新型ウイルス肺炎重症化防止へ治験 中田新潟大特任教授ら、国内で11月にも

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中田光特任教授

 新型コロナウイルスに感染して肺炎になった患者の重症化を防ぐ治療法の臨床試験(治験)を、新潟大学医歯学総合病院高度医療開発センターの中田光特任教授と製薬会社が、11月にも日本国内で始める。集中治療が必要な重度の呼吸器不全「急性呼吸窮迫症候群」(ARDS)への進行を防ぐため、肺の細胞が炎症を起こすのを抑える薬剤を投与し、効果を検証する。

 ARDSは発症すると激しい息切れを引き起こす。進行が速い上、命の危険もある。中田氏によると、国内の新型ウイルス感染者のうち、3~5%程度の人がARDSとなり、人工呼吸器の装着など集中治療が必要になる。高齢になるほど発症リスクは高まるという。

 新型ウイルス感染者がARDSを発症するのは、肺の中で免疫細胞の一種「マクロファージ」が異常に活性化し、過剰な免疫反応「サイトカインストーム」が起きるためだ。過剰な免疫反応で肺に炎症が起き、血液に酸素を取り込むことが困難になる。

 治験では、薬剤を投与してマクロファージの活性化を抑え、ARDSに進行することを防ぐ。

 中田氏らのグループが別の呼吸器疾患への治療法として、昨年9月に米国の医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した手法を応用。異常な活性化を抑えるタンパク「GM-CSF」の薬剤を霧状にしたものを患者に1日2回、5日間投与する。

 新型ウイルス感染症患者を対象に、今春ベルギーで行われた同様の治験では有効性が示され、米国でも治験が行われているという。

 国内での治験は、製薬会社ノーベルファーマ(東京)に中田氏が協力し、日本医療研究開発機構の事業にも採択された。国立国際医療研究センター病院(同)など7施設が参加し、11月にも始める予定だ。

 中田氏は、医療従事者への二次感染も防ぐ仕組みの開発にも取り組む。

 治験では薬剤を吸入する際、患者がせき込みやすくなる。病室にウイルスが広がる恐れがあることから、空気中のウイルスを消毒・除去する集じん機を備えた吸入ブース=図参照=を、医療機器専門商社の東機貿(東京)や気流の専門家と開発する。

 中田氏は「新型ウイルスのワクチンが開発されても感染者がいなくなるわけではなく、感染しても症状が重くならないようにする必要がある。患者の状況に応じて使える治療法の選択肢を増やしていくべきだ」と話している。