたしますので、本年もご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
貴社のさらなるご発展をお祈り申し上げます。
令和〇年元旦

株式会社〇〇産業

通常の年賀状に用件は書かないように、メールであっても年始の挨拶には用件は加えません。

用件がある場合は、年始の挨拶とは別の形で送ります。一般的に「松の内」とされる1月7日ごろまでは「謹啓(拝啓)」に続いてお正月の別の言い方である「新春の候」「初春の候」「迎春の候」と書き始めます。

気をつけたい二十四節気

二十四節季とは、明治時代より前に日本が太陰暦を使っていた時期に、太陽の動きに基づいて、1年間を二十四等分したものです。

「冬至」や「大寒」など、今でも残る季節を表す言葉は、二十四節気に基づいています。季節の挨拶を書く際には、二十四節気に気をつける必要があります。

1月5日頃から「寒」に入り、節分(立春の前日の日)まで続きます。1月5日頃が「寒の入り」でこの日から「小寒」に入ります。
20日頃は「寒」の真ん中に当たり、寒さが最も厳しい頃という意味で「大寒」と呼ばれます。

知っておきたい1月の季語

季語は俳句に用いられる特定の季節を表す言葉ですが、季語を季節の挨拶に使うことによって、季節らしい情感を浮かび上がらせることができます。

「松の内」 …門松を立てておく期間で、元日から7日までを指します。
【用例】(7日を過ぎた頃) 松の内も明け、皆様にはますますのご繁栄の段、お喜び申し上げます。

「鏡開き」 …正月に神仏にお供えした鏡餅を松の内が過ぎた11日頃に下げ、お雑煮やお汁粉にして食べることを指します。鏡開きをすることで、新しい年の仕事始めをするという意味が想起されます。
【用例】(11日を過ぎた頃) 鏡開きも終わり、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。

季節感を大切に

季節の挨拶が季節感に合っていなかったら、単にテンプレートをなぞらえただけになってしまいます。そのため暖冬であれば暖冬にふさわしい挨拶であることが必要です。

暖冬の挨拶
【用例】例年にない穏やかな日が続いておりますが、皆様ご健勝でお過ごしのことと存じます。

雪の多い地方へ宛てた挨拶
【用例】
御地では大雪に見舞われたとの由、雪国とは申せ、ご苦労されておられるのではないかと案じております。

場面で使い分けたい1月の挨拶

同じ公式の挨拶であっても、対象によってトーンは異なってきます。ビジネスシーンでは、フォーマルな度合いが高くなってくるのに対し、幼稚園や子ども会のお便りでは、親しみのトーンが必要です。

ビジネスシーン

最もフォーマル度の高いビジネスの社外文書での季節の挨拶は、読み手に対して礼を失しないことが重要です。それと同時に、用件の邪魔にならないよう冗長性を排した漢語的な表現でまとめます。

《用例①ビジネスシーン》

ビジネス文書の場合は上記のような構成で作成します。季節の挨拶は、本文にすぐに入れるように短くまとめます。
《ビジネス文書での季節の挨拶の例》
◆ 厳寒(厳冬、仲冬、寒冷、小寒or大寒、酷寒、寒風)の候(みぎり、折)

地域コミュニティや学校の保護者宛

地域の自治会や学校の保護者宛の案内文書では、フォーマルになり過ぎて、ビジネスライクにならないように注意します、同時に幅広い年齢層を対象にするため、礼儀正しさも求められるという要素もあります。

《用例②PTA保護者向け案内状》

地域コミュニティや学校の保護者向けなどの、ややフォーマルでありながら親しみも感じられる文書は、上記のような構成でまとめます。

《地域コミュニティや学校の保護者向け文書での季節の挨拶の例》
◆ 寒さ厳しき折、
◆ 本格的な冬の到来を迎え…
◆ 日ごとに寒さが加わり…

幼稚園やこども会の保護者宛

幼稚園やこども会の保護者身近な関係者に向けた文書は、改まり過ぎず、温かみの感じられるトーンを心掛けます。

《用例③こども会案内状》

幼稚園やこども会などは、比較的小さなコミュニティであるため、関係者との距離も近いことが多くなります。そこでフォーマル度の高い文書を出してしまうと、よそよそしく感じることも多いでしょう。正式な文書であるという点を押さえつつも、親しみのこもった文書を作成しましょう。

《幼稚園やこども会などの小規模のコミュニティ向け文書での季節の挨拶の例》
◆ 暖冬ということですが、吹く風の冷たさに改めて季節を感じる頃となりました。
◆ 暦の上では大寒となり、急に寒さが増したように感じます。
◆ 鏡開きもすんで…

同じ時間を共に過ごす喜びを伝える挨拶

古くから日本では、人々は季節の移り変わりを楽しみ、季節感を大切にしてきました。たとえ実用文を送る場合であっても、新しい年を迎えたことを共に喜び、厳しい寒さに相手を思いやる心をひとこと付け加えるだけで、私たちの日常は彩りを増します。

ビジネス文書や案内文書の実用文で、肝心なことは用件であり、正確に伝えることです。そのため季節の挨拶も、用件の邪魔にならないものであることが大切です。共に新年を迎えた喜びや、寒い中相手を気遣う気持ちを、時期や相手との関係性をふまえて文頭や結びに記してみてください。